突入
「ここが一之瀬の家か……」
校長に書いてもらった地図を頼りに、俺達は一之瀬の家までやってきた。
そこには……結構大きな一軒家が建っていた。
「へぇ。結構大きな家なんだね」
家の全体を見て、大和が呟く。
「羨ましいぜ……俺もこんな家に住みたいなぁ」
「晴信は一軒家じゃないの?」
晴信に尋ねる葵。
……晴信と俺は、中学の時から寮生活だったからな。
そういう点では、一軒家という生活には憧れるのかもしれない。
……最も、うちの実家は一軒家なのだが。
「ああ。寮生活だし、実家もマンションだからな」
「へぇ……そうなんだ」
納得する葵の隣では、
「……いつか私も、大和君と二人で……(#^.^#)」
……こら、妄想モードに突入するんじゃねぇ、北条。
さすがの大和も、少し引いているぞ。
「さて、いつまでもこんな所で突っ立ってる場合じゃねぇな」
「そうだね。そろそろ中に入らないと。僕達がここに来た目的は、春香とお兄さんの様子を確認することなんだから」
大和が同意を示す。
そうした所で、まず俺達はインターホンを鳴らす。
ピンポーン。
「……出ないわね」
いつの間にかトリップ状態から戻ってきた北条が、そう呟いた。
一回じゃ気付かなかったのかな。
よし、もう一回。
ピンポーン。
「……出ないな」
二回目も出なかった。
……なんとなく焦燥感に襲われる。
「もう一回押してみようよ」
「一回じゃ足りねぇ。今度は二回連続だ」
葵の言葉に、晴信が付け足すように言った。
よし、今度は二回連続で。
ピンポーン、ピンポーン。
「……」
だがしかし。
やっぱり家の中から誰かが出てくる気配はしない。
……これは一体、どういうことだ?
「……まさか、中で倒れちゃってるとか?」
「まさか。さすがにどっちか片方が倒れてたとしても、学校、もしくは病院に連絡してるって」
「じゃあ……二人共って可能性は?」
「……ここまで来ると冗談じゃなくなってきたな」
最早二人共倒れているという可能性も否定できなくなった。
……だが、本当にそうなのだろうか?
もっと、何か嫌な予感が……。
「もうこうなったら仕方ねぇ!強行突破だ!!」
「あ……お、おい!!」
家の柵を乗り越えて、晴信が一之瀬の家の敷地内に上がり込む。
そして、鍵がかかっているだろう扉を力限りに引っ張って開けようとした所で。
ガチャッ
「……あれ?」
「開い……た?」
鍵がかかってなかったのか?
でなければ、こんな簡単に開くわけがない。
「鍵がかかっていない扉……益々怪しくなってきたね」
大和がいつもの口調で、しかし緊張感が少しだけ滲み出る感じでそう呟く。
「……本格的に嫌な予感がしてきた」
「……中に入ろうよ」
俺が呟いた後に、みんなにそう提案してきたのは、葵だ。
その表情は真剣そのもの。
何が起こっていたとしても……友達を救いだそうとしている目だ。
「この柵の鍵も外しといたから、中に入ろうぜ!でなければ……何が起きてるのか分からねぇしよ」
「……迷っていても時間の無駄ね。入ることにしましょ」
みんなが同意を示した所で、柵を開き、俺達も中に入る。
扉の前に立ち……何故か喧しい程に鳴っている心臓を気にしつつ、息を整え、
「……行くぞ」
晴信が扉を静かに、ゆっくりと開き、中に入った。




