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神々との会話と目覚め

 どのように説明すればよいでしょうか。わたくしは必死に考えます。神々の見方を否定することなく、わたくしやフェルディナンド様から見た状況をわかっていただかなければなりません。


「……その、神々側の事情を知れば、人としての感覚でもフェルディナンド様が横暴に思えます。けれど、糸を補う方法があるとか、そのためにローゼマイン様が素材を集めているなどの事情をわたくしは存じませんでした。もしかするとフェルディナンド様もご存じないのでは? 神々は先に事情をお知らせくださったのでしょうか?」


 始まりの庭でツェントがお伺いを立てた時にお知らせがあれば、おそらくフェルディナンド様はわたくしに女神を降臨させてまで状況を探ろうとはしないと思うのです。


「わざわざ教えていませんね。糸の切れた人間など放っておけという意見の方が神々の間では強いのです。特にフェルディナンドは神々に喧嘩を売るようなことをするものですから、彼に手をかけすぎると少々面倒が起こる可能性が高くて……」


 ほぅ……と困ったように機織りの女神ヴェントゥヒーテが溜息を吐きました。


 ……フェルディナンド様は神々に喧嘩を売ったのですか!? 待ってくださいませ。聞いていません!


 何も知らないまま取り成すにも限度があると思います。フェルディナンド様は神々に対して一体何をしたのでしょうか。知りたいけれど、知りたくありません。


「こちらの事情を知らないと人側で何か困ることでもあるのかしら?」

「事情や神々のご厚意であることを知らない場合、糸を繋ぎ終わったローゼマイン様を不当に神々の世界に留めているように思えます。その、フェルディナンド様だけではなく、わたくしもどうして糸を繋ぎ終えたローゼマイン様が戻らないのか不思議でしたから」


 わたくしが一生懸命にフェルディナンド様の弁護をすると、縁結びの女神リーベスクヒルフェが「ふぅん、そうなの?」と少し納得したような声を出しました。わたくしは全力で頷きます。


「そうなのです。もしかするとフェルディナンド様は自分の糸を切られたことや、糸を繋ぐためにローゼマイン様の糸を使ったなどの事情を詳しくご存じないかもしれません。レティーツィア様やツェントから何か聞いているとよいのですが、わたくし、ゆっくりとお話をする時間がなかったのです」


 ツェントに呼び出された場でフェルディナンド様は「女神に何を願ったのか」とわたくしを問いつめ、助力してくださっただけです。始まりの庭で得られた課題を熟すことしか考えていらっしゃいませんでした。


「きちんと聞かない方が悪いのよ。それに、あの男は最短の道を急ぎすぎるでしょ? 少しくらい余裕を持ってほしいものだわ」

「フェルディナンドは警戒心が強すぎるのですよ。なまじ自分で解決できる能力があるだけに、他者の助力を撥ねつけたり疎かにしたりする面もありますし……」


 女神達の言い分を聞いていると、怖いくらいに優秀なフェルディナンド様がまるで問題児のように思えてきます。


 ……いいえ、よく考えると神々に喧嘩を売るのは問題行動で間違いありませんね。


 それでも、人間としての視点で見ればフェルディナンド様の言動にはそれなりに筋が通っていると思います。同時に、フェルディナンド様が神々の事情を知れば、それを考慮した判断ができるでしょう。


「わたくし、フェルディナンド様の事情にあまり詳しくありませんけれど、神々の事情を知ればローゼマイン様をすぐに戻せとはおっしゃらないと思います」

「それが予想できるから、ドレッファングーアは直接話した方がよいと言ったのかしら?」

「噛みつくように文句を言うわよ、きっと」


 どうやらローゼマイン様の褒美がなくなったとしても早急に帰す方がよいのか、素材を持ち帰らせる方がよいのか、話をするために時の女神ドレッファングーアが降臨しているようです。


 ……では、後はフェルディナンド様の判断次第ですね。


 わたくしにできる擁護はここまでです。けれど、フェルディナンド様の切れた糸を繋ぐためにローゼマイン様の糸を使ったこと、それを修復する手段があることを知ればフェルディナンド様は「すぐに戻せ」とはおっしゃらないでしょう。


「ドレッファングーアはもう行ったのか?」


 突然聞こえてきた男性の声に驚いて振り返ると、そこには星の神シュテルラートの姿がありました。


「あら、シュテルラート。男神達は納得して?」

「一応。かなり渋っていたけれど、例の失態の対価としてあの娘が一人で素材を集めるならば見逃してくれることになった」


 神々の会話の意味はよくわかりませんが、今素材を集めている娘として思い浮かぶのはローゼマイン様です。


「あの、もしかしてローゼマイン様が集める素材に何か問題があるのでしょうか?」

「運命の糸を損なうことに文句はなくても、補うことに反対する神々はいるのですよ。糸に触れるという意味では変わりませんのに……。一本の糸の動向より織れる柄の美しさの方が大事でしょうに、ねぇ?」


 機織りの女神は悩ましそうに息を吐きながら、その手にある糸を見つめます。わたくしは同意すべきかどうか悩んで視線をさまよわせました。人であるわたくしとしては、織れた歴史の美しさだけではなく、一人の運命にも気を配ってほしいと思ってしまいます。


「ハンネローレが気にすることではないわ。神々はローゼマインに迷惑をかけたのだから、この程度を見逃すくらいでは対価として釣り合わないくらいだもの。シュテルラートだって交渉自体は簡単だったでしょ?」


 どうやらローゼマイン様はかなり神々から迷惑を被っているようです。詳細を聞きたい気持ちはありますが、聞くと後戻りできないような気がしてなりません。わたくしは少し目を逸らして呼吸を控えめにし、できるだけ気配を消します。


「人はともかく神としては気にしてほしいものだ。特にリーベスクヒルフェは簡単だと言うならば、私を使者とするのではなく自分で交渉してくれないか」


 うんざりとした顔でそう言った星の神を見ながら縁結びの女神は楽しそうな笑い声を零しました。


「ふふっ、シュテルラートにお願いしたのはヴェントゥヒーテだもの。交渉の対価としてヴェントゥヒーテの膝を提供するわ」


 ……もしかするとヴェントゥヒーテ様はおっとりとした見た目に寄らず膝蹴りがお得意なのでしょうか?


 交渉の対価とされる「膝の提供」の価値がよくわからず、わたくしは内心で首を傾げました。眉を顰めている星の神シュテルラートも困惑しているようです。そこで機織りの女神がニコニコと微笑みながら「シュテルラート、休んでいきますか?」と自分の太腿をポンポンと叩きます。


「ふぇっ!?」


 気配を消していたはずですのに、「膝の提供」の方向があまりにも予想外で驚きのあまり思わず声が出てしまいました。神々の視線を集めてしまい、身の置き所がなくて困っていると星の神が咳払いをして息を吐きました。


「私の対価は後で。それより、ハンネローレはフェルディナンドから対価をきちんと得たのか?」


 話題を変えて助けてくださったことがわかり、わたくしは星の神シュテルラートに祈りと感謝を捧げたい気持ちで何度も頷きました。


「はい。フェルディナンド様の助言を得たことでケントリプスを嫁盗りディッターに出場させる目処が立ちました」


 わたくしがフェルディナンド様に対価として何を望んだのか伝えると、機織りの女神が目を丸くしました。


「あら、そのようなことを望んだのですか? 前回の望みに比べるとずいぶんと可愛らしいこと」

「いいじゃない、ヴェントゥヒーテ。神が叶えようと思うと、少しだけ事が大きくなるでしょ?」


 ……あの、神様の考える「少しだけ」とはどのくらいの規模でしょう?


 何事も気軽な雰囲気で口にする縁結びの女神の「少しだけ」がどうにも信用できないのはわたくしだけではないようで、星の神も「少しで済むのか……?」と呟きました。神々からではなくフェルディナンド様から対価を得ることが、ユルゲンシュミット全体を守ることに繋がったような気さえします。


「フェルディナンド様の助力でわたくしの望みは十分に叶います。でも、神々のお言葉がなければ、わたくしの望みは叶いませんでした。フェルディナンド様に助力するように呼びかけてくださって本当にありがとう存じます」


 神々のご厚意が何に影響するかわかりません。これ以上は必要ないことをわたくしは一生懸命に伝えます。


「いいのよ。前回はこちらの都合でハンネローレの体を使ったからこちらでお礼をしたけれど、今回はフェルディナンドの要求が原因で巻き込むから自分で対価を払わなければダメという話なの」


 縁結びの女神リーベスクヒルフェが「だから、今回は神からのお礼はなし」と軽く手を振ると、機織りの女神ヴェントゥヒーテは少し困ったような表情でわたくしを見て微笑みました。


「他に、ローゼマインがすでに糸の修復を終えたという理由もあります。もし体を貸すお礼として再度過去に行きたいとハンネローレに望まれても次は受け入れられませんもの。せっかく美しく修正できた模様が変わってしまうと困るでしょう?」


 わたくしは前回お礼として一年前の世界に行きたいとお願いしたことを思い出します。あの願いが本当に叶っていたら、どれほどの人達に影響が出たでしょう。今になってあの時の自分の無知さと無謀さに打ちのめされる思いです。わたくしが気付きを得ただけで、歴史的には何も変えずに終えられたことに心の底から安堵しました。


「その節はご無理を申し上げて申し訳ございませんでした。もう歴史の改変など望みません」

「結局は何も変わらなかったもの。気にしないで」

「リーベスクヒルフェは少し気になさいませ」


 機織りの女神が縁結びの女神を窘めたところに時の女神ドレッファングーアが戻ってきました。


「おかえりなさい、ドレッファングーア。あの男は納得して?」

「えぇ。今後はおとなしくローゼマインの戻りを待つそうです」

「ハンネローレが言った通り、本当に待つことを選んだのね」


 縁結びの女神リーベスクヒルフェの声が驚きに満ちていますが、それほど驚くことではない気がします。女神にとってのフェルディナンド様は一体どういう存在なのでしょうか。


「色々と反抗的なことを述べていましたけれど、元凶がフェルディナンドであることと、ローゼマインの献身について述べれば、運命の糸の補充を認めました」

「ふぅん、余計ことを言ったり暴れたりしそうなのに……」


 縁結びの女神リーベスクヒルフェから見たフェルディナンド様の印象があまりにもひどいと思う反面、ツェントに無理を言い、有無を言わせぬ勢いで東屋に連れ出されたことを思い出せば「そのように見える一面もありますね」と納得してしまう気持ちにもなります。


「ひとまずローゼマインを東屋ではなくフェルディナンドのところに戻すための目印を作るように命じました。目印が完成するまではおとなしくできるでしょう」


 どうやら時の女神ドレッファングーアと話し合った結果、フェルディナンド様はローゼマイン様の戻りを待つことになったようです。わたくしも講義の途中でツェントに呼び出されたくないのでフェルディナンド様がおとなしくしてくださるのは助かります。


「ハンネローレ、以前にも言いましたが、あまり長く肉体から離れるのは好ましくありません。貴女は早めにお戻りなさい」

「はい」


 時の女神ドレッファングーアに促され、わたくしは立ち上がりました。機織りの女神ヴェントゥヒーテが穏やかに微笑んでふわりと手を振ると、祝福の光がわたくしに降りかかります。


「貴女の協力に感謝を」

「じゃあ、わたくしからは貴女の選択に祝福を。まだまだ悪縁が絡んでいるから自力で断ち切るなり遠ざけるなりしなさい。楽しみにしているわ」


 ……えーと、選択に祝福をくださるだけで、悪縁を遠ざけてくださるわけではないのですね。


 娯楽扱いされている我が身に一抹の不安を感じつつ、わたくしは女神達に挨拶と同じように魔力の放出をします。


「歴史の修復を試みてくださったこと、ローゼマイン様の糸を補ってくださること、何よりわたくし達を見守ってくださっていることに心より感謝いたします」


 視界がゆっくりと白くなり、声も霞んでいくような意識の中で、星の神シュテルラートの声が響きました。


「あぁ、そうだ。忠告を。神々に多くの祈りと感謝が奉納されるディッターを潰そうと企む者がいるらしい。男神達が苛立っていた」


 わたくしにとってはフェルディナンド様の擁護よりよほど重要なことです。ダンケルフェルガーに大きく関わってくることですし、男神達が苛立っているというのは大変な事態ではございませんか。


 ……星の神シュテルラート、何故今なのです!? 詳細を! 詳細を聞かせてくださいませ!




 気が付いたら、わたくしはまた青い液体の中にいました。見覚えのある寮の自室の浴槽です。前回の降臨時と同じようにユレーヴェに浸けられたのでしょう。前回と違うのはコルドゥラではなくアンドレアがいることです。


「え? え? ハンネローレ様? もう?」


 わたくしはユレーヴェの中に浮いたまま、目覚めたことに驚いて戸惑っているアンドレアを見ました。どうやら皆が予想していたより早くわたくしは目覚めたようです。


「……コルドゥラは?」


 わたくしは自力で起き上がり、浴槽に座った状態で尋ねると、アンドレアは慌てた様子でオルドナンツを出しました。


「すぐに呼びます。……コルドゥラ、ハンネローレ様がお目覚めです!」


 ここに座ったままでは落ち着いて話をすることもできません。わたくしは青い液体に満ちた浴槽から出ました。


「アンドレア、ユレーヴェを落とすためにヴァッシェンをお願いします。それから、着替えを」

「わかりました。……ヴァッシェン」


 わたくしが洗浄の魔術で身を清めてもらい、浴室を出て着替え始めたところにコルドゥラが急ぎ足で入ってきました。


「ハンネローレ姫様、三日で目覚めるとは今回はずいぶん早いですね。これほど違いがあると思いませんでした」

「本当に。何が違ったのでしょう?」


 わたくしが前回との違いを考えていると、アンドレアが「あ」と声を上げました。


「もしかすると、前回と違ってローゼマイン様をお待ちする時間がなかったからでしょうか? 神々の世界にいた時間が短かったのか、女神の御力も前回より弱いように思えます」

「自分では女神の御力を感じられないのでわかりませんが、その可能性はありますね」


 ……前回との一番大きな違いは一年前の世界に行ったかどうかだと思いますけれど。



 それで最も神々の御力の影響を大きく受けたと思います。けれど、一年前の世界に関してケントリプス以外に言っていないので黙っておきます。


「今回は短く済んだようで安心しました。また十日ほど目覚めなければ講義を終えられない可能性が出たでしょうから」


 わたくしの言葉にアンドレアがクスクスと笑いながら衣装を広げます。コルドゥラがわたくしに着せかけながら一つ息を吐きました。


「姫様、一体何があって女神が再び降臨したのです?」


 側近達が待機室にいる間に、わたくしは内密に王宮を出たのです。間違いなくわたくしの意識のない間にあとの三人で色々と打ち合わせをされているでしょう。どう説明すればよいのかわからず、わたくしはコテリと首を傾げます。


「……現場にいたケントリプスやツェントから何も説明がなかったのですか?」

「再び女神が降臨した……と。それだけはございましたよ」


 コルドゥラによると、待機室に通されて待っていたらケントリプスが呼び出され、それからしばらく音沙汰がなかったそうです。


「さすがにそろそろ様子を窺った方がよいのでは? という意見が出始めたところにケントリプスからオルドナンツが飛んできました」


 ケントリプスのオルドナンツとほぼ同時にツェントの側近が待機室へ来て、わたくし達が話し合っていた部屋に呼ばれたと言います。


「わたくし達がツェントの応接室に入った時にはケントリプスの腕の中に意識のない姫様がいて、再び時の女神ドレッファングーアがハンネローレ様に降臨したことをツェントに教えられました」


 ……つまり、意識のないわたくしの体を王宮まで連れ戻り、話し合いの最中に起こったことにしたのですね。


 あと、コルドゥラの話にフェルディナンド様が出てきません。わたくしはその姿を見て驚いたのです。コルドゥラが目にしていれば何かしら言葉に出たでしょう。


 ……そういえば、フェルディナンド様が今の時期の貴族院にいるのは望ましくないと言っていましたね。


 人目に付かないように講義中に呼び出されたのです。フェルディナンド様はコルドゥラ達を招き入れる前に帰ったのでしょう。本当に秘密裏に事を運ぶ方です。


「ツェントの側近も排されていたようで、本当に目撃者がいないのです。ケントリプスがいなければツェントがハンネローレ様を害したと思われても仕方のない状況でした」


 王族や領主一族が側近を連れるのは、護衛の面もありますが、何が起こったのか証言できる第三者を置くためでもあります。


「ケントリプスもツェントから口止めされているようで、女神が何のために降臨されたのか言いませんでした」


 時の女神ドレッファングーアがフェルディナンド様に何を言ったのかわかりませんが、わたくしが神々と交わした内容の半分くらいはフェルディナンド様に対する厳しいご意見とその擁護でした。とても言えません。


「……では、わたくしも女神の降臨に関しては不用意に口にしない方がよいでしょうね。再降臨を知っている者はどれだけいますか?」

「ツェントが積極的に広めていなければ、ツェントの側近とダンケルフェルガーの一部だけでしょう」


 必要最小限の者以外、誰にも知られていないようです。そのため、前回と違ってわたくしの側近達が二分するほど寮内が荒れたり、他領を巻き込んだ騒動が起こったりしていません。厄介事の芽を隠し通すことや裏で動くことの重要性が身に染みます。


「コルドゥラ、お父様に報告は……」

「当然しましたが、ハンネローレ様に女神が再降臨して意識がない以外に碌な情報がありませんもの。アウブが困っていらっしゃいましたよ。全て説明してから意識を失え、と」


 わたくしだってフェルディナンド様から有無を言わせない笑顔の圧力を受けて東屋に行くことになったのです。とても全ての説明などできません。


「いくら何でも無茶を言わないでくださいませ」

「言いたくもなりますよ。ユレーヴェができた直後に女神の再降臨なんて、まるで神々が狙っていたようではありませんか」


 ……さすがにユレーヴェの調合を目がけてフェルディナンド様が乗り込んできたわけではないと思いますよ。


「領地に目覚めの連絡を。それから、ケントリプスを呼んでください」

「お部屋には呼べませんよ?」


 キョトンとしたアンドレアの指摘に、わたくしはハッとしました。そうです。前回と違って他人の目があるのです。


「アンドレア、それは会議室の準備をして、そこに呼び出してほしいということです。ハンネローレ様も自室にケントリプスを呼べるわけがないことくらいはわかっていますよ」


 前回ケントリプスを秘密裏に招いたことがあることなどおくびにも出さず、しれっとした顔でコルドゥラはアンドレアに会議室の準備を命じます。


「あぁ、これはツェントにもこれからご相談することですし、ダンケルフェルガーに大きく関わることなのでお父様に報告をお願いしますね。わたくし、神から忠告を受けました。神々に奉納されるべきディッターを潰そうと企む者がいるそうです」

「……ハンネローレ姫様?」


 コルドゥラが怖い顔で微笑みました。説明が足りないと叱られる時の顔です。けれど、わたくしの神々の世界から去る間際に言われて、何もわからないのです。


「わたくしも詳細は存じません。教えていただけませんでした」


認識の違いを何とかわかってもらおうとハンネローレは頑張りました。

神々への根回しにシュテルラートも頑張りました。

ハンネローレが目覚めるまで今回は三日で済みました。

とはいえ、同行できなかったコルドゥラ達は気が気ではありませんでした。


次は、摺り合わせと根回しです。

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― 新着の感想 ―
祝福過多の詫びがまだ不足していると神々が考えているということは、またロゼマがなにか巻き込まれる可能性があって、そこで残りの詫びかな?
膝蹴りって発想が出るのマジダンケルフェルガーw
ロゼマさん帰還ポインターを作るのに素材必要なのかな? そしてフェル様、そのポインター何処に設置するんだろう? ロゼマまだかなぁ〜?ってブツブツ文句言いつつドキドキしながら待つ姿を想像したら可愛かった。
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