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迷走

「本当に彼女では、ないのか?」


「結果は見ての通りだと思いますが?」


「・・・そうか、邪魔をした」


分かりやすく肩を落としトボトボと執務室を王子は出て行きました。


「お疲れ様でした、先程は申し訳ございません」


「いえ」


護衛騎士のリックさんが改めて謝罪して来ました

王子の行動を聞いてみると、扉を開けて行くものと思っていた所、閉めて中へ入って行ったので焦り、聞き耳を立てていつでも踏む込めるようにしていたそうです。


直ぐに私が中から出て来て立ち会いをお願いしたので、ホッとした、と持ち場に戻って行きました。



「ふう、ひとまず区切りはつきましたかね」



意外と王子に時間を取られたので慌ててお昼の準備を再開


王子の話を伝えながら、会議から戻って来たデューク様とシチューを食べさせ合いっこしました!





これで王子も来ないだろう

そう油断していた私はこの後の王子の行動に驚かされる事になります・・・


なんと王子がデューク様の留守に大公邸宅に来たのです!


デューク様は隣国への交渉へ、私も随行する予定でしたが体調を崩してしまいお屋敷で療養している矢先の事です。


「本当に来たわ、我が息子ながら呆れた頭脳ね・・・」


「そうですね・・・」


「シンディーちゃん、顔色悪いけど大丈夫?」


「あまり、大丈夫ではありません・・・」


強い吐き気と眠気、何かとイライラしてしまいます

身体も重く、基本的にはベッドで寝ていたのですが

どうやら王子は見舞いに来た、との事です


「やっぱりお断りしてくるわね、寝てなさい」


「すいません、ありがとうございますリュシエルお母様」


「娘の体の事だもの、心配して当然よ」


「はい・・・」


リュシエルお母様とカイトお父様に王子の対応をしてもらい眠ります。


正直、ひとに構っている余裕が無いほど具合悪いです

お医者様に診て頂きましたが、

「まだ、なんとも・・・」

と言って何やら検査をしていきました、結果は三日後に出るらしいです。


まだってなんですかね、もしかして重い病気でしょうか・・・


何となく鬱々としてきます、デューク様に会いたいなぁ

寂しい・・・


いけない、まただ、気持ちが上手くコントロール出来ません

気を抜くとすぐに落ち込みます、誰かと話している時は大丈夫なんですけど・・・


そんな私を見て気を利かせてくれたのか屋敷の誰かが呼んだのでしょう

雪とお母様が会いに来てくれました

嬉しい・・・、ほっとします。


しかし帰っていってしまった途端、とても不安な気持ちになってしまいます


「うー・・・」



入れ替わりに王子は今日も来たそうです、イライラします・・・

お母様とお父様が追い返してくれました

「シンデレラは人に会える状態ではない」と言ったそうですが、雪とお母様が帰って行く所を目撃したのでしょう

「他のものに会えて、何故自分には会えないのか!」

と怒鳴り散らしていったそうです・・・



更に次の日、一段と体調が悪く起き上がる事もなく寝ていました。


外が騒がしいですね


バン!と寝室の扉が乱暴に開かれました


「王子!シンデレラは臥せっています、御容赦を」


「うるさい、昨日人に会ったのだろう、何故俺だけ会えぬ」


「家族に会っただけです、今日は特に具合が悪いのでお引取りを!」


なんて、言い合いをしています

あんな温厚なお父様が怒りを込めて話しているのが分かります

なんなの、この王子、寝室に許可なく入って来て、本当にもう・・・


イライラもですが、お腹の底の方がムカムカして気持ち悪くなって来ます


「サリー・・・」

出て行って貰うことを諦めてサリーに声を掛けると

付き合いの長い彼女も理解したのでしょう

起き上がるのを手伝ってくれました。


「シンデレラ様・・・」


「だい、じょぶ、・・・少しだけなら、」


「なんだ起きてるではないか!」


いや、アンタが来たから起きざるを得くなって、無理して起きたんだろうが!


ズカズカと病人に対する気遣いもなく近付く王子

足音さえも不快でした


王子は自分を誇るが如く王家の、自分のいい所を挙げて私に話していたそうです

そうです、というのは私はこの時点で吐き気を必至に堪えていたので話なんか頭に入っていません

少し相手をしたら満足するだろうと思っていたのですが、延々と話していたそうです


「顔色が悪いな、閉じこもっていると気が滅入るだろう、どれエスコートしてやるから中庭にでも・・・」


と言って外に出そうとしたそうです

お父様もお母様もサリーやセバスさんも病人に何を言っているんだと我慢の限界で叩き出そうとしたらしいのです

最初から顔色は土気色の人間の寝室に押し掛け、今更それに気付いてなんなんだ、と


が、その前に私が限界を向かえてしまいます


王子がベッド脇に跪いて私の手を引っ張った瞬間、

「ぐ、げぽ・・・」


王子に吐瀉物をたっぷりと頭から掛けたそうです、憶えていません・・・



「きゃー!シンデレラ様!」

「シンディーちゃん!!」

「シンデレラさん!?」


私を呼ぶ声に、遠くで何やら喚く声も聞こえましたが、私に気にする余裕は無く・・・


気付けば次の日になっていました。







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