第二百二十二話 ファインプレイ兄さん
ちょっと色々余計なことしてましたが、五月に入ったので更新再開!
あ、エイプリルフールの話は消しちゃうと読者に知識格差出ちゃうので残しておく予定です!
――波乱の連続だった学園交流戦が、終わった。
流石は世界一ファクトリー、と言えるほどのイベントの畳みかけっぷりで、特区の悪役令嬢リスティアには振り回されたし、敵に回ったセイリアとファーリはすさまじい強敵だったし、フィルレシア皇女が僕のチャージ済み〈ファイア〉に耐えた時は冷や汗が出た。
しかし、結果だけ見れば……。
(うん! とっても有意義なイベントだったね!)
その成果は上々。
交流戦で優勝したことで、一番の目当てだった「魔王の鍵」と明記されている優勝旗をゲット。
さらにその後のイベントでは、フィルレシア皇女からあからさまに重要イベントアイテムっぽいアクセサリーまでもらってしまった。
もし元の世界から〈フォールランドストーリー〉ガチ勢が転生してきたら、
「――う、嘘っ!? この人、原作ミリしらなはずなのに完璧に原作をなぞってる!」
と驚きのあまり叫ぶことになってしまうだろう。
……いや、まあ二人目の転生者なんて来るはずないし、仮に来たとしてもギャルゲーやってたプレイヤーになるから高確率で男だろうけど、妄想は自由だよね。
(それに、オマケもあったし!)
大会が終わってから帝国に帰るまでのわずかな自由時間を利用して買い物をしたところ、流石は技術に特化した土地、レアなアイテムが大量に手に入ったのだ。
まず、大量の消費アイテムと、〈魔法契約書〉。
使うだけで魔法が覚えられるこの〈魔法契約書〉は帝国ではあまり数が出てないのだが、特区の店には普通に売られていた。
……まあ、その大半がもう僕は習得済みの〈エレメンタルトーテム〉を始めとしたエレメンタルシリーズだったけれど、きっといつか役に立つだろう、たぶん。
しかし、何よりも嬉しかったのが〈錬金釜〉!!
これは特区の最新錬金アイテムで、これに素材を入れてなんやかんやすれば、あっという間にアイテムが錬成出来るらしいのだ!
高価なもののせいか、店員さんは「え? ガチでこれ買うんスか?」みたいな目で見ていたけど、これまでの特訓やらのおかげでお金ならある。
いかにもゲーム的な装置だし、「これだ!」と思った僕は即決即金で購入。
流石にそのまま持って帰る訳にはいかないので、帝国の学園まで送ってもらえるように手はずを整えた。
一、二週間もすれば届くそうなので、その時が今から楽しみだ。
唯一、心残りがあるとすれば、一つだけ。
(メイさんにあいさつしたかったけど、会えなかったな)
悪役令嬢リスティアのイベントで登場したメイドのメイさん。
ゲーム的に言えば、「毒入りの差し入れを持ってくるサブキャラ」というだけの立ち位置の人だけれど、彼女にはリスティアを裏切らせてしまったし、僕には最後まで彼女の面倒を見る責任がある。
まあそれを抜きにしても単純に結構仲良くなれたと思っていたので、せめてもう一度あいさつをしたかったのだけれど、帝国行きの列車に乗る前に探したところ、兄さんに止められてしまった。
「アルマ。会いたいという気持ちは分かるけれど、彼女にも新しい生活の準備があるんだ。今はそっとしておいてあげるのが優しさだよ」
そんな風に兄さんに言われてしまえば、僕もワガママを通す訳にはいかない。
(……そう、だよね)
ゲームのイベントとは違って、イベントが終わったあとにも、関わった人たちの人生は続く。
あれだけ派手にリスティアを裏切って、彼女の学校での立場がどうなるかまでは、あまり考えていなかった。
(原作のイベントの通りの展開だったと思うから、彼女も幸せになるって信じたいけど……)
兄さん経由でそれなりの額のお金を渡してはいるけれど、そのくらいでは補えないような大変な影響を、彼女の人生に与えてしまったのだと今さらながらに自覚する。
「――大丈夫。今生の別れという訳ではないんだ。また会えるよ、きっとね」
僕はその兄さんの言葉を信じ、帰りの魔法列車に乗り込むしかなかった。
※ ※ ※
翌日の朝。
僕は兄さんの頼みで、授業前に僕らが「部活動」と称して訓練なんかをしている道場へと足を運んでいた。
兄さんいわく、あの道場の規模だと普通は管理をする使用人を入れるのだけれど、今までは下手な人間を入れると機密情報を盗まれそうで、誰も雇い入れなかった。
ただ、これから先の夏季休暇なども見越して、信用出来る人に専任で道場の管理をしてもらうことになった、とのこと。
僕は最初、「情報を盗まれるとか、そんな大げさな」と笑い飛ばそうとしたのだけど、隣にいるトリシャが涙目でぶんぶんぶんぶんと首を振ってうなずいていたので、そういうものかもしれない。
今日はその初顔合わせ。
というのも、道場には僕が許可した相手でなければ入れない魔法がかかっているため、僕が出向く必要があるのだ。
(あんまり気難しい人じゃないといいんだけど)
兄さんが太鼓判を押した人だから信用は出来ると思うけど、あんまりいかつい人や、ネリス教官のような性格が終わりすぎている人だと困る。
「……ええと、あの人かな?」
不安を隠して歩いていると、やがて道場の前に所在なさげに立つ小柄な人影が見えた。
いや、というか、あの人は……。
「あっ!」
次の瞬間、顔を上げた「彼女」と目が合う。
どこからどう見ても見覚えのあるそのメイド服の女性は、呆然とする僕に一目散に駆け寄ってきて、
「――今日からここの管理を任されました、アルマ様専属メイドのメイです! よろしくお願いしますね、アルマ様っ!」
弾けんばかりの笑顔で、そうあいさつをしたのだった。
早すぎた再会!
更新サボってる間にchatGPTで面白いもの作ったので紹介しときます
悪役転生シミュレーター
https://chatgpt.com/g/g-6810ccc93d408191a681cf4dda8a389d-e-yi-zhuan-sheng-simiyureta
ゴミみたいな悪役に転生して、いつも冷たくしてるメイドに普通に接して感激されたり、ブチ切れてる婚約者の機嫌を取ったり、という悪役転生物語を自分で体感出来るシミュレーターです!
ぶっちゃけまだ完成度は低いですが、chatGPTのアカウントさえあれば誰でも遊べますし、AIの可能性を感じられるというか、ちょっと「新しい体験」を経験出来ると思うので、気が向いたら遊んでみてください!
あ、それはそれとして、明日も更新する予定なのでよろしくお願いします!





