胸糞悪い応援歌
2018/02/04
生まれてきた赤ん坊は
この世の眩しさに 泣いた
幸せそうに笑う人の環の中で
安心しきって 静かに眠った
子供のころ 見える世界は
すべてが 希望に映っていた
将来はきっと明るいんだ と
疑わなかった 幼き日々
幸せが実は 本当は
貴重で 素晴らしいものだなんて
いつかは 見えなくなるなんて
永遠はなく 終わりが来るなんて
まったく 思いもしなかった
大きくなっていくに連れ
イヤな部分が 見えるように
見たくないモノ 見ないことできずに
心が 確実に 腐り出した
明るいはずだった世界は 暗い
描いた希望は 視界にはない
信じた未来が 夢幻だなんて
輝かしく眩しい日々は いったい
いったい どこなんだ
虚しさが 波のように押し寄せる
淀んだ何かが 渦を巻いた
憎らしいほど広い空に
腹の底から 絶叫した
追うことが苦しい ならば捨てよう
夢も 希望も 未来も全部
望まなかったら この苦しみを彼方にやれる
苦しみたくない 悲しみたくない
ゴミみたいに生きる中で ふと聴こえてきた歌は
弱い自分に ムチを打つ
『流れる時の中、動かないのは君だけだ』
『時には立ち止まってもいい、けれど』
『進むことを、何があっても忘れるな』
無責任なまでに前向きな
胸糞悪い その歌に
両耳塞いで 目を逸らす
胸に 痛みを覚えながら
親兄弟が 死んでゆく
同僚は 病気に負けていく
次は 自分の番かもしれない
焦りを覚えた 思い出した
気色悪い歌あのが 沈んだ脳裏を駆けてゆく
吐き気に悶える その中で
明るい光を 灯したいのか
『何を目指して生きてきた?』
『何を望んでここまで来た?』
『光を失った、それがどうした』
『動け、今こそ動くんだ』
『遅すぎるなど、あるものか』
希望を示す煩雑な 胸糞悪い応援歌
酷い頭痛と 暗闇の中で
何かを思い出した そんな気がした
今からでも 遅くないか?
そうであると 信じたい
苦しめるもの 投げ出して
やりたいことを 実行しよう
微かな輝き 手に掴むんだ
悔いが ひとつでも残らないように
そして 最後は
叶うなら
「あの時、動いてよかった」と
笑いながら そう言って
静かに 幸せに 死んでいきたい
少しでも、後悔しないように生きていきたい。




