第4話:嘘
しばらくして時計を見ればあれから1時間も経っている。
いい加減に家に帰らないと…
少し酔いも覚め、冷静を取り戻した私は家に帰ることにした。
まだあの2人がいたら…ってそんな事あるわけ無いか…
あれから1時間は経っているからもう誰もいないことは分かっていてもあの時の2人が頭をちらついてどうしようもない。
そんな思いを抱きつつ家へ向かうとそこにはやはり誰もいなかった。
安堵のため息を吐いて静かに玄関のドアを開ける。
すっと身体を玄関に入れ、鍵を掛けた所で今、一番顔を合わせたくない人物が目の前で仁王立ちして私を睨みつけていた。
「おかえり…」
「た、ただいま…」
「こんな時間までなにしてた?」
まるで子供を叱る母親のようなセリフ。
そんなのこっちが聞きたい。
「…優子と飲みに行ってただけよ。悪い?」
「別に、悪かないけど…」
「……」
「亜子…」
「私だって…もう子供じゃないんだから、ほっといてくれる?てか、何時までもそんな所に立ってられると入れないからそこ退いて」
先ほどの事もあり、これ以上祐樹を目の前にしていれば、平常心ではいられなくなってしまう…
それでなくとも、祐樹に対してさっきから嫌な言葉遣いになってしまっているのだ。
とにかく今は一人になりたい。
私の言葉でそこを退いたのを確認して、祐樹の横を通り過ぎようとした時だった。
「ちょっと待てよ」
そう言って私の腕を掴んだ祐樹は、顔を見なくても怒っているのがわかる。
掴まれた腕が痛い。
「……離して」
「なぁ…、さっきからお前変だぞ!」
「そう?ただ酔っ払ってるだけよ…それは祐樹の気のせいなんじゃない?」
「気のせいって…」
「とりあえず、手離して…疲れてるから、早くシャワー浴びて寝たいの」
その時の私は、祐樹がどんな顔をしていたかなんて、まるで気がついていなかった。
そう言うと祐樹の手を離し、階段を上り自分の部屋まで行き扉を閉めると、ズルズルとその場にへたり込んだ。
冷静を取り戻したはずだったのに、まだ酔いが回ってるんだろうか。あれは明らかに八つ当たりだ。
「もう…何やってんの…私」
ポツリと呟いた私の言葉は、誰に聞かれることも無く、静かな部屋にスッと消えた。
==========================================
「亜子!いつまで寝てんだ!もう昼だぞ!!いい加減起きて飯食え!」
「うぅぅ」
なんだか、祐樹の声が聞こえる。それに伴って頭がぐわんぐわんいっている。
俗に言うこれが二日酔いと言う症状か?
だぁぁぁぁ、頼むからそんな大声出さないでほしい…
ただでさえあの後眠れなくてやっと寝付いたと思われる時間は早朝5時ごろ。
もうちょっと労わってよぉ…
「うーー頭痛いから…そんな大声ださないで…」
「はぁ?二日酔いか?昨日どんだけ飲んだんだよ!?」
「え…、覚えてない」
「じゃあ、昨日何時に帰ってきたのかも覚えてないのか?」
「………覚えが無いです…」
なんていうのは嘘。
ホントは全部覚えてる。
でもここで、昨日の事は覚えていなかったことにすれば、気まずい思いをしなくても済むと、あの後必死に考えた私は嘘をつくことにした。
二日酔いはホントだけどね…
第4話まで読んでくださってありがとうございます。
コメディを書くつもりでこの話を書き始めたのですが、なんだかコメディから遠ざかって仕舞ったので、カテゴリーをコメディからシリアスに変更しました。
すいません//
まだまだ文章能力の無い私ですがこれからもよろしくお願いします。




