第6話:合コンの誘い
「よお!」
「ごぉほっ」
ここは大学構内の食堂。
コンビ二で買ったパンに噛り付いていると、肩を思いっきり叩かれ、むせてしまった。
「な、何すんだよ!?」
「はぁ?挨拶しただけだろ?」
「だからって口に物ほお張ってる人間を思いっきり叩くやつが何処にいんだ!」
「ここ」
「…あぁ、お前に言ったのが間違いだった…」
目の前に座った男は浅尾隆司、この大学に入って知り合った悪友。
他にも友達が居ないわけじゃないが、なぜかコイツとは馬が合い一緒に居る事が多くなった。
「なぁなぁ、お前最近あの上田愛莉と付き合い始めたって噂はホントか?」
「なんだよ急に」
「いや、ホントだったら彼女あんまりいい噂聞かないからさ、気つけたほうがいいぜ」
「あぁ、そんな事か」
「なんだよー、その薄い反応は」
「別に…」
「ちぇっ!つまんねー奴」
上田愛莉。こいつとは最近付き合い始めた。
俺は昔っから来るもの拒まず、去るもの追わず。そうしていろんな女と付き合ってきた。
それがいいのか、どうなのか分からない。
何度も亜子を諦めようと、他の女と付き合ってそいつを好きになろうと何度も思った。
でも、結果はいつも同じ。
自分から告白してきて付き合ったにもかかわらず、「ホントに私の事好きなの?」「いつまでたっても私を見てくれない」「他に女が居るんじゃないの!?」などと好き勝手な事を言って俺の前から去っていく。
まぁ、最初っからどうでもいい女だから去っていったからといって追いかけることもしない。
まして、自分から付き合ってくれだなんていったことも無かった。
今回もキッカケは何も面白みも無く、ただ単に向こうから告白されて、俺も今はフリーだったし、まぁいいかって感じで。
言っちゃ悪いが、ハッキリ言って愛莉にはあまり興味は無い。
「そうだ、祐樹。今日は暇か?」
「いんや。今日は一応デートって事になってる」
「一応って…お前はもてない男の敵代表だな」
「はいはい。スイマセンね」
「まぁ、いいや。じゃあ来週だったら時間あるか?」
「なんだよ。何かあんのか?」
いつものように厄介事を持ってくるこいつは、こういう言い方をするときは必ずと言っていいほど得な事を言わない。
だから隆司を睨みつつ話をうながしてやると、案の定少し慌てたように「ここじゃちょっと…」そう言って隆司は俺を食堂の隅へと連れて行くと、コソコソとしゃべり始めた。
「いやー実は…、合コン計画しちまってさー。まさかお前彼女作ってるだなんて知らなかったもんで、メンバーに入れちゃったんだよ…」
「はぁっ!?何してんだよ!」
「お前が合コンとか嫌いなのは分かってる」
「じゃあ、お断りだね」
「そんな事言うなよー、相手は先輩の知り合いで、念願のOLなんだよ。頼むよーもう相手にOKもらって後は日にち決めるだけだからさ」
「……」
「なっ!一生のお願いだ!!この通り!!」
手を合わせ頭を下げる隆司は必死だ。
まぁ、こいつがこんだけ頼むって事は滅多に無い事だし、今回は仕方ない乗ってやるか…
「おい、わかったから頭上げろよ」
そういった瞬間バッと顔を上げた隆司はなぜか目に涙まで貯めている。
そんなにOLと合コンできてうれしいのかよ…年上好きってのは前々から知ってたけど…
呆れた気持ちでいると隆司は何を血迷ったか俺に抱きついてきた。
「祐樹っ!好きだ!!」
「ちょっっ!抱きつくな!!そして誤解を受けるような事をいうんじゃねぇぇぇぇ!!」
バゴッ!!
「いでっ!!」
そうして周りの冷たい視線を感じつつ、痛い思いをしたにも関わらずへらへら笑う隆司を心底友達になるんじゃなったと後悔した。




