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第二百三話 姦計

体調死んでましたが、ぐっすり寝たら治りました!


交流戦のトーナメント表(挿絵)

挿絵(By みてみん)


 ――交流戦が、始まった。


 ただ、トーナメント表によると僕らは第二試合。

 この会場は試合場が一つしかないため、最初の試合は、見学になる。


(……さて、お手並み拝見だ)


 開会宣言のあと、すぐに第一試合が始まる。


 最初の試合は、あのリスティアのチームと、第五学園の戦い。

 基本的に、学園は番号が小さい方が強いので、順当に行けば第六学園である特区チームより、この第五学園の方が少しだけ強いことになるけれど……。


(やっぱり、あの二人もいるのか)


 僕はリスティア側のチームを見て、軽く眉をひそめた。

 昨日の選手紹介の時に名前を見かけて気になっていたけれど、見知った顔が選手として名を連ねていた。


 ――トーリ・マーキンにコシ・ギンチャーク。


 リスティアが鑑定妨害を発動させる前に鑑定した二人が、彼女のチームにいた。


(装備だけはミスリル装備をそろえている。けど……)


 あの二人のレベルは、確かどちらも二十台だったはず。

 あんなレベルの人間をわざわざ起用する意味が分からなかった。


(ほかの二人は、トーリたちよりはまともそうだけど……)


 残り二人のメンバーは、軽薄そうな茶髪の男と、仏頂面の男。

 立ち居振る舞いを見ると、ほかのメンバーよりはちゃんと「デキる」雰囲気を感じさせた。


(相手の方は……)


 視線を反対側に移す。

 第五学園の方は知っている顔はいないけれど、前衛2、後衛3のオーソドックスな編成。


 あくまで第一印象だけで見ると、全体としてはこちらの方が優勢に見えた。

 そして、それは第五学園側の選手にとっても同じだったんだろう。


「悪いが、今年の俺たちは歴代最強だ。あっさりと勝って、帝国戦への弾みにさせてもらうぞ!」


 第五学園チームのリーダーと思しき少年が、強気に勝利宣言する。

 対して、リスティアは余裕の構えだ。


「試合時間が決まっているとはいえ、時間は有限ですわ。観客のためにも、すぐに終わらせて差し上げましょう」


 そんな煽るようなことを言って、例のプレートを身に着けると、さっさと壇上に上がる。


「ぐっ! 後悔させてやる!」


 それを追いかけるように、第五学園の選手たちもプレートを胸に着け、壇上に上がった。


 ルールを確認しておくと、それぞれにリーダーとなる人物が決まっていて、その人物が降参するか戦闘不能になった時点で負け。


 あとは、これもこの大会からの新ルールだけれど、試合時間は最大で四分。

 それまでに決着がつかなかった場合は、終了時点でのHP残量が多かった方が勝ち、となるらしい。


(試合時間四分は、結構短いようにも思うけど……)


 あまりダラダラと長引いても、見ている方としては面白くない。

 そういう観客への配慮から作ったルールだと言われたら、特に反論する必要性も感じなかった。


「――それでは、第一試合、開始!」


 審判の掛け声と共に、試合が始まる。


「みんな行くぞ!」


 最初に仕掛けたのは第五学園側だった。

 なんと五人全員が詠唱を始め、魔法攻撃の構えを取る。


「ふーん。前衛後衛を分けたのはブラフってことだね」


 隣のトリシャが感心したようにつぶやくが、確かに対戦相手との距離が開いている開幕の状況においては有効な戦術のようにも見える。


 急いで接近して詠唱を潰すか、あるいは同じように全員で魔法を使って迎撃するか。

 すぐに対応策が必要に見えた。


 しかし、リスティアチームは焦らなかった。


「ふふっ。無駄な努力をご苦労様。なら特別に、わたくしの〈聖女〉としての力を見せてあげますわ!」


 彼女は対戦相手の詠唱を無視し、胸元で両手を握り込むようにして祈りの姿勢を取ると、相手の詠唱が終わるよりも早く、こう叫んだ。




「――〈ホーリー・ブレス〉!」




 唱えられた魔法名に、僕は思わず目をむいた。


(聞いたことのない魔法名! 固有魔法か!)


 この世界には、魔法を使いこみ、属性の熟練度を上げて覚えられる汎用魔法とは違い、その人物しか覚えられない〈固有魔法〉と呼ばれる魔法がある。

 ただ、せいぜいが中ボス程度だと思っていたリスティアが使えるとは思っていなかった。


 彼女が唱えた〈ホーリー・ブレス〉はどうやらバフ魔法。

 リスティアチームのメンバーを、淡い光が包み込んだ。


「ぐっ! だが、生半可な防御魔法くらいで僕らの魔法は防げない! 撃てぇ!」


 その第五学園のリーダーの声に、


「〈フレイムランス〉!」

「〈フレイムランス〉!」

「〈ウォーターランス〉!」

「〈ウィンドランス〉!」

「〈フレイムランス〉!」


 第四階位、ランス系の魔法が五人から一斉に放たれる。

 それらはなぜか回避行動を取らない、リスティアチームに直撃した。


 だが……。



「あらあら、期待外れですこと。その程度ですの?」



 魔法を受けたリスティアたちは、無傷。


 いや、ディスプレイを見ると、ほんのわずかにHPが減っているようだが、誤差程度。

 それよりも、第五学園側のMPゲージの減りの方がはるかに大きかった。


「ぐぅ、さっきの防御魔法か! 怯むな! あんな強力な防御魔法、いつまでも効果があるものじゃない! 弱い魔法でもいい、撃ち続けろぉ!」


 悲鳴のような少年の号令に合わせて、魔法が乱れ飛ぶ。

 第一、第二階位の魔法が主だったが、数十個にもおよぶ攻撃魔法が飛び、その全てがリスティアチームに命中した。


「バカ、な……」


 けれど、それが意味をなすことはなかった。

 彼らの魔法はリスティアたちのHPゲージをほんの数ミリ削っただけで、それよりも先に第五学園チーム側のMPがほぼ底をついていた。


「ふふ。本当に、愚かですわねぇ」


 それを見て、今まで陣形の後ろで守られていたリスティアが、前に出る。

 そうして彼らを見下すように眺めると、口を開いた。


「わたくしが先ほど唱えた光魔法〈ホーリー・ブレス〉の効果は、『魔力強度の低い魔法からの防護』ですわ。具体的には、第四以下の階位の魔法の威力を八割減衰させますの」

「な、に……?」


 驚く少年に追い打ちをかけるように、リスティアは畳みかける。


「それにあなた方は、浅はかにも数を撃てばこの魔法が解除されると思い込んでいたようですけれど、この魔法の解除条件は『発動から五分が経過すること』。つまり――」


 そこで、リスティアは唇を歪め、




「――あなた方がこの試合のルールを受け入れた時点で、もう勝ち目はなかったんですのよ」




 傲岸に、不遜に、悪役令嬢そのものの顔で、楽しそうに嗤ったのだった。

リスティアの秘策!




なんか異様に長くなったので分割!

次回は今日の18時に更新します!

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かっこいいアルマくんの表紙が目印!
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二巻
ついでににじゅゆも


― 新着の感想 ―
8割も減衰してくれるならちょっとくらいファイア撃ち込んでも原作守護れるね!やったね!!
8割しか減衰されないなんて……アルマくん油断して普通に魔法をぶち込みそうだな
アルマ : ファイアー x10
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