直接対決
はい!次の日です
執務室備え付けのキッチンでお昼の下拵えしていると・・・
コツコツコツ・・・
「デューク様?」
足音が聴こえたので振り向くとそこには王子が居ました
来た・・・
「あ、王子殿下失礼しました・・・」
「いや、構わん」
「デューク様は会議に行っておりますが」
「ああ知っている、今日シンデレラ夫人、貴女に用があるのだ」
「用、ですか?」
なんでしょうか?と首を傾げるシンデレラ
勿論、来るとは思っていたし要件も思い当たるので演技である。
「来い」
有無を言わさずかい!お昼の準備が・・・
渋々キッチンを出て執務室へ行くと扉が完全に閉められている
これはまずいとシンデレラはすかさず入り口を開ける
「シンデレラ?」
王子が呼び止めるのも聞きません、聞こえないふり!
「リックさん、立ち会いをお願いします」
「は!・・・・・・申し訳ございません」
扉の傍に居る護衛騎士リックさんに同席をお願いします、だって私が王子と二人きりの密室なんて色々と危険です。
何されるか分からない警戒も有りますし、不貞を疑われる可能性もありますからね
家族や伴侶の男女以外、通常なら扉を開けて完全密室にはしないのがマナー
恐らく王子はシレっと執務室に入って扉を閉めたのです
リックさんもマズイとは思ったものの相手は王子、わざわざ扉を開けて呼び止めるのも角が立つと思ったのでしょう。
敬礼した後に小さな声で謝罪して来たのがその証です。
扉は全開にしてやります、そこまで開ける必要は無いのですが見たいなら見ろ!何も無いからと堂々としてやるのです。
「シンデレラ扉を閉めて、それに護衛も外して貰おうか」
「申し訳ございません殿下、私はデューク様の妻疑われる可能性は欠片も作りたく有りませんので」
自分が言えば従うとでも思っていたんだろうか驚く王子だが
「俺がデュークの妻に何かするとでも?いいから外せ」
「何かするしないの問題では有りません、外から見て扉を閉め切った室内に二人きりという事が問題なのです。
リックさん居てください」
「大した問題ではない、気にするな」
お前が気にしなくても私が気にするんです!
「私にとっては大変な問題なので、例え噂話でも私は他人にデューク様の愛を疑われたく有りません。
私はデューク様のものですから」
「っ!・・・そうか、分かった、では客間の方で、」
何が分かったんですかね、客間こそ完全個室な密室じゃないですか
執務室という公的な空間から動く訳には行きません!
「此方で聞きます、それでどういったご要件でしょうか」
マナー違反ですが、執務室の来客用ソファーに先に座ってしまいます、私は此処から譲りませんよと意思表示します
「分かった・・・、良いだろう」
渋々といった様子で王子は向かいのソファーに座ります
先程から「シンデレラ」と呼び捨てしてますけど、いくらなんでも失礼過ぎませんか?
既婚なら「夫人」、未婚なら「嬢」「さん」と呼ぶのが基本
王子とはいっても守るべき礼儀はありますよ
モヤモヤとするシンデレラを他所に王子は話し始める
「シンデレラ、貴女は舞踏会の姫ではないか?」
「姫? と言いますと、殿下とダンスをしていた?」
「とぼけ無くても良いだろう、あの姫にそっくりなのだ
、いや本人なんだろ?」
「いえ、違いますが・・・」
「だが、そっくりなのだ、」
「似ていると言われましても、かの姫様は輝く金の髪でしたよね、私の髪とは違うと思いますが」
「しかし、その瞳、1度間近で確認しても?」
「ダメです、このまま確認を」
「何故だ」
「何事も適切な距離というものが有ります、至近距離で殿下と見つめ合っていたなんて噂は困りますから。
どうしてもと仰るならデューク様同席の元で、」
「く、」
じっくり眼を覗き込まれて間違いないと言われても面倒臭いです
「どうやら殿下は私が舞踏会の消えた姫と思っているようですが、違いますよ」
「そうだ!ガラスの靴を試して貰って良いか!」
「また履くのですか?」
「は、また?」
「舞踏会の次の日、学校で女生徒全員に試しましたよね
私もやっているのですが?」
「も、もう一度だ!」
当然ですがガラスの靴(偽)が私の足に合う事はありません
「小さいですね」
「そ、そんな・・・、確かにそっくりなんだ・・・」
「仮に、私がその姫君だとして殿下はどうなさるおつもりなのですか?」
「!!」
ガラスの靴を履ける消えた姫君を妻に、と公言している王子
だけど私は既にデューク様の妻なのだ、消えた姫君=シンデレラに辿り着いたとしてどうするのか
素直な疑問をぶつけてみます。
大公夫人に横恋慕、それがどれだけの問題なのかは流石に王子でも分かるでしょう。
これまでの様子を総合すると消えた姫君に似ているから私でも構わないか、みたいな妥協した感じが見え隠れしているんですよね
姫君が見つからないから、近くで見つけた似た人で手を打つ、そんな感じが・・・
これ、何処に着地するんですかね・・・?
王子ってもう少し頭良いと思ってましたけど、デューク様と私の予想を下回る行動で困ります・・・




