空気を読まない女達
「さぁさぁ皆様召し上がれ」
アルシェリーナは王族だらけの場所でも臆することなく、ニコニコとしながら挨拶をしてサッサとルーカスの隣を陣取り、持参したケーキをさも自分が作ったかのように皆に奨めた。
今まで廃妃の話でそれを詰める段階だったのに空気を読まないアルシェリーナだった。
だが、トゥールもそれに合わせてダージリンを入れ直している、因みにこれは先程ケーキと共にアルシェリーナが持ち込んだものであった。
毒味もバッチリ、トゥールが行っている。
トゥールは少し重い雰囲気だったから逆に緩衝材の役目をアルシェリーナがしてくれたと思っていた。
「相変わらず図太いな」
ルーカスは苺を頬張りながらアルシェリーナをジト目で見ているがお口の端にはお約束のクリームがくっついている。
それは可愛いアピールかな?
以前のアルシェリーナならこんな場でこのような振る舞いなど決してする娘では無かった。
趣味が開花したこともあるかも知れないが愛子という摩訶不思議な現象を目にして、尚且つ生涯をともにする相手となれば多少の事は気にならないし、気にもしない。
─王族ナンボのもんじゃい─
ここまでは思ってないが近いものがある。
特に先日までは流石に陛下に対しては恐縮していたが、それもその時までである。
割とポンコツぶりを見てしまったらもう怖くもなんともない。
毒舌で偉そうなルーカスの相手は怖いもの知らずの図太いアルシェリーナ。
なんともお似合いの二人だった。
そんなアルシェリーナに熱い視線を送るのはケーキを食しながら上目遣いで見るライアンだった。
その視線をルーカスが手にしたデザートスプーンで遮ろうとする。
「あ、兄上!」
ライアンのアルシェリーナへの恋慕を把握しているルーカスのヤキモチからの行いに、ライアンは悲しそうに俯いたが、アルシェリーナは歓喜していた。
─ルーカス様がヤキモチなんて、可愛い!─
うっとりとしながらルーカスを見るアルシェリーナにライアンはあからさまに落胆した。
二人の婚約は前陛下の遺言であったし、アルシェリーナの新しい扉の事なんて知らないライアンはこの婚約は完全なる政略で、隙あらば婚約者交代なんて僥倖が起きるかもしれないと期待していたのだ。
だから婚約者同士の親睦を図るお茶会でアルシェリーナが待ちぼうけを食らっていると、情報を得てからせっせと時間を作って自分アピールを頑張っていたのに⋯。
二人は相愛であるのを目の当たりにしてライアンの恋心は今ハラハラと散っていた。
実はその様子に妖精達が同情してライアンの頭や背中を擦ったりしているのだが、見えているのはルーカスだけだった。
「まぁ仲がよろしいのですね」
実は話題にもあまり登っていないがセリーヌもルーカス同様、学園には在籍だけして通っていない。
だから友人などというふれあいもない。
子供の頃から知った者としか接していないセリーヌは空気を読むという事は出来なかった。
ニコニコとしながら兄とその婚約者の様子を素直に口にして、弟の傷口に塩を塗りこむのだった。




