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【コミック発売中】蛮族転生! 負け戦から始まる異世界征服  作者: 武蔵野純平
第七章 帝国再び

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第117話 歓迎の準備

 俺たちバルバルは帝国の歓迎準備に忙しかった。

 帝国を迎え撃つ平原で土木工事と建築工事が並行して行われている。


 釘を打つ音。

 土を掘り返す音。

 木材を運ぶ馬のいななき。

 そして、男たちの怒号が飛び交っていた。


「そっちじゃない!」


「こっちに板を持って来い!」


「ロープだ! ロープを寄越せ!」


「バカ野郎! 雑に扱うな! そーっとだ! 爆発するぞ!」


 俺は現場監督になり、手書きの簡易な図面を片手に工事現場を歩き回っている。


「おーい! ガイア!」


 樹上から海賊ベッヘンハイムが俺を呼ぶ。

 見上げると、ベッヘンハイムは高い木の上で手下たちと作業をしていた。

 見張り台を樹上に作っているのだ。


「こんな感じでどうだ?」


 俺はベッヘンハイムに答えるために、森から平原側に移動する。


 平原から見ると目算で二十メートルの高さに見張り台が出来ていた。

 枝の間に板を渡し床にして、平原側に盾の代わりに板を張ってある。


(器用なものだな……)


 俺はベッヘンハイムたち海賊衆の働きに感心する。

 大声でベッヘンハイムたちの働きを褒める。


「良い出来だ! ありがとう! その調子で頼む!」


「なあ、板を渡して見張り台の間を歩けるようにしちゃどうだ?」


「それは良い! やってくれ!」


「任せろ!」


 ベッヘンハイムたち海賊衆はひょいひょいと器用に枝を伝って他の木に移動していった。



 カラノスからの情報によれば、帝国軍は二万五千の大軍だ。

 バルバルが正面からぶつかればひとたまりもない。


 そこで俺は地形を生かして、帝国軍を迎撃することにした。


 ベッヘンハイムたち海賊衆が作業しているのは見張り台だ。

 森の木に見張り台を沢山作り、見張り台から平原に向かって弓を射る。


 森には前世日本でお目にかかったこがない巨木が沢山あるのだ。

 この高さを利用しない手はない。


 木の上で弓とくればエルフの出番だ。

 しかし、エルフたちは族長のエラニエフのもと、火薬と回復薬の製造に忙しい。


 そこで、ベッヘンハイムたち海賊衆を呼び寄せた。

 ベッヘンハイムたちは船乗りだ。


 帆柱に上がるので、高所作業はお手の物。

 海の上では波に揺られ不安定な足場で作業をしているので、木の枝の上でも問題なく作業する。


 ベッヘンハイムたちは、木の上と下に分かれて作業している。

 樹上で作業する者がロープを垂らし、地上にいる者がロープに材料や道具をくくりつける。

 合図を送ると、樹上で作業する者がロープを引き上げるのだ。

 とても効率が良い。


(手慣れたものだ)


 もし、バルバルがやったら、こうはいかないだろう。

 バルバルも木登りは得意だが、樹上で作業はしない。

 全員で木に登り、あれが足りない、これが足りないと騒ぎ、全員で地上に降りる。

 そんな非効率な光景が目に浮かぶ。


 俺は見張り台作りをベッヘンハイムたちに任せて他の場所に回った。


 森と平原の境では、ロッソが指揮をとり防壁作りが行われていた。

 木の間に丸太を置いただけの簡素な防壁だが、森への侵入を物理的に阻む。


「そこから先は魔物がいるから立ち入るな! ロープを張っとけ! 魔物は殺すなよ!」


 ロッソが作業をしている大トカゲ族に指示を出している。


 バルバルの領域である魔の森は、名前の通り魔物が住んでいる。

 魔物が木の陰から襲ってくるので、人が通過するのは困難だ。


 魔物のテリトリーではないごく一部の細長い地域で、俺たちバルバルは生活している。

 鉄製の武器を手に入れたことで、バルバルは魔物を駆逐しテリトリーを広げたが、この森近辺は手をつけていない。


 今、ロッソが丸太で防壁を作っているのは魔物がいないエリアだ。

 魔物がいるエリアは、逆に防壁をつくらない。

 わざと進入可能にしている。


 帝国軍が防壁を迂回しようと、防壁のない場所から魔の森に入れば帝国軍兵士は魔物に襲われる。

 つまり魔物も戦力に組み込んでいるのだ。


 悪辣?

 知らんよ!

 こっちは数が少ないんだ。

 使えるモノは、魔物でも使えだ。


「ロッソ! どうだ?」


「おう! 順調だ。ただ、丸太がなくなりそうだ」


「そろそろキリタイ族が運んでくる……ああ! 来たな!」


 キリタイ族が馬を使って丸太を運んで来た。

 キリタイ族の族長、バルタが器用に馬を操り森を抜けてくる。


「ガイアよ。丸太を運んで来たぞ」


「助かるよ。ありがとう」


「しかし、凄まじいな。森を要塞にするとは!」


 バルタは馬上で腕を組みながら森を眺める。

 平原側から見ると、森が要塞と化している。


「正面からぶつかって勝てると思うほど、俺はうぬぼれちゃいないさ」


「ふむ、冷静だな。頼もしいことだ。しかし、要塞にこもるとなると、我らキリタイの出番はないか……」


「いや、キリタイにも出番は用意している。だから、この平原をよく知っておいて欲しい」


「うん? どういうことだ?」


 俺は振り向いてバルタと一緒に平原を見渡す。


「あちらから帝国軍が攻め寄せてくる」


「ふむ」


「俺たちは森で迎え撃ち帝国軍を削る」


「あの穴は何だ?」


 バルタは平原で作業をしているバルバルの男たちを指さした。

 男たちは広い範囲で穴を掘り火薬を埋め、上に土をかぶせている。


「マーダーバッファローを狩るのと同じだ」


「なるほど。爆発で帝国軍を吹き飛ばすのか……。むう……悲惨なことになるな……」


 バルタは低くうなった。

 帝国兵が吹き飛ばされる光景を想像してしまったのだろう。


 火薬の威力は強く、頑丈な魔物マーダーバッファローですら吹き飛ばす。

 人に対して使えば……、防具を着けているとはいえ果たしてどうなるか……。


 これまでの戦では見たことがない悲惨な光景が広がるだろう。


「バルタ。帝国軍との戦だが、最初は防御に回る。だが、どこかで攻勢に出る。その時は、バルタたちキリタイに活躍してもらう。その為に、地形をよく理解しておいてくれ。傾斜であるとか、足下が悪い場所であるとか、もちろん火薬を埋めた場所も」


「了解した! 俺たちも吹き飛ばされてはたまらんからな! では、数人連れて平原を走り回るとしよう」


 バルタは部下を連れて平原を走り出した。


 ガンガンガン! と金属を叩く音が森の中から聞こえ、ケイトおばさん――アトス叔父上の妻――の声が

 響いた。


「お昼ごはんだよ! さあ、腹一杯食べな!」


 現場を手伝いに来ているおっかさんたちが、昼ご飯を作ってくれた。

 俺はのびをすると、森の中にある休憩場所に向かった。


 さて、歓迎の準備は整いつつある。

 帝国軍は喜んでくれることだろう。

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発売日:2026年01月23日

ISBN:9784046855176

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