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Magicians Circle  作者: ransu521
悪魔憑き編
122/309

虚無感に包み込まれた教室

Side大和


次の日。

僕達は、いつも通りに学校にやってきた。

ただ、二年S組の教室に、空いている席が一つ出来あがっていた。

……いや、一つだけじゃない。

二つだ。


「葵か……」


一つは瞬一の席。

昨日どれだけ探しても……結局瓦礫の山から見つけ出すことが出来なかった。

一体どこに行ってしまったというのだろう……。

もう一つの席は、葵の席だ。


「葵まで休んじまうとはな……相当ショックだったんだろうな」

「……だね」


瞬一が行方不明になったことに、相当ダメージを受けたのだろう。

恐らく、今は学校に来れるような精神状態じゃないはずだ。


「んで、一之瀬の方は一之瀬の方で……」

「……」


晴信が、春香の席を指さす。

そこでは、無気力な表情を浮かべながら、虚空を見つめている春香の姿があった。

……こっちは、自分のせいで瞬一がいなくなったと思っているのだろうか。

……あの時春香が、春香の兄さんに捕まって、あんな状態にならなければ、瞬一は……。

そんなことを考えているのだろう。


「北条はあんまり様子変わらないのな」

「失礼ね……これでも精神的にきてるのよ。さすがに自分のクラスの人が突然いなくなったりしたら……ましてやそれが、最近一緒に行動することが多かった人となると……」

「北条……」


やっぱり、真理亜も虚無感に襲われているのか。

平気そうな顔をしてるけど、晴信もまた、いつもよりはその表情に光がなかった。

……瞬一の存在は、いつの間にかここまで大きなものに変わっていたのか。

ただのクラスメートがいなくなっただけならば、彼らもあまりショックは受けないだろう。

しかし、瞬一だからこそ……彼らが心に受けたダメージは大きいのだ。


「なぁ大和……」

「ん?なんだい?」


晴信が僕に声をかけてきた。

その声の方を振り向いてみると、真剣な表情を浮かべた晴信の姿があった。


「……葵のことなんだけどよ」

「今日葵の家に行って、学校に出させた方がいいのか?……でしょ?」

「……ああ」


僕が予想した質問で、どうやら合っていたみたいだ。


「答えは……今はそっとしておいてあげることだね。僕達が何を言ったとしても……残念ながら今の葵じゃ、恐らく会話もしてくれないと思うよ」

「会話もしてくれない、か……」


葵は瞬一を失ったことで、相当心にダメージを受けたことだろう。

だから、僕達がなにを言ったとしても……聞き入れてくれない、もしくはネガティブに捕えられてしまうかもしれない。

それで葵を更に傷つけたら……まるで意味がないじゃないか。


「何かしてやるのも友達守る……何もしてやらないのもまた友達、ってことか」

「僕達に出来ることはただ一つ……瞬一の帰りを、信じて待つことだけだ」


それしか僕達がやれることはない。

瓦礫の山から、瞬一は発見されなかった。

つまりは、どこかでまだ生きている可能性も、否定は出来ないのだ。


「お~い、席につけ!」


その時。

担任の先生が、教室の扉を開けて、中に入ってきた。

中に完全に入りきると、扉を閉めて、教壇の上に立つ。

出席簿と座席表を見比べながら……。


「今日は細川と三矢谷が欠席か……誰かこの二人が休んでいる理由を知ってるやつはいるか?」


先生は、僕達にそんな質問をしてきた。

しかし……答える人は誰もいない。

僕と晴信、真理亜に春香の四人は、その理由を知っているには知っているが……誰も話そうとはしなかった。

その時だった。

突然、コンコンと扉が叩かれる音が聞こえてきた。

その音に反応して、先生は教室の外にいる人と、少し話をしている。

すると……その顔は少し青くなっていた。

恐らく、瞬一のことについて、何か聞いたのだろう。

やがて、話を終えてから先生が言った一言は、


「……今連絡があった。三矢谷は、どうやら風邪で休んでいるだけのようだ。細川も同じだから、あまり心配する必要もないぞ」


そうは言っておきながら、顔は青ざめたままだ。

恐らく、瞬一が学校に来ていない理由を聞いたのだろう。


「それから、大和・一之瀬・宮澤・北条の四人は、この後校長室に来るように、以上だ」


やはりそうか。

もう瞬一のことが耳に入っているのだろう。

僕達を呼び出すのに必要な理由は……昨日の件以外に何もないのだから。
















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