第13話:彼女現る
お母さんに送り出されて家への道のりをトボトボと歩く。
その間、私は祐樹の事を考えていた。
初めて会った時の事や、それから今まで一緒に住んできた経緯。
祐樹の彼女に誤解される事数回。
弟として出会ったのにそうは見れなくて…どうしても一人の男としてしか見れない私はこの気持ちを知られれば絶対軽蔑されてしまうと3年間密かに思って来ただけだった。
それなのに今日のお母さんの言葉――――
なんだかこの3年間必死に隠してきたのが馬鹿馬鹿しくなってしまいそうだ。
そう思って私は歩きながら薄い笑いをもらした。
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家の前まで来ると誰かが門のところで壁に背を預けて立っている。
私が一歩一歩近づいて行くと、その誰か私の気配に気がついたのか、顔を上げてこちらを向いた。
目が合った―――
「あなた…祐樹の…」
彼女だ。
何故今ここに彼女が…?
現状把握が出来ないでいる私はその場で固まった。
その間に祐樹の彼女は一歩一歩こちらに歩いてくると、腕を組んで目の前に立ち止まった。
「この間会いましたよね?覚えていますか?」
「……」
そう言った彼女は綺麗な顔が台無しだというほどの形相で睨みつけてくる。
突然の事に私は何も言えないで突っ立ったままだ。そんな私を睨みながら彼女は更に口を開いた。
「あなた、一体祐樹の何なんですか?」
「な、何って…」
「今日突然、祐樹が別れてくれと言ってきました。それってあなたのせいじゃないんですか?」
別れた―――?
「ど、どういう事…?」
「この期に及んで知らないだなんて言わせない!あの時のあなたの目。あれはなんとも思ってないって言う目じゃなかった!」
「そ、それは…」
「あれから数日しか経ってないのに別れてくれだなんておかしいじゃない!あなた、祐樹に何か言ったんでしょ!?」
「私は…何も…」
確かに私は祐樹の事が好きで…あの時その場を逃げ出したのは事実。
でも…その後祐樹に私は何かを言った覚えは何もない。
あの時の私はそんな資格すらないって言うのに…。
私は軽いパニックに陥っていた。
祐樹の行動に…そして彼女の言っている事に…訳が分からなかった…
その時だった―――
「おい、そこで何やってる?」
「ゆ、祐樹…」
私達の声を聞いて家の中から出てきたのか、そこには祐樹の姿があった…




