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Magicians Circle  作者: ransu521
悪魔憑き編
116/309

戦いの中で

「あ、葵!!」


標的は、葵であった。

何の目的があって攻撃したのかは不明だ。

しかし、この攻撃を受ければ、葵は確実に死んでしまうことだろう。


「させるかよ!」


瞬一は、葵と黒い弾の間に入り、


「あらゆる害から身を守る不可視の壁よ、我を守れ!」


結界を展開させ、その攻撃を弾く。

そして、時間をほぼ開けずに、


「聖なる雷よ、我の右手にその力の一部を宿せ!」


すかさず右手に雷の塊を作り、悪魔目掛けて走る。

同時進行で、大和は、春香の体をなるべく傷つけないように、軽い竜巻を起こして、春香を攻撃した。

しかし、この二つの攻撃は、どちらも当たらない。


「ぐわっ!」


まず瞬一の攻撃は、体を捻って避けられて、隙が出来た瞬一の体に、蹴りを入れる。

一方大和の攻撃は、当たる前に黒い何かに打ち消されて、消滅した。


「ちっ……あっつい弾でも喰らいやがれ!ファイアボール!」


今度は晴信が、春香と悪魔の二人に同時に攻撃をする。

だが、これらもすべて、当たらなかった。


「くそっ!」

「……大和、剣だ。剣の峰打ちかなんかで、一之瀬を気絶させろ。そうすれば、儀式を止められるかもしれない」

「……分かった」


瞬一は、以前にこの状態の人間を見てきているのだ。

だから、気絶さえさせてしまえば、この状態から解放されることも知っていた。


「お前らもだ!春香を気絶させる程度に済ますんだ。体に傷は、つけるなって言うのは難しいから、最低限にしろ!!」

「……よそ見してる暇はあるのか?」

「なっ!?」


瞬一が晴信達に指示を出している間に、いつの間にか悪魔は瞬一の背後を取っていた。


「鮮血と共にその命を散らせ……ブラッディスピア!」


悪魔は、詠唱を始める。

瞬間、その右手は、黒いドリルのような物へと姿を変えた。


「くそっ!雷を纏いし我が剣よ、その姿を具現して我の武器となれ!!」


瞬一は刀を取り出して、そのドリルを止める。

ガギャガガガガガガガガ!!


ドリルが回転し、剣とぶつかりあう音が響く。

それに気を取られている場合ではないと、晴信は悟った。


「今は一之瀬を助け出さないと……済まない、一之瀬!」


晴信は一之瀬に一言、そう謝罪の言葉を伝えると、


「俺の炎で目を覚ましてくれ……バーニングインフェルノ!」


いつもの、およそ詠唱とは思えないような言葉を並べる晴信。

しかし、それはいつものふざけたような物ではなく、願いを込めたような形の詠唱だった。

だが、そんな晴信の魔術ねがいも、春香には届かなかった。


「……闇・葬・皆・散!」

頭文字詠唱ショートチャントを……携帯なしで!?」


科学魔術師であるはずの春香が、携帯もなしに、しかも頭文字詠唱ショートチャントをしたことに、一同は驚きを隠せずにいた。

そう、これこそが“悪魔憑き”の特徴。

悪魔との契約の一歩手前まで来た者が、無意識で発動させる能力の一部なのだ。


「くっ……!炎よ、迫りくる脅威を燃やしつくせ!!」


真理亜が、携帯を取り出して、自分達の周囲を覆う。

するとどうだろう。

目前まで迫ってきていた刃物らしきものが、直後に地面より噴出した炎によって燃やしつくされた。


「おお……やるな、北条」

「ボサッとしてる場合じゃないわよ!今は一之瀬さんと止めないと!!」


真理亜は、剣を取り出して、大和と共に、春香の所まで駆け寄る。

刃ではなく、峰を向けて。


「……俺達は援護に回ろう、葵!……葵?」

「……」


晴信は、葵にそう言葉を投げかけたが。

当の本人である葵は、その場に茫然と立ち尽くしたままであった。


光の器(てんし)って、一体なんのことなんだろう……」


葵は、先ほど悪魔に言われたことを気にしていたのだ。

自分が何者なのか……よく分からななくなっていたのだ。


「……葵!!」

「はっ!……ご、ごめん、ちょっと考え事してた」

「ハァ……俺達は後方支援に回るぞ。瞬一と大和達の両方を助太刀するんだ!」

「……うん!」


迷っている場合ではないと判断した葵の顔は、決意に満ちた物へと変わる。

晴信と葵は、呪文を詠唱して、瞬一達を援護する方向へと回ったのだった。















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