最悪の結末
Side晴信
……瞬一に言われて外で待機してる俺達。
けどよ、明らか瞬一と、一之瀬の兄が帰ってくるのが遅くないか?
「瞬一……大丈夫かな」
「大丈夫だよ。瞬一なら、生きて帰ってくるさ……多分だけど」
さすがの大和も、こればっかりは分からないらしい。
……一体中で何が起きているというんだ?
「……ねぇ、ちょっとあれ!」
「うん?」
北条が指さした先を、俺達は見る。
すると、その場所の空間が、グニャリとゆがむのが見てわかった。
これは……転移魔術か?
「……瞬一が一之瀬の兄を送ってきたのか」
予想通り。
その空間から現れてきたのは、一之瀬の兄だった。
……ちょっと待て。
瞬一はどうしたんだよ。
「……気絶してる。瞬一が悪魔を倒した証拠か」
「ちょっ……ちょっと、あれ!!」
今度は何だ?
葵が、何やら顔を真っ青にして、とある方向を見る。
……それは絶望の色だった。
何だろうと思い、その場所を見た。
……すると、そこでは。
「なっ……!!」
「建物が……崩壊していく」
そこでは、先ほどの落雷の影響を受けてか、建物が崩壊していくのが目に見えていた。
……待てよ。
瞬一は、俺達の近くに一之瀬の兄を転移させてきた。
そして、瞬一自身は、未だここに現れてきていない。
確か、瞬一は今崩壊している建物にいたはずだ。
……つまり。
「まだ瞬一は、あそこにいるってことだね」
大和が俺が導き出そうとした答えを、先に言った。
……瞬一がまだあそこにいるってことは。
「それってもしかして……瞬一は、あの崩壊に巻き込まれてるってこと?」
「……だね」
「……瞬一!!」
ダッ!
大和がそう言った瞬間、葵の足は勝手に動いていた。
……あの崩壊している建物に向かうつもりか!!
「やめろ葵!お前まで巻き込まれたらどうするんだ!!」
「離して!まだあの中には瞬一が!!」
「危険だっつってんだろうが!ここはとりあえず崩壊が終わるのを待て!!」
「待ってられないよ!!」
「いい加減にしろ!!」
俺は怒りにまかせて葵に叫んだ。
瞬間、葵の体はビクッと震えた。
「……お前が怪我したら、瞬一が悲しむだろうが。アイツだけじゃない。この中の誰かが怪我をしたら、ここにいる誰かが絶対に悲しむ。だから行くな。信じてアイツを待とう」
「……うん」
そう言って、ようやっとおとなしくなった葵。
その一連の様子を、茫然と眺めていた北条は、何も言葉を返してこなかった。
……もし葵がこんな行動に走っていなければ、あの崩壊している建物に向かっていたのは、俺だったのかもしれない。
ある意味では、葵のおかげで冷静に行動することが出来たのだ。
……けど、俺だって正直、アイツを助けに行きてぇよ!
「どうしてだよ……どうしてこんな展開になっちまったんだよ!!」
「晴信……」
大和が俺に何かを言おうとしたが、構うものか。
「おい、起きろ!一之瀬の兄!!」
パシン!
俺はいつの間にか、一之瀬の兄の頬を殴っていた。
コイツのせいで……コイツが、あんなことしたから……!!
「う、ううん……な、何だお前は?」
「お前の妹のダチだよ……それよりもよ、テメェがどうして殴られたか、分かってんだろうな?」
「い、いや、何の事だか……」
「とぼけてんじゃねぇよ!テメェが悪魔に魂売らなければ、こんなことにはならなかったんだろうが!!」
やめなよ、と北条が言うが、構うものか。
俺はコイツを許すわけにはいかない。
「お前が勝手に悪魔なんかに魂売るから!一之瀬が傷ついたし……瞬一が建物の崩壊に巻き込まれたりしたんだぞ!!これで瞬一が死んだりしたら、テメェをゆるさ……」
「やめな、晴信」
「ああん!?」
俺の右手を掴み、大和がそう言ってきた。
「責めるべきは、春香の兄さんじゃない……誰を責めたって、事態は何にも変わりやしないよ」
「……分かってるよ。んなことは分かってんだよ、畜生!!」
ダン!と地面を蹴る。
……くそっ、どうしてこんなことになっちまったんだよ!
他になにか方法はなかったのかよ!?
瞬一一人が犠牲にならずに済んだんじゃねぇのかよ!!
「畜生……畜生ぅううううううううううううううううううううううう!!」
その後。
崩壊が終わり、安全だと判断した大和達は。
瞬一を助ける為に、捜索に当たったが。
瞬一の姿を発見することはできなかった。
6月4日、三矢谷瞬一、行方不明。
『“悪魔憑き”の少女』編はこれで終わりです。
次回より、新たな話が始まります。




