捜索活動開始
「ふぅ……死ぬかと思ったぜ」
「まったく、いきなり出てきたから、私まで驚いちゃったよ」
「まぁ、あれを見て驚かない方が不思議だけどな」
歩きながら、俺達は先ほどの黒き軍勢の襲来について話をしていた。
………それにしても、さっきのあれ。
「本当に、何だったのかしら?」
北条が呟く。
俺にも何がなんだかさっぱり分からない。
そんな中で、俺がある意味期待するのは……大和からの言葉だ。
「ん?僕の顔を見たりして、どうしたんだい?」
コイツは何かを知っているかもしれない。
戦闘慣れもしている様子だし、ただ者ではないことは安易に想像がつく。
でなければ、あれだけの戦闘を繰り広げて、緊張もしなければ、息を切らさないなんて真似はできっこない。
「……さすがに僕にもお手上げだよ。ただ、予想くらいならつくけど」
「マジか?」
晴信が食いついてくる。
……予想ねぇ。
「多分だけど、僕はこう考えるよ」
大和の話を要約すると、こうだ。
まずあれは、人なんかではない。
人の形をした、所謂人形みたいなものだ。
クリエイター風に言うと、人形か。
次に、その人形は属性の影響を受けるのだという。
炎なら赤、水なら青、と言う風にだ。
今回は、黒だった。
つまり、その属性は……闇。
「けどよ。闇魔術の取得は、禁断の中の、更に禁断なことなんじゃなかったか?」
晴信が大和に尋ねる。
それに対して大和は、
「……そうだね。闇魔術の取得の際には、何かを犠牲にしなければならない。一言で言ってしまえば、等価交換ってやつだね」
闇魔術という強大な力を手に入れる変わりに。
自分は悪魔に対価として、何か大切なものを、もしくはそれに準じた行動をすることとなる。
「……まさか、一之瀬の兄は、すでにその儀式を……」
「恐らくは済ませてしまっているだろうね。でなければ、あんなものが僕達を襲って来たりしない」
だよな。
そんなことでもない限り、黒いやつらが出てくるはずもないよな。
「……でも、ちょっと待てよ。それじゃあ、一之瀬の兄は何が目的なんだ?何も、本人が隠れる理由もないだろうに」
俺は、そんな疑問を口にしていた。
だって、そうだろう?
自分が隠れてまでしなければならないことって、一体なんなんだ?
「……そうしないとならないような計画を立てた、もしくは、出てこれない理由が出てきてしまったのかの二つだね」
「出てこれない理由……か」
もしや、契約した悪魔の暴走……とかか?
「その可能性は否定出来ないね。春香の兄の人間性からして、こんなことはしないだろうしね」
「……妹の一之瀬まで巻き込むようなことはしない、ってことか」
「……だね。私もそう思うな」
俺の言葉に、葵は同意を示す。
北条も同じ意見らしい。
「どうなっちまってんだよ、この家はよ」
「それに……さっきから気になってるんだけど、リビングにも誰もいないっていうのはどういうことなのかしら?」
ここで北条が、そんなことを言ってくる。
……人の気配はすると言うのに、家の中はもぬけの殻。
誰も出てきやしない。
「……おかしい。誰かがいるから、さっきの黒き軍勢が出現してきたんだ。なのに、誰の姿も見つけられないのは、変だ」
「……家中探し回ってみよう。こういう時は、片っ端から潰していくのが手っ取り早い方法だ」
晴信がそんなことを提案してきた。
……今回ばかりは、晴信の意見に賛成だな。
「ああ、それがいいかもな」
「うん。悪くない提案だね。早めに作業も終わりそうだし」
「よし……そうと決まれば、散るぞ!」
俺達は、それぞれ単独行動を行うこととなり、一之瀬兄妹を探すこととなった。
……どうか無事で居てくれよ、一之瀬も、一之瀬の兄も。




