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Magicians Circle  作者: ransu521
悪魔憑き編
109/309

黒き軍勢

「……静かだな」

「……ああ」


瞬一達が中に入ると、そこは無音の空間であった。

瞬一達がたてる音だけがそこでは響き、後はおよそそれらしきものなどなかった。

彼ら以外に人がいる様子も……ない。


「……静か過ぎるね。これじゃあ逆に不気味だよ」


葵が、半ば独白するように呟く。

静寂というのは時に、人間に対して恐怖を生むものなのだ。


「一之瀬達は一体何処に……」


それを確かめる為に、瞬一達は靴を脱ぎ、中に入ろうとした。

その時だった。


「!ちょっと!前、前!!」

「……え?」


靴を脱ぐために視点を下にしていた瞬一は、慌てている様子の北条の声を聞いて、半ば焦るように視点を上にあげる。

すると、そこには……。


「うわっ!?」


真っ黒い、人の形をした何かが、瞬一の前に現れていた。

右手には……剣。


「コイツら……敵か?」


すぐさま臨戦体勢に入る晴信。

若干遅れる形で瞬一も体勢を整えて、大和はすでに準備万端のようだ。

真理亜と葵の二人も、瞬一達を援護しようとしたが、


「葵……ここは俺達三人で十分だ。だから、少しだけ避難しててくれ」

「僕からもお願いするよ……真理亜も危険だから、離れてて」

「う、うん……」

「喜んで!!」


葵は若干心配そうに。

真理亜は大和に心配されたのが嬉しかったようで、葵を連れて一旦外に出た。


「……数は?」


二人がいなくなった後で、瞬一が大和に尋ねる。


「八、いや、九……」

「十はいるぞ」


大和が答えようとして、そこで晴信が正確な数字を出してきた。


「こんな狭い通路に十もいるのかよ……」


鬱陶しいものを見るような目をしながら、瞬一はそう呟く。

玄関という空間に、十の敵というのは流石に多すぎた。

満足に戦えないし、逃げ場もない。

戦闘をするのに、最も不適な場所。

だが、条件はどちらも同じなのは事実である。


「……やるぞ、二人とも」

「……ああ」

「うん」


瞬一の言葉に、晴信と大和の二人が頷いた。

そして、瞬一は刀を、大和は剣を出す。

その一方で晴信が出したものは……。


「銃か……」

「俺も剣を出してもいいんだけどよ、流石に前衛は三人もいらないだろ?」


すなわち、晴信は援護する側に回るというわけだ。


「銃以外にも、術とかを使って相手を攻撃してくれたら助かるかな」

「あいよ。ご期待に応えられるようには頑張るよ」


晴信は、銃口を敵に向ける。

瞬一と大和は、それぞれ刀と剣を構える。

すると、瞬一達の敵意を認めたのか、


「……!!」


相手の軍勢も、手にしている武器を構える。

……数で言えば、圧倒的に瞬一達の方が不利。


「……瞬一。僕は右から来る敵を斬る。瞬一は左からの敵を斬って欲しい」

「分かった……峰で斬った方がいいのか?」


敵にも、晴信にすらも聞こえないような声で、二人は作戦をたてる。


「いや、峰なんて甘い考えはやめた方がいい……第一、あの軍勢は、決して人なんかじゃない。だから、本気でかかった方がいい、いや、本気を出して」

「……あ、ああ。分かった」


この時瞬一は、大和に対して恐怖にも似た感情を感じていた。

こんな事態に陥っているというのに、大和の顔には、緊張の色が見えないのだ。

晴信は、言葉こそいつも通りだが、汗をたくさんかいている。

瞬一も、鳴り響く心臓の音を止められないでいた。

だと言うのに……真横に立つ大和からは、それが感じられない。


「(どういうことなんだ?大和って一体……)」


そして、


「!来た!!」

「「!!」」


敵の軍勢は、瞬一達目掛けて襲いかかってきた。
















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