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Magicians Circle  作者: ransu521
悪魔憑き編
119/309

決着の末に

「神の公正なる裁判にて、彼の者に正しき判決を下す」

「上級魔法を詠唱して、俺ごとこの場所を崩壊させるつもりか?けどな……長い詠唱を待っていられるほど、俺もお人よしじゃねぇんだよ!!」


右手を振りかぶり、瞬一に殴りかかろうとする。

だが、瞬一は、詠唱中にも関わらず、


「……!」


ヒョイ。

何と、その場所から動き、悪魔の攻撃をかわしたのだ。


「なっ……」


悪魔にとっても、これは驚きなことだ。

通常、詠唱中はその場から動くことが出来ないはず。

もちろん下級魔法等は走りながら等でも詠唱することが可能だが、階級が上になっていくと共に、動きに制限がかかるのだ。


「下された判決は有罪」

「なん……だと!!」


しかし、その場所から動いたのにも関わらず、瞬一はその詠唱を止めなかった。

さすがに悪魔も少し焦ってきたらしい。


「ちっ……鮮血と共にその命を散らせ!!」


先ほどと同じ攻撃を繰り出す。

だが、今度も瞬一はその攻撃をすべて避け切ってみせた。


「……人間如きがちょこまかとぉおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

「よってここに、神の雷にて裁きを下す!!」


瞬一の詠唱が終わる。

瞬間、悪魔の足元に、何個もの魔法陣が展開される。

地面のみではなく……屋上にも、空中にもだ。


「な、何だこの数の魔法陣は……あり得ない。人間が使う量の魔法陣じゃない!!」


悪魔がそう叫ぶのも頷ける。

瞬一はこの時、クラス分け試験の時に見せた時よりも、倍の魔力を送り込んでいるのだ。

だから魔法陣の量も、その時の倍であるのだ。

……だが、過度の魔力の使いすぎは、生命力の激しい浪費にも繋がる。

……つまりこれは、瞬一の生死の境界線を賭けた、本当の意味で最後の攻撃なのだ。

これを防がれると、瞬一の負けが決定する。

しかも、この術を詠唱し切る為に、さらに上級の技術を使ったのだ。

それが、詠唱中止キャンセル

詠唱の途中でそれを中断し、別の場所に移動した後、再び詠唱を再開するというものだ。

簡単なように聞こえるが、実はこの技術、魔力を相当消費するものなのだ。

だから、実戦の場に出たとしても、なかなかこれを使用する者が現れることはない。


「……言ったろ?俺は例えどんなことをしてでも大切な友達を助けるって……」


瞬一は、右手を振り上げて、そして。


「……人間の力を嘗めてると、後悔するってな!!」


悪魔に向かって叫び、瞬一はその術の名前を叫ぼうとする。

だが悪魔も、そう簡単に術を繰り出させるわけにもいかない。

次に自らに来るのは、神による裁きの雷だ。

だから、なんとしても直撃だけは免れたいのだ。


「させるかぁあああああああああああああ!!!!」

「……おせぇよ、悪魔ザコ

「なっ……!?」


呪文の詠唱を止めようと、悪魔は瞬一に攻撃を仕掛ける。

だが……それには余りにも、2mという距離は長すぎた。

悪魔の攻撃が瞬一に届く前に、


「これで終わりだ!!……ジャッジメントスパーク!!!!」


その術の名前を叫び、勢いよく右手を降り下ろした。

瞬間。

ダァン!!という激しい音と共に、天井を突き抜けて、雷が落ちてきた。

それは、悪魔を中心にして、様々な部分に着弾した。


「ぐはぁ!!」


まともに落雷を受けた悪魔は、意識など保てるはずがない。

やがて悪魔は、『一之瀬辰則』の体から抜け出し、上空で消滅していった。


「……終わった。これで、すべてが解決したのか」


瞬一は、すべての出来事が終わったことに安心して、辰則が倒れている左側に、ゆっくり倒れ込む。

無茶をし過ぎたせいか、体に力が入らないのだ。

後は、疲れが取れるまでこの場所で眠った後に、ここを抜け出せばいい。

そんなことを瞬一は考えていた。

……だが。


「ん?……!!」


ピシッ。

何かが崩れそうな音がする。

……瞬一は即座に、ヤバいと感じた。

このままこの場所で眠っていると、崩壊するだろうこの部屋から抜け出せなくなり、最悪の場合、辰則と共に死ぬ。

先ほどの攻撃が、柱とかに当たり、魔方陣を壊しただけで済まなかったのだろう。

だが……分かっていても、瞬一は動かなかった。

否、動けなかった。
















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