表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Magicians Circle  作者: ransu521
悪魔憑き編
107/309

悪魔の目的

Side春香


「う……」


頭が痛い。

体全体が、動かない……。

胸が、苦しい。

けれど、私はそこに立っている。

……何でしょう、この矛盾は。

『私』の意思が働いているわけでもなく、私はこの場に立っている。

……体が、動かない。

手も動かせない。

足も、地面に垂直に立つこと以外許されない。

視界には……何やら魔法陣で埋められた部屋が映って見えます。

……これは一体、何なのでしょうか?


「目が覚めたか、春香」

「にい……さん?」


私の耳に聞こえてきたのは、兄さんの声でした。

しかしその声は……いつもと違った感じの声にも聞こえてきました。

いつもと変わらないはずの兄さんの声なのに……何故か感じてしまう違和感。

分かりません……何でそんなことを感じてしまうのか、私には理解できません。

目を合わせようとしても、私からでは合わせることが出来ません。

けれど、私の視界に映っているのは、まぎれもなく兄さんです。


「ああ。まぎれもなく、俺だ。春香の兄の、一之瀬辰則だ」

「……あ、あ」


言葉を発しようとして、そして発せないことに気づきました。

満足に言葉が話せない……そのことが、ここまで怖いことなのだと、この瞬間気付かされました。


「その顔は、いつもの兄とは違うじゃないかって顔をしているな」

「……」


肯定の意を表したくても、言葉を発することもできなければ、首を縦に頷かせることも出来ない。

だから私が出来ることは……目で兄さんに、私が思っていることを伝えること、だけです。

そして私は……兄さんと目線を合わせた時に、気づいてしまいました。


「……あ……め……」

「ん?目のことか?」


兄さんの目が……赤く染まっていたのです。

体からは、何やら黒い『負』の塊みたいなものが出されているような気もします。

兄さんの身に、一体何が起こったというのですか?


「これはちょっとした変化でな。『一之瀬辰則』の体を乗っ取る際に出来た、いわゆる副産物のようなものだと考えてもいいだろうな」

「……え?」


『一之瀬辰則』の体を乗っ取った?

今、兄さんは確かに、自分の口からそう言いました……よね?

それって一体……どういうことなのでしょう?


「……まだ分からないか?なら教えてやろう」

「……」

「俺は『一之瀬辰則』の体を乗っ取った、悪魔だ」


あ……くま?

悪魔って……あの……。


「知識では知っているようだな。闇魔術習得の際に、術継承者が契約を交わす相手……それが悪魔だ」


授業で習いました。

この世には、取得してはならない魔術属性が一つ、存在します。

その属性が……『闇』。

取得する際に、悪魔に何らかの代償を払わなければならない、リスクの高い属性です。

その代わり、それはかなり強大な力を誇っているみたいですけど……。

まさか……兄さんが……。


「そうだ。俺と『一之瀬辰則』が契約を交わしたのは、コイツが中学の一年生になった時だったかねぇ」

「……え?」


兄さんが中学一年生の時、というと……私達のお母さんとお父さんが、殺された日と同じ日じゃないですか。

それじゃあ兄さんは、まさか……。


「そうだ。いずれ訪れる復讐の時まで、秘密にしてきたのだよ……妹であるお前にな」


そんな……兄さんが、復讐の為に闇魔術を取得していたなんて……。

嘘……ですよね?

嘘だと言ってください……兄さん。


「もうすぐ完成する……この術式さえ完成してしまえば、お前の体は俺のものとなる、一之瀬春香!!」

「……!!」


悪魔の目的は……私?

何で……私の体を手に入れて、どうなると言うのですか?

分かりません……一体、何が起きているのか、さっぱり分かりません。

……助けて、誰か、助けて……。















評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ