狭い空間での戦闘
敵は、剣で瞬一達の体を斬り裂こうと襲いかかってくる。
瞬一は、
「ハァッ!」
襲いかかってきた一体を、刀で斬る。
すると、黒い何かが分散して、それは消えていった。
「遅い!!」
大和はその間に、二体の敵を倒していた。
だが、そんな大和の背後を取るように、
「大和、後ろだ!!」
「!!」
前にも敵が一体、後ろにも敵が一体。
大和はいつの間にか、敵に挟まれていた。
このままでは、大和はやられてしまう。
「おっと!俺のことを忘れてもらっちゃ困るなテメェら!!」
ドン!
晴信の手元から鳴り響く銃声。
その弾は炎を帯びていたらしく、大和の背後を取っていた敵を燃やしつくす。
間もなく敵は、その場で消滅していた。
「ありがとう、晴信」
「礼なら敵を倒してからにしな。当分コイツらはやられてくれそうにないからよ」
瞬一と大和、それに晴信が倒した敵の数は、合計四体。
すなわち、後六体は残っているということだ。
大和の前にいた敵を倒すことも出来たのだが、大和が背後に気を取られている内に、安全地帯まで避難していた。
「……一気に片づけたいところだけど、ここ家の中だしな……」
仮にもここは春香の家の玄関だ。
魔術で敵を倒すことが出来るとはいえ、他人の家に損傷を与えるわけにもいかない。
そういう意味でも、彼らにとってやりにくい戦闘でもあった。
簡単な魔術なら使えるかもしれないが、それではこの敵を倒すことが出来ないかもしれない。
なので、剣や刀、銃などの武器を使用して敵を倒す方が、遥かに楽なのであった。
「第二陣ってか!!」
しばらくの休戦時間が過ぎて、敵が再び襲いかかってくる。
「そらよ!」
瞬一は、縦に刀を振り、一体の敵を倒そうとする。
しかし。
ガキン!という衝突音が鳴り響く。
「ちっ!」
瞬一の刀は、敵に受け止められたのだ。
力負けしまいと、瞬一は刀を持つ手に力を込める。
だが。
「うわっ!」
一瞬の気の緩みが生んだ隙によって、瞬一は刀を落としてしまった。
刀を拾う時間は……なかった。
否、ないことはなかったのだが、今この瞬間に刀を拾うとなると、相手の攻撃を受ける危険性がかなり高くなる。
それは、紛れもない事実であった。
「くそっ!」
だから瞬一は、刀を拾うことを諦めて、バックステップで後ろに下がってから、
「力を宿す雷の剣よ。その姿を具現して我が武器となせ」
改めて刀を作った。
「瞬一、大丈夫かい?」
「あ、ああ……大丈夫だ」
大和が剣を構えつつも、瞬一の心配をする。
その間に、
「たぁっ!」
ダン!
晴信が、自らに近づいてきた敵を一体、銃で撃ちぬいた。
「あとどのくらい残ってる?」
「……四体かな」
「十分だ……行くぞ!!」
改めて刀を構えなおして、瞬一は残りの敵を一掃する為に斬りかかる。
大和も、瞬一の右を行く。
「……てりゃっ!」
ズバッ!
居合いにも似た斬り方で、瞬一は敵を一体斬り伏せる。
横では大和も、
「……!」
上から剣を振り下ろすような形で斬った。
「こっち来るんじゃねぇよ!そんなに殺されたいのかよ!!」
ドン!
晴信は、近づいてきた敵を、銃で撃つ。
こうして、残りはあと一体となった。
「これで終わりだ……その命、散れ!!」
最後の一体が襲いかかってきたところで、瞬一はその敵を斬りに行く。
しかし。
ガキン!
「またか……時々反応がよくなるんだよな、コイツ!」
悪態をつきながらも、今度は刀を落とさないようしっかりと握っている瞬一。
「……今だ、大和!」
「……ああ!」
敵が瞬一に気を取られている内に、いつの間にか後ろに回っていた大和は、背後より敵を斬る―――!!
ザシュッ!という音がして、敵の体は真っ二つとなる。
そして、そのまま……。
「……ふぅ、終わったか」
「ああ~疲れた」
瞬一と晴信は、今までの緊張感が途切れた為か、その場に座り込んでしまった。
その中でも、やはり大和は平然とした顔で立っていた。
「それじゃあ、二人を呼び戻してくるね」
「あ、ああ……」
大和は扉の外にいる葵と真理亜を呼びに行く。
……そんな中でも、瞬一は大和のことを、凄い奴だな、と考えていた。




