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Magicians Circle  作者: ransu521
悪魔憑き編
113/309

とある可能性

最終的に言ってしまえば、見つからなかった。

どこを探しても、いない。

人の気配は感じるのに、それらしき人物の姿を見つけることが出来ない。


「そっちはどうだった?」

「駄目だった……いろんな場所を、何回も回ったりしてたけど、見つからなかった」


葵に聞いたところ、同じところを、時間をあけて何回か見てきたとのことだ。

しかし、そこには誰もいなかったのだという。

表情を見る限り……葵以外の他三人も、収穫なしというところか。


「おかしいだろ……学校にはいない、自宅にはいない……」

「かといって、出掛けたとするなら、鍵がかかっていないのはおかしいし……」

「かといって、二人はこの家から出ていないしな」

「「「……え?」」」


俺の言葉に、大和を除く三人が、声を揃えてそう返してきた。

……俺、そんなに変なこと言ったか?


「どうしてそんなことが分かったのかしら?」


北条が俺に尋ねてくる。

……そうか、コイツらはそこまで分かっていなかったのか。

なら、説明する必要があるな。


「お前ら、玄関から家の中に入る時に、下駄箱の中を見たか?」

「下駄箱……そんな物見てどうすんだ?」

「私も見てないよ」

「私も」


やはりな。

この三人は下駄箱の中まで見ていなかったか。

晴信に至っては、見る必要性があるのかと問いかけてきた。

これは重症だと思う。


「俺と、大和も見てたみたいだけど……下駄箱の中に、靴が二足あったんだよ。これが何を意味するか分かるか?」


俺は、晴信達三人に質問をする。

それぞれが答えを真剣に考える。

そして、最初に晴信が導き出した答えは。


「んなもん当たり前じゃねえか。この家は二人暮らしなんだからよ、靴が二足あって何が可笑しいんだ?」


惜しいな。

後もう一歩ってところだな。


「二人暮らしってのはいい点をついたな。けどこれは、家の中に二人がいることを指してるんだ。それこそ、実はもう一足あるとかの例外を除くがな」

「……あ、確かに可笑しいかも」

「何か気付いたのか?」


何かに気付いた様子の葵に、晴信が尋ねる。

すると、若干曖昧な表情を浮かべながら、


「春香ちゃんの家は二人暮らし。そして、家の中には二足の靴……外出しているのだとしたら、この家にある靴は、一足もなくなるはず」

「そう。外に出るのに裸足で出るやつなんて普通はありえない。だから、二人はこの家にいるはずなんだ」

「なるほどなるほど……」


本当に分かってるのかよ、晴信。

我が友ながら、少し不安になってきたぞ。


「けどよ。家の中をこれだけ探しても、俺達以外誰一人いないんだぜ?」

「家の中に一之瀬さんと兄がいるとするのなら、どこにいるのよ?」

「そ、それは……」


晴信と北条に聞かれて、答えることが出来なくなってしまう俺。

『一之瀬兄妹がこの家にいる』という証明が出来ない。

靴があるから、二人は家にいる。

本当にそうなのかすらも怪しくなってきた。


「例えば……どこかに隠し扉か、それに準ずる何かがあるとかね」

「か、隠し扉?」


大和がそこで、隠し扉の可能性を出してきた。

あまりのことに、晴信は尋ね返してしまう。

……隠し扉?


「その可能性があることを忘れてたな……この家には、ひょっとしたら、地下とかにいくことが出来る隠し扉があるのかもしれないな」

「……ねぇ、一つ気になることがあるんだけど」

「どうした?葵」


葵がここで、ある一つの疑問を口にする。

その内容は……。


「この家、外見よりも狭くないかな?」

「外見よりも……狭い?」


俺はそうは感じなかったけどな。

ていうか、外見をもう覚えてないし。


「確か、もう少し奥に部屋があるような気がするんだよね……」

「……とりあえずは、この家の奥まで行ってみよう。そこに、隠し扉があるかもしれないしね」


大和と葵の提案により、今度は全員で、この家の奥に行くことにした。
















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