狙われたオルトヴィーン
「ハンネローレ様、何故それほどオルトヴィーン様の事情に詳しいのでしょう?」
「え?」
ケントリプスはニコリと微笑んでいますが、灰色の目は笑っていません。隠し事を全て暴こうとする時の気配を感じて、わたくしはわずかに後退しました。
……別に疚しいことなどないのですけれど、どうして悪いことをしたような気分になってしまうのでしょう?
わたくしがどう答えるべきか考えていると、ハイルリーゼやルイポルトがケントリプスに加勢するようにわたくしを問いつめ始めました。
「ユレーヴェの調合時とおっしゃいました? ハンネローレ様とオルトヴィーン様が組まされたことで、ラザンタルク様が非常に気にかけていましたもの。特に会話する様子はなかったはずですけれど……」
「私も同じ講義にいましたが、ハンネローレ様がオルトヴィーン様と会話していたとは気付きませんでした。どのように会話したのですか?」
領主候補生コースの講義ではなく調合だったので側近が同じ教室にいたのに、彼等の目を盗んで会話していたことで少しばかり非難の籠もった声音になっています。わたくしは味方を探して視線をさまよわせましたが、味方になってくれそうな者は見当たりません。
「側近やラザンタルクが気付かなかったのであれば、きっと他領の方々も気付かなかったでしょうね。オルトヴィーン様との共闘を他者に気付かれるわけにはまいりませんもの。わたくし、上手くやれたのではないでしょうか」
「ハンネローレ姫様。上級貴族が共にいる講義中のいつどのように情報共有をしたのです?」
コルドゥラの声に圧を感じます。わたくしは軽く息を吐きました。
「調合を終えた後、素材などを片付ける時に盗聴防止の魔術具を使いました。わたくしは台を向いていましたし、オルトヴィーン様は調合鍋を見ていたので周囲からは会話しているように見えなかったはずです」
「なるほど。それで、何を話したのですか?」
ケントリプスに問われて、わたくしはレティーツィア様から伺ったランスリット様の情報を共有すべきだと思ったことを伝えます。
「レティーツィア様の実兄であるランスリット様がコリンツダウムと接触しているらしい言動がありました。そのため、ラオフェレーグと同様の手段でドレヴァンヒェルを分断させる狙いがあるのではないかと考えたのです。情報共有した際、オルトヴィーン様は分断以外の狙いがあると予想されているようで、自分が潰されなければ……とおっしゃいました」
わたくしの言葉にケントリプスが眉を寄せ、側近達が眉を吊り上げました。
「聞いていませんよ。それほど重要なことを何故報告してくださらないのです!?」
「報告はするつもりでした。でも、講義中にツェントに呼び出されたではありませんか。とてもそのような時間はなかったでしょう?」
呼び出しを受けて、女神の再降臨があり、目覚めて、神々に関連することを摺り合わせて、ようやく神々以外に意識を向ける余裕ができたのが今です。わたくしにこれより早い報告は無理です。
「あぁ……。迅速な報告が難しかったことは理解しました」
側近達は納得してくれましたが、ケントリプスの眉は寄せられたままです。
「オルトヴィーン様は嫁盗りディッターを中止させるために辞退を求められているという自覚があったのでしょうか?」
「わたくしは存じません。狙いがドレヴァンヒェルの分断だけではないだろうとおっしゃっただけですから、ジギスヴァルト様が嫁盗りディッターの中止を狙っていることを予想しているかどうかまでは……」
オルトヴィーン様は「私が潰されなければ……」とおっしゃったので、ある程度は予想できていると思います。それでも、確証はありません。
「嫁盗りディッターの中止がジギスヴァルト様だけの企みかどうかも、情報の足りない今の時点で決めつけてはならないでしょう」
ルイポルトの言葉にケントリプスは頷いていますが、わたくしは首を傾げました。ジギスヴァルト様以外に嫁盗りディッターの中止を望む者が想像できないのです。ギレッセンマイアーやハウフレッツェが動いているとしても、首謀者はジギスヴァルト様だと思います。
「ランスリット様が献策した可能性はないか? ジギスヴァルト様にディッターを中止にできる策があったならば、申し込み前に手を打ったはずだ」
「あり得るな。オルトヴィーン様を蹴落とせるならば、ランスリット様はジギスヴァルト様と手を組む利がある」
ルイポルトとケントリプスだけでわかりあっているように会話しています。
「わたくし達にもわかるように説明してくださいませ」
「ドレヴァンヒェルの次期領主争いは激しいと言われています。養子縁組が盛んで、優秀な者がアウブにされるそうです。ダンケルフェルガーとは違います。部屋に魔術具を仕掛けられたり、毒が使われたりすることも珍しくないと聞いたことがあります」
「それほどですか!?」
基本的にはアウブの指名で、争うにしてもディッターで決めれば後腐れがないダンケルフェルガーとは違う領地の事情に驚きました。
「今回の共闘の条件はお互いの次期領主の後押しです。ドレヴァンヒェルはレスティラウト様を、ダンケルフェルガーはオルトヴィーン様を次期領主と認めます。つまり、ハンネローレ様に求婚したことでオルトヴィーン様は次期領主争いで一歩前に出たと言えるでしょう」
アウブ・ドレヴァンヒェルが許可を出し、オルトヴィーン様が共闘を申し出たのですから嫁盗りディッターでの立ち回りに成功すれば次期領主決定で間違いありません。
「ダンケルフェルガーでは中央での戦いにアウブが出陣する関係もあり、レスティラウト様が次期領主に決定しました。けれど、他領ではシュタープの劣っている世代は次期領主として不利だと言われています。我々が考えるより大きな一歩なのかもしれません」
ケントリプスの言葉でわたくしはオルトヴィーン様達とそれぞれの領地の次期領主について話し合った時のことを思い出しました。
「あり得ます。ダンケルフェルガーは次期領主に変更はないと伝えた時にオルトヴィーン様は驚き、その方向で説得できれば……という感じのことをおっしゃいました。劣ったシュタープの世代は不適格とされていた中でアウブを説得したのでは?」
今更ながらオルトヴィーン様の立ち回りや根回しに驚いてしまいました。それに気付けたのは、わたくし自身がお父様の内定に抗い、ケントリプスを出場させる道がないか探したからです。
「……オルトヴィーン様はすごいですね。アウブを説得するための材料を集めたり、根回しをしたりするのがどれほど大変か、わたくし、今まで理解できていませんでしたから」
オルトヴィーン様のすごさと自分の成長にしみじみ感心していると、ケントリプスに「少し脱線していますよ」と軽く睨まれました。
「その状況でオルトヴィーン様が次期領主に近付けたのであれば、何が何でも失敗させようと考える者が出てきても不思議ではありません。オルトヴィーン様を次期領主の座から落としたい者や元王族の威光を利用したい者が寮内で目を光らせ、何かしら企んでいるはずです」
成功すれば次期領主ですが、失敗すればオルトヴィーン様は次期領主の座から遠ざかります。アウブの許可を得て申し込んだディッターを辞退した時点で、アウブの信頼を失うでしょう。
殺伐としているドレヴァンヒェルの寮内を想像すると、どうしても苦い顔になってしまいます。わたくしと同じように側近達も苦い顔になっています。
「共闘の件がどの程度ドレヴァンヒェルに知られているか存じませんが、オルトヴィーン様の最大の敵はジギスヴァルト様ではなく自領の領主候補生でしょう」
「オルトヴィーン様に何かあって辞退を申し出られてもダンケルフェルガーとしてはそれを止められないのが厄介ですね」
オルトヴィーン様を辞退させて次期領主の座から遠ざけることを望む者と、辞退によって嫁盗りディッターを中止させることを望む者が手を組んでいる可能性があるのです。オルトヴィーン様が今どれほどの敵意の中で過ごしているのか考えるとぞっとします。
「ドレヴァンヒェルの内情を探ってください」
わたくしが命じると、ルイポルトが頷きつつも付け足しました。
「ハンネローレ様、内情を探るのは構いませんが、ドレヴァンヒェルだけではなく敵対する領地全ての情報が必要ですよ。それぞれの目的を持つ者が協力し合って嫁盗りディッターの中止を望んでいるならば、それらを正確に把握しなければ足をすくわれます」
「今まで嫁盗りディッターを中止させようとする動きは特に出ていません。ダンケルフェルガーが敵対する領地を警戒するように、あちらもわたくし達の情報収集を警戒しています。短時間では有益な情報が集まらないかもしれません」
どうすれば情報が集まるのか試行錯誤が必要になりそうだと文官見習い達が話しています。オルトヴィーン様と直接会話できる可能性があるとすれば、同じ講義を受けるわたくしです。
「わたくしもできるだけオルトヴィーン様とこっそり会話できないか考えてみますね」
「お止めください。いつならば話ができるのか、ハンネローレ様はずっとオルトヴィーン様の動向を確認することになります。周囲に気付かれるのは時間の問題ですよ」
ケントリプスに即座に止められました。調合の時間もオルトヴィーン様と会話できる隙をずっと探していたわたくしはすぐに反論できません。けれど、前回は成功したのです。頑張れば上手くやれると思います。
「ケントリプスから見れば頼りなく思えるかもしれませんが、わたくしは……」
「頼りなく思っているわけではありません」
ケントリプスはそう言うと、「ハァ……」と深い溜息を吐きました。それから、わざわざわたくしの近くへ移動してきて、わたくしの手を取りました。
「何ですか?」
「情報収集は重要ですが、あまりオルトヴィーン様を見つめたり、親しくしたりしないでほしいだけです。妬けます」
「ふぇ!?」
全く予想外のことを言われて、わたくしは頭が真っ白になりました。わたくしの反応に軽く眉を上げたケントリプスが妙に甘い笑みを浮かべます。
「ハンネローレ様が選んで、求婚したのは私でしょう?」
「そ、そうですね」
求婚の条件を得たことは「なかったことにする」と言っていたのに、わたくしが求婚した事自体はなかったことにならないようです。
……別になかったことにしたいわけではありませんけれど!
必要に駆られてケントリプスを選んだだけという気分でした。それなのに、わたくしからケントリプスに求婚したのだと改めて突きつけられると、自分がかなり大それたことをしたことに気付いてしまいました。恥ずかしく感じられてなりません。
「ちょっと、あの、ケントリプス……。側近達が……」
「ハンネローレ様、お気になさらず。求婚時に比べれば何ということもありません」
「ケントリプス、姫様の行動を止めたければ、隠れて会話する以外の代替案が必要ですよ」
止めてくれると思っていた側近達は手を取るくらいで慌てたり引き離そうとしたりしないようです。コルドゥラに至ってはケントリプスに助言までしています。
「では、せっかくの機会ですからハンネローレ様はオルトヴィーン様とこっそり会話しようとするのではなく、間接的に動くことを覚えてください。ヴィルフリート様の一件でダンケルフェルガーの敵に回らないと宣言したエーレンフェストに情報収集の協力を要請しましょう」
「……わかりました。シャルロッテ様とお話ししてみます。か、間接的に動きますから、そろそろ手を離してくださいませ!」
……側近達の微笑ましそうな視線を感じて居たたまれないのです!
わたくしが思わず叫ぶと、ケントリプスはさっと顔色を変えて手を離してくれました。
「申し訳ありません。やり過ぎました。お体に異常はありませんか?」
「……え?」
「女神の御力が軽い威圧になっています」
「……女神の御力? わたくし、今回もあるのですか?」
今まで誰にも指摘されなかったので、全身から女神の御力がじんわりと滲み出ていることに自分で気付いていませんでした。
「前回より影響は少ないようで、触れるほど近付かなければ気付きませんし、よほど感情を昂ぶらせなければ日常生活には問題ございません」
コルドゥラはわたくしに触れ、感情を昂ぶらせる原因となったケントリプスを軽く睨みます。「以後、気を付けます」とケントリプスが離れていきます。
「ほとんど影響がなくても周囲に再降臨を伏せるならば、完全に女神の御力が消えるまでハンネローレ様は講義に出られません」
コルドゥラによると、今回の女神の御力はかなり薄いようですが、二日ほど講義に出てはならないようです。
「アウブにこちらの懸念を伝えましたし、情報は他の者が集めます。ハンネローレ様はシャルロッテ様に面会依頼を送る程度にしてくださいませ」
「わかりました」
前回のことを考えると、三日もあれば女神の御力は消えるのでしょう。わたくしはケントリプスに言われた通り、間接的に情報を得られるように頑張りたいと思います。
「ツェントにも目覚めの報告と共にディッターを潰そうとしている者がいることは伝えました。おそらく神々の世界で得た情報だと気付くでしょうし、何らかの反応があるはずです。姫様は姫様のやるべきことをしながら女神の御力が完全に消えるのを待ちましょう」
「……やるべきこと、ですか?」
シャルロッテ様に面会依頼を出す以外に何をしなければならないのでしょうか。首を傾げるわたくしに、コルドゥラが呆れた顔になりました。
「また二、三日お休みすることになるので自習をしておかなければなりませんし、再降臨があった以上、今後いつ女神が降臨するのかわかりません。ツェントから呼び出される前にユレーヴェを作り直してください」
女神の降臨がなくても嫁盗りディッターはあるのですから、いざという時の準備をしておいた方がよいでしょう。けれど、素材の採集からやり直しです。
「コルドゥラ、素材採集のための外出はよいのですか?」
「寮から採集場所への移動だけならば、他領の者に出会うことはないでしょう。問題ありませんよ」
コルドゥラから許可を得ると、ハイルリーゼが「採集は明日にしましょう」と提案しました。
「さすがに今日はもう時間がありませんし、素材採集をしたい文官見習いが同行したがると思うので声をかけてあげましょう」
「ハンネローレ様、ラザンタルクにも声をかけてあげてください。護衛を頼んだり、一緒に魔獣を狩りたいとお願いしたりするだけできっと上機嫌になりますから」
ラザンタルクには話せないと退けた時のしょげた顔を思い出し、わたくしはケントリプスに頷きました。
「では、ユレーヴェの作り直しは明日の作業にしましょう。食堂で声をかけて、同行を希望する者に集合時間などを伝えてください」
「かしこまりました」
話し合いを終え、会議室を出ます。その際にエスコートしてくれるケントリプスの横顔をチラリと見上げます。
「どうかされましたか?」
「ラザンタルクには妬かないのですか?」
軽く目を見開いたケントリプスがふいっと視線を逸らしました。
「今は、あまり……。やっと望みを叶える可能性をつかみましたから」
「望み……?」
「騎士となって泣き虫姫を守りたいのです」
何となく感じた疑問に返ってきた答えで自分の中の感情がコトリと動くのを感じました。「今は、あまり」ということは、以前はラザンタルクにも妬いていたらしいとか、わたくしが選んだことや騎士の資格を得られることがケントリプスにとって本当に大事だったなど、様々なことを一気に理解させられた気分で頭がぐらぐらします。
「……私は必ず騎士コースの卒業資格を得ます」
騎士になりたいと泣いていた男の子が今騎士になるために全力を尽くしていることが嬉しくて誇らして、何となく眩しくて直視できません。わたくしにできたのはあの頃と同じように「約束ですよ」と返すだけでした。
次の日、わたくしは講義に余裕のある側近や同行を希望する者達を連れて領地の採集場所へ行きました。ラザンタルクを初めとした騎士達と共に魔獣を倒し、ユレーヴェの素材を集め直します。
「ユレーヴェは自分で素材を集めなければならないのが面倒ですが、貴族院では採集場所で全て集められるので助かりますね。領地で集めようと思うと、あちらこちらに行く必要がありますもの」
ユレーヴェの素材を手にして魔石に変えると、わたくしは同行者に寮へ戻るように声をかけました。
「姫様、アウブからこちらが届きました」
採集から戻ると、お父様から木札が届いていました。わたくしは自室で着替え、採集した素材を片付けます。ユレーヴェの素材は自分の魔力で染めなければならない物もあり、側近にも触らせられないからです。
片付け終わると、わたくしはコルドゥラが差し出した木札に目を通しました。
「命を奪うこと自体は神々に禁止されているが、何があるかわからぬ。妙な噂を流されることも含めて徹底的に敵の動きに注意し、ハンネローレの身を最優先で守れ」
わたくしが読み上げると、側近達は緊張した面持ちで頷きます。
「それから、全ての求婚者が辞退することで嫁盗りディッターを中止させることが可能だ。ジギスヴァルト様は嫁盗りディッターを白紙に戻した後、元王族の威光を使った強引な手段で求婚してくるだろう」
嫁盗りディッターを中止させる手段はわたくし達が考えたものと同じです。お父様の意見と大きな違いがないことに安堵しました。
「でも、嫁盗りディッターを辞退したのに、再び求婚などあり得ますか?」
「アンドレア、普通はそのように恥知らずで厚かましいことはできないでしょうけれど、ジギスヴァルト様は常識の違う他領の方ですから……。ディッターよりお得意な手段に出ると思います」
「むしろ、ディッターを中止させられたと誇りそうですね」
コルドゥラの言葉にわたくしは頷きました。
「お父様は時と状況によっては分が悪くなる可能性があるので、絶対に嫁盗りディッターを潰させるなと書いています」
「それは、つまり、要となるオルトヴィーン様をダンケルフェルガーが守るということですか?」
首を傾げるハイルリーゼの言葉を、わたくしはキッパリと否定します。
「違います。決してオルトヴィーン様との共闘を悟らせるなというのがお父様の指示です」
求婚者が辞退するのをダンケルフェルガーが止めることはできません。何より、第三者から見て敵に対する扱いは同じでなければなりません。
「それから、ドレヴァンヒェルでオルトヴィーン様が次期領主に相応しい力量を持っているのか試されている可能性があるそうです。ダンケルフェルガーが深入りすると内政干渉になりかねないと書かれています」
「……異母兄弟を御せない者が次期領主では困りますからね」
次期領主争いが激しい領地ならば尚更、敵対する者をどう扱うのか厳しい目で見られていることでしょう。嫁盗りディッターを中止にしたくないという理由でダンケルフェルガーが嘴を挟んではならないことです。オルトヴィーン様の力量が疑われた場合、後々苦労するのはオルトヴィーン様ですから。
「それらの理由からわたくしが直接オルトヴィーン様と関わることはお父様からも禁じられました。敵対領地の情報を集めるように学生達に命じろとも書かれています」
「すでに対応済みですね」
エルーシアが嬉しそうに言いました。アウブに命じられることを予想し、先回りして行えるのは優秀な証しです。
「あら、お父様も他領の情報を集めてくださるそうですよ。早々に辞退した中小領地から賠償の一部として情報を得るようです」
コリンツダウムに踊らされた領地からの情報なので、信用に値すると思えません。それでも、文官見習い達によると広く情報を集めることでコリンツダウムがどのように動いているのか、どのような噂が流れていて学生達がどのように物事を捉えているのか、ダンケルフェルガーの動きが他領からどのように見られているのかなどがわかるそうです。
「お父様は領地にいらっしゃるのに貴族院における他領の情報を集められるのですね。わたくし、間接的に動きましょうと言われる程度にしか動けないのですけれど……」
お父様の手の広さと自分の至らなさを実感して少し落ち込んだところにオルドナンツが飛んできました。小さな白い鳥が少し伸ばしたわたくしの手に降り立ちます。
「ハンネローレ様、エグランティーヌです。お目覚めの知らせに安堵いたしました。神々から忠告を受けたというディッターについて少しお話を聞かせていただきたいのですけれどよろしいでしょうか?」
ツェントから招待されると、さすがに断ることはできません。「せめてユレーヴェを作ってからにしましょう」とか「今回は側近を排さないでほしいと願い出てください」と側近達に言われたので、明日以降で日程や条件を調整してもらいます。
側仕え同士のやり取りで明日の午後に決まりました。
オルトヴィーンが置かれた立場を予想するハンネローレ達。
嫁盗りディッターの中止を阻止したいけれど、どうすればよいのか。
そして、「恋愛バトルファンタジー」になるように恋愛成分を少し注入しました。
次は、ツェントの意向です。




