激闘は幕を閉じる
リレーも終盤に差し掛かり、いよいよ最終ランナーへとバトンが渡されようとしていた。
さっきまで一位だった赤組だったが、途中でまさかの追い上げを果たした黄色組に抜かされて、二位に転落していた。
まぁ、青組に関しては敵視する必要もなくなってきているので、よしとしよう。
「ここまで来て黄色組にだいぶ離されたな……アンカーの大和がどこまでやってくれるか」
後は大和に賭けるしかない。
大和がどこまで速く走ることが出来るのかに、すべてがかかっている。
「大和、まかせた!」
「この差は、僕が何とか埋めてみせるよ」
大和は、右手でバトンを受け取る。
と、同時に。
「うわっ……速いな、おい!」
凄いスピードで、走り始めた。
「いよっしゃ!これなら黄色組を簡単に追い抜かせる!!」
「いっけ~大和!!」
晴信が遠くから応援しているのを受けて、俺も叫ぶ。
大和は、その問いに答えるように、さらにスピードをあげていく。
「くっ!このまま負けるわけにはいかない……さらにスピードアップ!!」
「遅いね」
「なっ!?」
相手がスピードをあげようとしたら、横に大和が並んでいた。
……結構差があったはずなんだけど。
さすがは大和……味方ながら恐ろしいやつだぜ。
「先に行かせてもらうよ。このリレー、負けるわけにもいかないしね」
「くっそ!」
遅れるような形で、黄色組の選手が追いかけてくる。
だが、流れに乗った大和に、勝てるはずもないだろう。
「よし……」
そして。
『ゴール!!白熱の二年生クラス対抗リレーは、赤組のまさかの逆転勝ちで幕が閉じられました!!』
「よっしゃ!!」
大和が一位でゴールした。
すなわち……赤組に50点加算されたことを意味する。
……例え赤組が次の勝負に負けたとしても、これは結構な高得点だ。
「……三矢谷、とか言ったな」
「ん?」
ふと声をかけられる。
俺はその方向を向いてみると……そこには柳瀬がいた。
しかし、その顔は観念したような表情だ。
「完敗だ。最後のやつはともかく、お前も凄かった」
「……お前もなかなかの走りだったけどな。あれほど窮地に追いやられたのは、初めてだ」
「そう言ってくれるとは、ありがたいな」
……まぁ、なんだかんだあったけど。
俺は柳瀬に勝つことが出来たってことで。
もうこの勝負のことは、水に流してやろう。
「……悪かった。さっきはあんなこと言って」
「いや、別にいいんだよ。分かればいいって」
「……こんなやつだから、葵様もお前に惚れたんだろうな」
「は?」
最後の方が何を言っているのか分からなかったので、俺はもう一度言うように頼んだのだが。
「いや、何でもない」
と、軽く拒否された。
……何だか少し虚無感を感じた気がする。
「……さて、このことはおしまいだ。けど、俺は葵様のことはまだまだ諦めたわけじゃねぇからな!」
「やめとけ。アイツとお前とじゃあ、釣り合わないぞ。ただでさえ扱い大変なんだからな」
「そんなことない!葵様は優しいお方だぞ!!」
……本当に、葵はこいつに何をしたのだろうか。
慕う程のことを、いつの間にか葵はしていたんだな、きっと。
まぁ、そのことは後で聞けばよしとして。
「とりあえずは、三年生のリレーでも見て過ごすことにしようぜ」
「……ああ」
と、俺達は次に行われる三年生のリレーを見ることにした。
すると。
「瞬一」
「おお……大和か。お疲れ」
「さすがにちょっと疲れたかな……」
先ほど走ってたばかりの大和もやってきたので、大和も一緒に見ることとなった。
……優勝するのは、はたしてどの色なのかね。




