帰り道
「あ~楽しかった!」
帰り道。
俺達はまとまって学校から出てきた。
特に待ち合わせをしたわけでもないのに、何故か全員が揃って学校に出てきたのだ。
それは、二年S組にいる俺達だけでなく、植野姉妹に空も含めたメンバーで、だ。
「赤組が優勝するんじゃないかって思ってましたけど、まさか本当に優勝するとは思いませんでした……私の組なんか、最下位ですし」
そういえば、優菜のところは最下位で終わってたな。
「く~!瞬一先輩の組に負けるたのは、ちょっと悔しい!」
「……どうだ?恐れ入ったか?」
「……宮澤先輩は、対した活躍してないじゃないですか」
「うるさいな!!」
恐らくは気にしているだろうことを、刹那は指摘する。
……確かにそれは俺も思った。
100m走でも結局引き分けに終わってるし、しいて言うなら……玉入れの時の活躍が一番じゃないだろうか?
なんというか……地味だ。
「今、地味とか思っただろ?」
「ああ、思った」
「せめてフォローしてくれないかな!?」
まぁ……なぁ?
「私だって、もう少し活躍したかったな……」
「北条?」
珍しく北条がそんなことを呟いていた。
「だって、もし活躍できていたら……(´∀`人)」
出たよ、北条の顔文字感情表現法。
長ったらしい名前だけど、極端に言えば、顔文字で感情を表現する方法のことだ。
……あれ、まんまじゃねぇか。
「何一人で悩んでるの?」
そんな言葉を投げかけたのは、葵だった。
「いや、北条の顔文字感情表現法について考えていた」
「……え?」
「分からないのならそのままでいい。むしろ、そのままでいたほうが、お前にとっても幸せかもしれない」
「??」
わけもわからないと言ったような表情を浮かべている。
そりゃそうだ……言ってる俺も、何言ってるのか分からないからな。
「それはそれとして、そろそろ俺達も寮に着くんじゃねぇの?」
「ていうか、葵は道あっちだよな?」
「あ、そうだね……」
俺達と同じ方向に行こうとしていた葵に、俺はそう注意をする。
後ろでは、空が、
「お姉ちゃん……しっかりしてよ」
と、呟く声が聞こえてきた。
「んじゃ、俺達は寮に行きますか」
「また学校で会おうな!」
「ああ!」
一通り挨拶を済ませ、俺達は寮へと、葵と空、そして一之瀬はそれぞれの自宅へと帰って行った。
楽しかった体育祭もこれで終わり。
次の日からは、学校での授業が待ち受けている。
Side辰則
「ハァハァ……うっぐ!」
突然襲われた胸の痛み。
俺の中で、何かが暴走している……のか?
借りにそうだとしても、一体何が……。
「……悪魔、か」
俺は、とある事情から闇の魔術を手に入れた。
その際に俺は、悪魔と契約したのだ。
闇魔術を手に入れる際、その使い手は悪魔に何かの代償を支払わなければならない。
俺の場合は……俺の心の中に、その悪魔を住まわせる、と言うものだ。
他にも様々な種類があると聞くが……今はそんなことは関係ない。
「今さら……何を……しにきた?」
俺は、途切れ途切れに言葉を発する。
悪魔は、俺の頭の中に直接、こんなことを告げてきた。
『トキハキタ。ソノカラダ、ワレガカリルゾ』
「何を……言ってやがる?」
体を借りる?
何を言っているんだ、この悪魔は。
『アノショウジョヲリヨウスルノダロウ?ナラバキサマデハナク、ワレニカワレバヨイダロウ。ワレナラトマドイナドシラヌ。ユエニ、タヤスイ』
「少女……春香のことか!?」
コイツ、春香をどうしようって言うんだ!?
『アノショウジョノカラダハキレイダ。ソレニクラベテ、コノカラダハキタナイ。タシカニニクシミトゾウオデミチアフレタ、スミヤスイクウカンデハアルガ……タリヌ』
「何が……足りないって言うんだ?」
俺は悪魔に尋ねる。
すると悪魔は、こう言ってきた。
『アクニソメルコトガデキル、キヨキココロダ。アノショウジョハ、キヨキココロニミチアフレテイル。ユエニ、ワレノサイコウノカテトナル』
「まさか……俺の心から離れて、春香の体を乗っ取るつもりか!?」
そんなことはさせない。
いくら目的の為とはいえ、そんなことはさせるわけにはいかない……!!
『アラガッテモムダダ、ヒトノコヨ。ショセン、キサマラノチカラナド、ワレノマエデハムリョクニヒトシイ!!』
「ぐ……がぁああああああああああああああ!!」
苦しい。
胸が痛い。
意識が、とぶ。
心が、やみの奥ふかくにウメラレテいく。
春香…ごめん。
ついに本編100話突破!
これからも、どうかよろしくお願いします!!
因みに、次回は100話到達記念超短編集&キャラ紹介です。




