実機授業3
――オルレアン軍学校・演習場管制塔――
格納庫でレリウス教官に捕まったオレは、
そのまま教官と一緒に管制塔へ上がった。
オレは管制塔の最上部に着くと、
言葉を失った。
(………。)
管制塔は高かった。
当然っちゃあ当然なんだけど…。
今、オレは管制塔から突き出た、
バルコニーのようなところにいる。
「うぅ、うっ…うぅ…。」
(マ、マジ無理だって!!
なに、この高さ…、
東京タワー!?、
いや、スカイツリーぐらいあんじゃないの…
はぁ……、
高いところ苦手なのに…。)
※実際はそこまで高くない
(あ”――!!、足元の板の継ぎ目から…
し、下が…見えるじゃん…。
あ―――、もう最悪…。)
オレは一人この状況に青ざめている。
バルコニーでは、
すでに他の候補生たちがノート片手に、
授業開始の合図を待つ。
目の前の演習場を見ると、
そこにはアルファ班のライデンシャフトが一列に並んだ。
「よし!!アルファ班、点呼始め!!」
バルコニー中央最前に陣取ったレリウス教官が、
大きなメガホンを口に当て号令をかける。
オレはビビっていることを隠しながら、
昼休みに知り合ったフルム・カンタルと、
サーヤ・ティロ―ロの側に行く。
「あのぉ、質問なんだけど、
あんなんで声届くの…?」
オレはフルムに小声で聞いてみる。
「あ、あれは魔導拡声器といって、
コックピットに直で声が届くのでありますよ。」
「へぇ~。」
「ティターニア君、なんか顔色が悪いですよ。」
サーヤがオレの顔をのぞいてくる。
「そ、そうかな…
あ、ここのところ睡眠不足で…。」
おれは適当な理由を言ってごまかした。
すると、
「お前ら、私の前で私語をするとは、
いい度胸だ。」
レリウス教官の低い声が飛んでくる。
教官の顔は演習場を向いたままピクリともしない。
「「すみませんでしたっ!!!」」
フルムとサーヤは背筋を伸ばし、
速攻で謝る。
オレも、
「す、すみませんでしたっ!!!」
必死で謝る。
(…すげー地獄耳。)
『アルファ班、準備整いました!!!』
管制塔に備え付けられたスピーカーから、
リコ・アフィデリスの声が聞こえてくる。
リコの報告を聞いたレリウス教官は、
「よし、まずは各自出力68%、
そのままの出力を保ち、
格闘戰機動『急襲加速』、
加速中に『魔導砲から近接兵器への兵器換装』、そして『連撃の型』、
そのまま動きを止めず『近接兵器から魔導砲への兵器換装』、
最後に『一斉停止』、
この一連の動きのおさらいだ。」
と指示を出す。
『『『はいっ!!!』』
威勢のいい返事とともに、
演習場に並んだ10機のライデンシャフト《ゼクウ》が、
演習場いっぱいに散らばっていく。
ギュオン!!!ギュオオオオオ!!!
(いよいよ…始まる…)
オレはその瞬間、
自分の高所恐怖症を忘れ、
ライデンシャフトの動きに目を奪われた。
ライデンシャフト《ゼクウ》が等間隔に広がると、
「始めっ!!!」
教官の号令が響く。
ゴゴゴゴゴゴゴ!!!!
演習場内、
候補生達の搭乗する、
10機のライデンシャフト《ゼクウ》が、
いっせいにホバー推進を始め、動き出す。
全機体、徐々にホバー推進の速度を上げる。
10機のライデンシャフト《ゼクウ》は、
円を描くような隊列に変わり、
全機同じ方向に周回を始めた。
周回を重ねるごとに、
さらに速度が上がる。
速度が上がるにつれ、
舞い上がる土ぼこりもおおきくなった。
全体のスピードが最高潮に達すると、
「構え!!」
のリコの掛け声とともに、
全機右機手に持つ魔導砲を構える。
「下ろせ!!」
次の指示で、機体後ろの腰アーマーに収める。
魔導砲を収めるとすぐに、
「構え!!」
次の指示で、
機体左腰アーマーに携行する白刃刀を掴む。
そして、急速周回のスピードをゆるめることなく、
「イィチ!!」
白刃刀を水平に振る、
「二ィ!!」
返す刀でもう一振り、
「サン!!!」
最後に大きく振り下ろした。
《ゼクウ》はそのままのスピードを維持したまま、
「換装!!」
再び白兵刀を魔導砲に持ち替え、
「止まれ!!」
全機一斉に停止した。
全機が一斉に停止したと思った、
その瞬間のできごとだった。
「うわーっ!!吹っ飛んだ――!!」
一機のライデンシャフトが挙動を乱し、
近くのライデンシャフト《ゼクウ》をかすめながら、
大きく吹っ飛んだ。




