”悪魔憑き”からの解放
「そんなんで、俺達を倒せるとでも思っているのか?春香の体を労わって峰で攻撃してるようじゃ、意識を取り戻させることなんて不可能だぞ?」
挑発するように、悪魔は言い放つ。
当の本人である大和と真理亜は、構わず春香に峰で攻撃を仕掛ける。
「おい、よそ見する余裕があるのか?」
別方向を向いていた悪魔に対して、瞬一が言った。
「そうだなぁ。お前よりは強いから、よそ見してる余裕もあるってもんだな!!」
「うっせぇな。実力差なんて、お前と俺じゃ、はなっから存在しねぇだろうによ」
「……なんだと?」
今度は瞬一が悪魔に挑発する。
だが、
「……ハッ!テメェの仲間守れないで、何が実力差がないだ?実力差がないんだったら、最初から春香は捕まったりしないだろうなぁ!!」
「……テメェ」
「怒れよ!攻撃してこいよ!ただし……人間と悪魔との勝負なんて、テメェラ人間にとっては最初から絶望的な敗北しか待ってねぇけどな!!」
ドン!
改めて、悪魔が地面を蹴る。
瞬一は、その悪魔の攻撃に対して、
「その雷、彼の者の攻撃を打ち破らん……サンダーベルト!!」
まるで何かをなぎ払うかのように、瞬一は右手を払う。
瞬間、そこから放物線を描くように、雷撃が飛んだ。
「そんなものは……無駄だ!!」
悪魔は、自らの目の前に結界を作り出す。
そして、瞬一のその攻撃を、直前で打ち消した。
「……甘いな」
「何?」
瞬一が、にやけたわけ。
それは……。
「太古より眠りし雷の精霊よ、私に力を貸して!」
「な、何!?」
瞬一の後ろで、葵が精霊召喚術をすでに詠唱し終えていたからだ。
「いでよ、ライズ!!」
魔法陣が、葵の目の前に出現する。
そこから、雷を帯びた精霊が現れてきた。
「我が雷を受けよ!!」
そして、ライズから強力な雷が発せられる。
悪魔は、結界を再び発動させて攻撃を防ごうとするが、
「ぐはっ!」
それでも防ぎきれていなかった。
残った攻撃を受け、悪魔にようやっとダメージを与えることが出来たのだ。
「よしっ!」
「こっちももうすぐ終わりそうだ!」
晴信が、瞬一に向かってそう叫ぶ。
瞬一がその方向を向くと、
「ごめん……春香」
「うわぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
苦しむ春香を見て、若干大和は良心に傷をつけつつも。
大和は、春香の腹部に、剣の峰部分で斬りかかる―――!!
だが、
「がぁ!!」
直後に結界を発動させて、大和の剣は弾かれてしまう。
だが、大和はそれを計算のうちに入れていたらしい。
「今だ、真理亜!!」
「ええ!!」
真理亜は、春香を守る結界が消え去った直後に、己の剣を振りかぶり、春香を、やはり峰で斬りかかる!!
「あがっ!」
横に一閃。
それは春香の腹部を確実にとらえていた。
よろける春香の体にとどめを指すように、
「真理亜、横に飛んで!!」
大和に言われた通り、真理亜は左へ飛ぶ。
真理亜が元居た所に、大和が風魔術を応用して、飛び込んでくる。
「春香、目を覚ませ!!」
剣を持つ所を、春香に向けて……。
ドスッ。
「が……は……」
腹に、それを突き刺すように、剣の持ち手で、殴った。
尋常じゃない痛みが、春香を襲い、そのまま……。
「……ふぅ」
春香は眠るように気絶していた。
つまりは、春香の“悪魔憑き”の状態が、これで治ったともいえるのだろう。




