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第百九十七話 絶体絶命!? 封じられた力!

祝! 二巻発売!

挿絵(By みてみん)

闘技大会編に、子供の頃のトリシャとレミナの書き下ろしなんかを加えた二巻は、決め顔アルマくんの表紙が目印だっ!!





という訳で、久しぶりに帰ってきました!

色々あって自分でもビビるくらい期間が開いちゃいましたが、しばらくは毎日更新するのでよければまたよろしくお願いします!


あ、ストーリー忘れちゃったという人も、本編中であらすじを語ってるのでそのまま読んじゃって大丈夫です!

ではでは、早速本編をどうぞ!


「――ここが〈特区〉、か」


 長距離移動用の魔列車から降りた僕らを出迎えたのは、スチームパンク、とか言っただろうか。

 魔法と科学がごっちゃになったような、混沌とした街だった。


「ト、トリシャ! 煙! 機械が煙を吐いちゃってるよ!」

「あー。あのねレミナ。あれは蒸気機関って言って……」


 帝国では見たことのない、雑然とした街並みにざわつく僕らに、先頭を歩くフィルレシア皇女が振り返って釘を刺す。


「はしゃぐ気持ちも分かりますが、わたしたちの目的はあくまで〈学園交流戦〉。あまり羽目を外さないようになさってくださいね」


 ……そう。

 僕らが生まれ育った帝国を出て、この〈特区〉までやってきたのは、それぞれの国が抱える英雄育成機関の対戦の場、〈学園交流戦〉に出場するため。


 一年生の中で選抜された成績優秀者十人で、敵地とも言えるこの〈特区〉へと乗り込んできたのだ。


(……もう一度、状況を整理しよう)


 次のゲームイベントとされる〈学園交流戦〉は、六つの学校が、八つのチームに分かれてしのぎを削る、トーナメント戦だ。


 優勝賞品の〈統風の魔旗〉は「魔王に至る鍵」というあからさまなイベントアイテムだから、原作守護勢の僕としては、絶対に優勝しないといけない。


 ただ、うちの学校はほかの学校よりも強いから、優勝なんて簡単……な、はずだったんだけど、ここに大きな罠があった。



 ――前回優勝校である帝国英雄学園は、特権として大会に二つのチームで出場出来る。



 そして最悪なことに、国からの指定により、原作のヒロインと目される〈ファイブスターズ〉の面々は、僕とは別チームとして出場することになったのだ。


 つまり、これまでのイベントによって原作よりも圧倒的に強く成長していると考えられる原作ヒロイン、セイリアとファーリが仲間から抜けた状態で他校を破り、さらに、決勝ではそのヒロインたちのチームをも打ち破って優勝をしなければいけない、ということになる。


 もちろん、僕のチームだって弱くはなく、二人はもともとの仲間で実力も気心も知れているし、残り二人もクラスの男性陣の中でのトップ層。


 粒ぞろいとは言えるんだけど……。


(やっぱりこの世界、ギャルゲーが基になってるせいで、ヒロインの方が男キャラよりスペック高いというか、最初から完成されているんだよね)


 意地悪なゲームバランスで定評のある世界一ファクトリーなら、「主人公の仲間として一緒に成長していくヒロインを弱く、主人公のライバルになるであろう男性陣の方を強くする」なんていやがらせみたいな調整をしてもおかしくないところだけれど、残念ながらこのゲームはそうではなかった。


(まあそうは言っても、流石に他校との戦いは何とかなると思うけど……)


 なんて、微妙に失礼なことを考えていた時だった。



「――おーっほっほっほっほ!! ようやく来ましたわね!」



 現実の生活じゃまず聞かないような、癖の強すぎる高笑いが聞こえてきた。


「なっ! あ、あれは……」


 その姿を見た瞬間、僕は思わず自分の目を疑った。


 おーっほっほっほっほと高笑いする、金髪をドリルみたいに巻いた、吊り目の令嬢。

 そんな、今日日マンガですら見かけないような典型的な悪役令嬢が、僕らの進路上に立ちふさがっていたのだ。


「……あの人が前に話した帝国の元侯爵令嬢、リスティア・ロブライト様。特区の〈聖女〉って噂されてる人だよ」


 ぼそりと耳打ちする我らが情報通トリシャの言葉に、あらためて目の前のドリル令嬢、リスティアの姿を見る。


 隣に侍らせた強張った顔をしたメイドの少女をはじめ、嫌みな貴族っぽい男や軽薄そうな男、強面の男性などなど様々な取り巻きを引き連れ、無駄に手の甲を口に当てて高笑いする様は、やはりとてもではないが〈聖女〉には見えない。


 どう見ても、悪役令嬢か、そうでなくてもギャグ要員だ。


 ただ、我らが皇女様は違った。

 リスティアの強烈な個性にも動じることなく、にこやかに近付いて声をかける。


「お久しぶりですね。リスティアさん」

「ええ。フィルレシア様もお変わりなく」


 フィルレシア皇女の笑顔に、挑発的な態度で応じるリスティア。

 どうやら二人は面識があるようだ。


(あ、でもそうか。元が帝国貴族なら、帝国の皇女と知り合いじゃないって方が不自然だよね)


 とはいえ、二人の間に流れる雰囲気は、友好的なものでは決してない。

 皇女と元侯爵令嬢は表面上はにこやかなまま、丁々発止としたやりとりを繰り広げているのが分かる。


 まあ、それ自体は注目するべきことだけれど、


(……っと、こんなことしてる場合じゃないな)


 フィルレシア皇女とリスティアの関係も気にはなるが、今は敵の戦力を分析するチャンスだ。

 僕はこっそりと、相手のレベルと名前が分かる魔導具、〈ディテクトアイ〉を起動する。


(勝手に相手を鑑定するのはマナー違反かもしれないけど、そうも言ってられないしね)


 心の中で言い訳しながらじっと目を凝らし、リスティアの周りにいる人たちの名前とレベルを順番に確かめていく。



  LV 2   メイ・ドロッセル

  LV 25  トーリ・マーキン

  LV 28  コシ・ギンチャーク

  LV 21  タイコ・モッチ

  LV 17  ニーギ・ヤッカシー



(うーん、弱いな)


 感想は、その一言に尽きた。

 一人目、メイド服を着たお世話係っぽい少女は非戦闘員だろうから省くとしても、残りの面々もほとんどがレベル20代。


 うちの学校の生徒なら最低でもレベル30は超えているし、Aクラスになるともう平均が50を超えていると考えると、やはり特区の生徒の平均レベルはかなり低いと考えてよさそうだ。


 当然、重要キャラの印である図鑑マークがついている人も一人もいない。


(警戒する必要があるとしたら、あの男くらいか)


 彼らとは付かず離れずの距離でこちらを見ている、強面の男子生徒に視線を向ける。

 その冷徹な眼光は、人だろうが魔物だろうが、はたまた愛らしい小動物が相手であっても、一切の容赦はしないと語っているようだった。


 平均レベルが低くても、隠れた実力者がいないとは限らない。

 僕は少し緊張しながらも〈ディテクトアイ〉を起動して、



  LV 9  ホン・トーワ・ネコスキー



(いやあんたも弱いのかよ!!)


 あまりにも期待外れの結果に、心の中で激しくツッコミを入れた。


 ……ま、まあ、こういう見た目と強さが一致しない相手を見破ることが、こういう鑑定系アイテムの便利なところではある。

 いい学びが得られたと思って、ここは飲み込んでおこう。


(と、とにかく、次が本命だ)


 思わぬ結果に出鼻をくじかれてしまったが、重要なのはあのドリルのお嬢様のレベルだ。

 彼女のレベルを見ることで、余所の学校の出場選手のレベルを推し量ることが出来る。


(お手並み拝見、っと)


 僕は相手に気付かれないようにこっそり、ドリルお嬢様がちょうどこちらから視線を外した瞬間を狙って、彼女を「視る」。


 その強さを見極めようと凝らした目に、映ったのは……。




  LV ##  ###########




「……え?」


 今まで目にしたことのない、文字化けした記号の羅列。

 何が起こったのか、理解する暇もなかった。







「――あなた、わたくしを『視』ましたわね?」







 気付けば……。

 談笑していたはずの令嬢はぴたりと話を止め、その驕慢な瞳をグリンとこちらに向けていた。


「ぁ……」


 瞬間、背筋を駆ける悪寒。

 自分がとんでもない失策をしたという予感が、脳裏を駆ける。


「あぁ、そうですわね。分かります。分かりますわ。有象無象の方々にとって、相手の力を推し量れる鑑定アイテムは確かに便利でしょう。……ですが。それは、神聖な決闘の場においては無粋ではなくて?」


 楽し気な少女の口調に、その罠にかかった獲物を見るような笑みに、嫌な予感は強くなっていく。

 そして……。



「――ですからわたくし、決めましたの! この大会を、そんな野暮な道具に踊らされる危険性から、解放してさしあげようと!!」



 自らの言葉に酔うように叫び、巻き毛の少女は「エリック!」と、誰かの名前を呼ぶ。

 その、次の瞬間だった。


「なっ!?」


 都市全てを光が駆け抜け、その瞬間、確かに「何か」が変わった。

 いや、その「何か」の正体は、明白だ。



  LV ##  ###########

  LV ##  ###########

  LV ##  ###########

  LV ##  ###########

  LV ##  ###########



 起動したままの〈ディテクトアイ〉が表示する情報。

 それが全て、誰に向けても文字化けしたものになるように、変わったのだ。


(都市全体に及ぶ、鑑定ジャミング!?)


 何の意図があるのかは分からないが、この鑑定妨害を仕掛けたのが、目の前の少女であることは疑いがなかった。

 焦る僕に向かって、彼女はあくまで優雅に笑う。



「……では。フェアなゲームを、いたしましょう?」



 そう言ってクスクスと笑うその姿に、僕は冷や汗が噴き出るのを抑えることが出来なかった。


(……い、いやいや! まずい! これはまずいぞ!)


 まさか、こんな攻撃の仕方があるなんて、想像すらしていなかった。


 僕がここまで鑑定出来たのは、向こうの学園の一般生徒だけ。

 出場選手がどのくらいのレベルなのかは、それでは全く分からない。


 それが意味するところは、明白だ。




 ――試合でどのくらい手加減すればいいか、全然分からなくなっちゃったよ!!




降って湧いた大ピンチ!(対戦相手が)





お知らせラッシュですみませんが、カクヨムでも投稿始めました!


前から言っていた通り、なろうの男性向けの雲行きが怪しいので避難先を作りたいというのと、あと編集さんから「ミリしら一巻あんまり売れてないからカクヨムに出稼ぎに行って読者増やしてください!」って言われたからですね!

世知辛い!



ただ、ぶっちゃけ既存作を持っていっただけだと読んでもらえないと思うので、ついでになろうよりカクヨム向きかなぁと思っていた新作を向こうで始めました!


タイトルは、「バーチャル美少年ダンジョンチューバー」!

魔力の影響で男が死にまくって男女比がやばいことになった世界で、とある少年がコッショリとダンジョン配信したところたちまち話題になって……みたいな話です!


あとでなろうにも持ってくる予定ですが、「応援してやるぜ」って人や「早く読みたい」って人はカクヨムでフォローとかをしてくれると嬉しいです!

(なろうでカクヨムurl貼るのもあれですが、たぶん検索じゃ見つけられないので以下アドレス)

https://kakuyomu.jp/works/16818093084298107681


い、いえ、ほんとまずはカクヨムでの認知度上げないと、ミリしらの読者増やすどころの話じゃないですので、本当によろしくお願いします!





そしてもちろん、この連載と本日発売の書籍二巻も応援してくれるとありがたいです!

とりあえず、次回更新は明日です!

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かっこいいアルマくんの表紙が目印!
書籍二巻、11月29日より発売中!
二巻
ついでににじゅゆも


― 新着の感想 ―
本気でやれや、主人公。…一辺死にかけませんかねぇ、こいつ。
あけましておめでとうございます。 更新できてて、すごいです 応援してます
明けましておめでとうございます。 更新楽しみにしてます。 新刊買うの忘れていたので、そのうち買います。 書店にあるかな。一巻は見たんだけど。 ボクはカクヨムのとある作品でボクはゲイじゃないから、男…
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