甘さの正体と浮かぶ疑念
ほぅ〜。これが浮桟橋、ってやつか。
試作品だからまだ仮設置だが、思ったより安定している。
波に合わせてゆっくりと揺れるが、不安定さは感じない。
「成る程な。小さな“浮かぶ床”を繋げて沖合まで延ばす、か」
確かにこれなら港は要らない。
大規模な石組みも、桟橋杭も不要。
しかもこの浮力……多少重い荷を載せても、びくともしないだろう。
問題は距離だな。
「あの停泊船まで届かせる必要?」
「いや……恐らく半分でいい」
「最初は海底の地形が分からなかったから、安全を取って沖合に停めさせた。だが小舟で何度か行き来した時に、おおよその深さと底質は確認できた。半分の距離で十分だ」
「となると……あと四十枚もあれば足りますね?」
「そうだな。それで問題ない」
「では早速、製作を進めます。出来次第、設置へ」
「よろしく頼む」
そう言いかけたところで――
「ちょっと待ってくれ!!」
振り返ると、沖合の船から旗が振られていた。
……手旗信号?
この世界にもあるのね。
内容を読み取ったアステリアが頷く。
「伝わった。後で小舟が一隻来る。それと、あの船は一度国に戻す。必要な人材と装備を揃えて戻って来させる」
「早いわね」
「一週間もあれば余裕だ」
成る程。行動が早い。いや、早過ぎるくらいだ。
コンコン!
「お茶をお持ちしましたので、こちらに置いておきますね」
「ありがとう、ミュネさん」
ミュネが下がると、爺がすっと前に出る。
「では、私めがお茶を……」
――ん?
爺の動きが止まった。
「……これは?」
「何?」
視線の先。盆の上に、小さな瓶が置かれている。
透明な瓶。中身は――白い結晶。
「……砂糖、ですな」
「え?」
「それも……この量」
私は思わず眉をひそめた。
「ちょっと待ちなさい。何この量。……まさか、お茶に入れろって事?」
「恐らく……」
昨日は、私が来たから張り切ったのだと思っていた。ケーキに大量の砂糖を使ったのも、特別なもてなしだと。
でも――
「これ、常備品よね?」
「まさか……」
爺も言葉を選びながら続ける。
「日常的に、使っている……可能性が高いかと」
……冗談じゃない。
砂糖よ?この世界で、嗜好品どころか戦略物資に近い代物を。ケーキだけじゃない。
お茶にまで?
港もない、人口も多くない、見た目は平凡な男爵領。なのに――
「……やっぱり、この領地」
「何かがおかしいわ」
静かに、だが確信を伴って。




