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実機授業2

 格納庫の入口に近づくと、

 大声が聞こえてきた。


「A班!!3号機の発進準備遅れとるぞー!!

 声も出とらん!もっと声出さんか!!!」


「「「はい!!!」」」


 格納庫の入口を見ると、ドワーフのような小柄な老教官が、

 何やら発破をかけ続けている。


「戦場では発進準備のわずか数秒が、

 戦局を左右することもあるんじゃぞ!!!

 死ぬ気でテキパキ動けぃ!!!」

 少しでも遅れた班はいつも通り、腕立て、スクワット、腹筋の

 マッスルフルコースの罰じゃ!!!


「「「はい!!!」」」


「さぁ、出撃まであと”238”秒!!!」


 オレはデイニーの後ろを恐る恐るついていく。


 格納庫の中では、整備をする生徒たちが何十人もいて、

 みんなキビキビと動き回っている。


 ライデンシャフトの足元にある固定版を数人がかりで外したり、

 移動梯子に登って機体の最終チェックをしていたり、

 リストを片手にチェック表を読み上げる係もいる。


 その光景に黙って目を光らせているのは、軍学校の教官だ。


 そして、整備班と一緒に巨大なライデンシャフトが、

 オレの視界に入る。


「うわあ…!」


 思わず声がもれる。


 高さ16mほどあるライデンシャフトが、

 格納庫の両脇にズラリと並んでいる。


(きたー!! ライデンシャフト―!!!)

 

 オレはライデンシャフトを見上げながら心の中で叫ぶ。


(…すげー!!…)


 見渡すと、一番奥のライデンシャフトはかなり小さく見える。


 オレは、ライデンシャフト整備用の格納ブロックの間を歩いていく。


(お、これ知ってる! こっちはアインスだっけか…!

 …あれ、この機体は…見たことないな…)

 

 格納庫内には、見たことのない機体も並んでいる。


挿絵(By みてみん)


(こっちのは、シュッとしてかっこいいな…なんかナイトっぽいし…)


 オレがライデンシャフトに見とれていると、


「おいっ!!そこぉぉぉぉ!!!

 何をしている!!!!!」


 レリウス教官の怒声が格納庫内に響く。


「ティターニア!!!

 お前だ!!!早くここへこんか──────!!!」


「!!!!?」


 オレは名前を呼ばれ我に返った。


 声のした方を見ると、

 他の候補生はいつの間にか、格納庫の大型ゲート下に整列している。


「ひっ──────!!!」


 オレは急いで、列に並ぶ。

 教官は、鞭を掌に叩きつけている。


「これから実機授業だぞ、

 ティターニア!!もっと緊張感を持んか!!」


 レリウス教官の言葉が鋭さを増す。


「す、すみません!」


「ふんっ。」


 レリウス教官は厳しい表情を崩さない。


「いいか、訓練とはいえ、

 戦場に出るつもりでいろ!!いいな!!!」


「は…はい…。」


(ご、午前中より迫力が増してる…)

 

 レリウス教官が授業の説明をする。


「今日の実機授業は…地上での白兵戦・格闘起動の教習だ。」


「まずは、前半戦、

 アフィデリス、クラヴィッツ兄弟、バッケンハイム……他etc。

 以上10名をアルファ班とし、

 実機授業に臨め。」


 その他の者は、ベータ班だ、

 前半戦はアルファ班のバックアップに回れ。」


「「「はいっ!!!」」」


「よし、出撃まで残り132秒」

「では、アルファ班は稼働準備に入れ! ベータ班は、管制塔だ!」


「「「はいっ!!!」」」


 候補生達はレリウス教官の指示に返事をすると、

 一斉に早足で動き出す。


 アルファ班の候補生達は機体に向かい、

 ベータ班の候補生たちは倉庫の外へ出る。


 取り残されるオレ。


「あの…自分は…」

「おまえは授業を把握するまでの間、見学だ。」

「…わかりました。」


(今日は見学か…、はぁ…、よかった。

 リゼルもいないし、上手くやれる気がしなかったんだよな。)


 オレはレリウス教官の見学の指示にホッとする。


(じゃあ、わざわざこいつを着る必要もなかったな。)

 オレはぶかぶかの訓練着を見る。

 

 オレが顔を上げると、

 リコやデイニー、他の候補生達がそれぞれの機体の下に立っていた。


 そして、それぞれが片腕を、

 自分の頭上の機体に向かって伸ばす。


 すると、候補生の体が、

 機体のコックピットに向かって引っ張り上げられていった。


「おおっ!!?」


(…飛んだ…? 

 ま、魔法か!?)


 それから、候補生達は、

 開いていたコックピットにそのまま乗り込む。


 するとすぐに、


 ドゥゥゥン!!! ドゥゥゥン!!! ドゥゥゥン!!!


 格納庫内にルーンリアクターの低い起動音が響き、

 機体が淡く光りだす。


 格納庫内、10機のライデンシャフトが鳴動し、

 地響きが起こる。


(──────!!!)


 オレはその光景を呆然とみつめる。


 ビ──────!!!ビ──────!!!ビ──────!!!


『ライデンシャフト出撃60秒前!!!

 格納庫内の各員、これよりレッドラインの内側から退避してください!!!

 繰り返します、格納庫内の…!!!』


『おめえら(整備訓練生)!

 15秒の最小間隔発進だ!!

 一秒たりとも遅れんじゃねえぞ!!』


『ルーンリアクター内圧上昇…80…90…』

『動力安定…! 稼働状態へ移行します!』

『各駆動系、各スラスター異常なし!!」

『…フライトシステム、ドライブオン!』


『カタパルト班!いけんのか!!』

『第壱カタパルトから第参カタパルトまで、射出準備完了!!』


『13号機!いつでもいけます!!』

『17号機!スタンバイ完了!!』

『11号機!問題ありません!!』


(すげー緊迫感!!)


 オレは格納庫内の様子に一人興奮する。


 すると、そんなオレに向かって、


「そこのボウズ、そんな所に突っ立って何やってんだ!!

 踏み潰されてぇのか!!」


 整備の老教官から、大声が飛ぶ。


「早くここから離れな!!」

「は、はい。」


 オレはあわててレッドラインの内側に走る。


「ティターニア!!!」


 今度はレリウス教官の怒声だ。


「貴様!!まったく何をしている!!!」


「…えっ、あ」


「行くぞ!!!」


 教官はオレを見つけるなり、

 オレのえり首を鷲掴みする。


 そして、オレはそのまま教官に引きずられながら格納庫を出た。


 ゴゴゴゴゴゴゴ!!!ドオオオオオオン!!!


 外に出たオレの目の前を、

 巨大なライデンシャフトが、

 土ぼこりを巻き上げ飛び立った。

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