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性能と火種と聖女の奇行

 前回のお話、1300字程加筆しました。

 後半の展開が少しだけ変わっているので、前回のお話を更新直後(2023年10月27日22時〜2023年10月29日0時)に読んでくれた人は、この話を読むよりも先に、加筆修正を行った前回のお話を読んでくれると嬉しいです。

 お手数をおかけして申し訳ございませんが、ご理解の程、よろしくお願い致します。

◇side:魔王


(よし……! 今の性能(スペック)オレなら、サンタに勝つ事ができる……!)


 連撃を放ちながら、オレは勝利を確信する。

 神造兵器(からだのいちぶ)を取り戻した今のオレは、サンタの性能(スペック)を優に上回っていた。

 

「これで終わりだっ!」


 藍色の炎を纏った拳で、サンタの頭蓋骨を砕こうとする。

 サンタは辛うじてオレの攻撃を避けると、苦しそうに息を荒上げながら、後方に跳んだ。


(サンタ。オレは力の一部を取り戻した)


 距離を取ったサンタを睨みつける。

 気絶から立ち直り、上半身を起き上がらせる第二王子の姿を知覚する。


(今のオレはお前よりも強い。きっと今のオレなら、お前を瞬殺できるだろう。けど、──)


 予め仕込んでいた『火種』に魔力を流し込む。

 


(──オレは、今でもお前が怖い)


 右掌を前に突き出し、大技を繰り出す──『フリ』をする。

 右の拳に高密度の藍色の炎が纏わりつく。

 大技を繰り出そうとするオレの姿を見て、サンタは身を強張らせる。

 サンタの意識がオレの身体に引き寄せられる。

 それを確認したオレは『火種』を破裂させた。


「あぎぃ!?」


 第二王子の身体に仕込んでいた『火種』が破裂する。

 聖女とサンタが虐者の幻覚にかかっている間、第二王子の心臓に仕込んだ『火種』だ。

 あの一秒もない刹那の間に、オレは第二王子の身体に自らの魔力を流し込んでいた。


「──っ!?」

 

 第二王子の異変に気づき、サンタの視線がオレから逸れる。

 それと同時に、第二王子の胸から突き出た藍炎の矢が、音速よりも少し劣る速度で飛翔し始めた。

 常人だったら、……否、一流の兵士でも避けられない一撃。

 サンタの一瞬の隙を突いた不意の一撃。

 にも関わらず、サンタは飛んできた藍炎の矢を直撃寸前の所で避けてしまった。


(よし……! 態勢が崩れた……!)


 藍炎の矢を避ける事で精一杯だっただろう。

 仰け反った所為で、サンタの重心が背後の方にズレる。

 サンタの態勢が不安定になる。

 サンタが致命的な隙をオレに見せつける。

 ──勝った。

 態勢を崩したサンタを見て、オレは勝利を確信する。

 このまま必殺の一撃を放ったら、確実にサンタを殺せるだろう。

 体内にある魔力を藍色の炎に変換する。

 今のオレが出せる最大最高の攻撃を繰り出そうとする。

 その瞬間、オレが勝利を確信した瞬間、態勢を崩したサンタは不敵な笑みを浮かべた。

 

『落ち着け、嬢ちゃん。ワンちゃん相手に使う予定だった策が残っている』


 サンタの言葉を思い出す。

 先程、サンタが虐者の攻撃を『敢えて』喰らった事を思い出す。

 

(もしかして、コレは罠なのか……!?)


 確信した筈の勝利を見失ってしまう。

 このままサンタに攻撃してもいいのかと考えてしまう。

 一瞬、ほんの一瞬の躊躇い。

 一瞬、躊躇った所為で、サンタに態勢を整える時間を与えてしまった。


「ちぃ……!」


 サンタから距離を取る。

 後方に跳んだオレは、すぐさま用意していた次の策を実行しようとする。

 が、オレが次の策を実行するよりも先に、聖女が動いてしまった。

 

「──っ!?」


 青い液体が入った瓶を取り出す聖女。

 オレが聖女に視線を送った途端、遺跡の床を蹴り上げるサンタ。

 魔力の塊を前方に放つ事で、迫り来るサンタを吹き飛ばす。

 再び聖女に視線を送る。

 彼女は瓶の蓋を開けると、得体の知れない液体を飲み始めた。


(一体、何を飲んで……!?)


 つい考えてしまう。

 青い液体を飲み続ける聖女に視線を送りながら、つい考えてしまう。

 魔力の塊によって吹き飛ばされたサンタが態勢を整える。

 聖女が瓶の中に入った青い液体を飲み干してしまう。


「おい、聖女……! お前は一体何を口にし……」


 サンタが再び駆け出す。

 聖女の身体から煙が出始める。

 オレの疑問が解消されるよりも先に、事態が急転してしまう。

 聖女が何を飲んだのか知りたい。

 迫り来るサンタを撃退したい。

 それらの思いが、ほんの一瞬だけ、オレの脳を掻き乱す。

 それが致命的だった。


「ちっ……!」


 何処からともなく剣を取り出すサンタ。

 目視でも分かる速度で縮み始める聖女の身体。


(一体聖女の身に何が起きている? いや、それよりも先にサンタを……ああ、でも、聖女が飲んだのが力を得る代わりに寿命を削るタイプの秘薬だったら、体内に吸収するよりも先に吐かせ──)


 先にサンタをどうにかしないといけない。

 理性(あたま)では分かっている。  

 けど、本能(からだ)は納得していない。

 目の前の危機(サンタ)よりも、聖女を優先したいと思っている。


「魔王、考え事をしている暇はねぇぜ」

 

 右腕に纏った藍色の炎を剣の形に作り替える。

 右腕に纏わりついた藍炎の剣で受け止める。

 サンタが振るう白銀の剣を、直撃寸前の所で受け止める。

 一瞬、ほんの一瞬だけ、サンタの瞳を見てしまった。

 サンタの瞳に聖女の姿が映し出される。

 変わり果てた聖女エレナの姿が、サンタの瞳に映し出される。

 変わり果てた聖女エレナの姿が、オレの視線を引き寄せる。

 変わり果てた聖女エレナの姿を見た途端、頭の中が『ほんの一瞬だけ』真っ白になった。

 いつも読んでくれている方、ここまで読んでくれた方、ブクマ・評価ポイント・いいね・感想を送ってくれた方、そして、新しくブクマしてくれた方に感謝の言葉を申し上げます。

 この度、本作品『婚約破棄された元聖女です(略)』が、第11回ネット小説大賞の一次選考通過致しました。

 ネット小説大賞の選考通過したのは初めて+以前連載していた『価値あるものに花束を』と『王子の尻を爆破した悪役令嬢(略)」も通過しているので、今めちゃくちゃ嬉しい気持ちになっています。

 この場を借りて、いつも読んでくださっている皆様、そして、ネット小説大賞運営チーム様にお礼を申し上げます。

 本当にありがとうございます。

 これからも完結目指して執筆し続けますので、お付き合いよろしくお願い致します。

 次の更新は11月4日(土)20時頃に予定しております。


(追記)

 申し訳ありません。

 諸事情により、次の更新は11月4日(土)20時頃ではなく、11月6日(月)12時頃にさせて貰います。

 告知通り更新できなくて、本当に申し訳ありません。

 来週中に4章完結させますので、これからもお付き合いよろしくお願い致します。

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厚かましいと自覚しておりますが、感想、レビュー、ブクマ、評価、お待ちしております。 小説家になろう 勝手にランキング
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