魔法少女はロボットがお好き!?2
(はぁ…、もうこうなったら、
何かしゃべろう。)
オレは、とりあえず
気づいたことを口にしてみる。
「あ、あのぉ…、
大好きなんですね、
ライデンシャフト。」
言うだけ言って、
女の子の反応を待った。
(……………。)
「………そうなんだよね、
ボク大好きなんだ、この子たちが。」
女の子はなんだか照れている様子だ。
(照れる姿も……、
超…カワイイ!)
オレはライデンシャフトそっちのけで、
女の子に釘付けになった。
そんなオレに対し、
「ねえねえ!!
君はメトシェラシリーズで好きな機体はある?
ボクはねー……、
フルアーマー・メトシェラだな~!」
さらにテンションを上げ、
うれしそうに話し始めると、
話は、初代メトシェラから、
現在の最新機まで延々と続くことに…。
どうやら、オレの一言が、
彼女のライデンシャフト愛スイッチを
オンにしてしまったようだ。
「ちなみに…〇▷×…、
×〇……▷…〇×………、
α…β…それから……γ…θ…、
メトシェラMK・Vは、
実戦に投入されなかった幻の機体なんだ、
それでね、あとさ…◎×△……で……。」
(あぁ…、オレ絶対ミスったわ…。)
その解説は、
ほとんどリゼルのそれと変わらなかった。
しかし、こうなってしまった以上、
オレは付き合うしかなかった。
(ま、まぁ……、
楽しそうにしゃべってるみたいだし…、
よ、良しとしよう…。)
オレは内心デレデレで、
自分に言い聞かせた。
そんな中、女の子の話は続く。
「そんなこともあって…Σ@%…、
…\…#…℄£……、
…@…Φ…τ……、
メトシェラにはすごく思い入れがあってさ、
まあ、今では第3世代型のブルージュシリーズの登場で、
ほとんど実戦配備されなくなっちゃったんだ…。」
急に女の子は、
寂しそうな表情でオレを見つめた。
「………。」「………。」
二人の間に、
再び沈黙が訪れる。
(…オレ…また感想求められてる!?
今度はやばい!!
話…ちゃんと聞いてなかった…。)
女の子は無言のまま、
じーっとオレを見つめる。
「………。」
────<女の子の心の声>────
(この少年、ちっちゃい学生君だと思ってたけど…、
この子の制服よく見たら、
パイロット候補生のじゃん。
だけど、それにしちゃ幼すぎるような気もするけど…。)
────────────────────────────────
(あ、あのー……、
そんなに見つめられると、
照れるんですけど。
いやいや、そんなことより、
なんて答えよ………。
今さら『聞いてませんでした。』
とは言えないしなぁ。)
オレは必死に笑顔を作って、
その場をしのぐ。
沈黙を破ったのは、
女の子だった。
「ねぇ、君って、
パイロット候補生なの?」
「…え!?」
それはオレにとって、
予想外の質問だった。
(い、いきなりどうしたんだろ、
そりゃ…パイロット候補生の制服着てるし、
実際その予定なんですけど…。)
オレはいきなりの質問に、
うまく言葉を見つけられず、
「あ……、はい…一応…。
そ、そうです。」
かたことの返答になった。
(ま。まぁ、良かったのかな、
答えられる質問で。)
「やっぱりそうだよねその制服!」
女の子は急に姿勢を正した。
「あらためまして、
パイロット候補生君!
自己紹介がまだだったね。
”ボク”は、第六王国軍所属
”ウィズニック”の、
ミルファ・ダリオン魔導少佐です。
君、名前は??」
「ウィズニック???」
オレは聞きなれない単語に、
つい反応してしまう。
(あ”っー!!)
「うん…”ウィズニック”だけど…?」
(…余計な事、言っちゃった…。)
「あっ…あぁああぁ、
ミルファさんは、
”ウィズニック”なんですか…、
自分は、リゼ…」
「ちょっと待って!!
なーんか引っかかるんだけど?」
「え…いやぁ…そ、そうですか…。」
(ど、どうしよう…。)
オレは今さらだけど、
出来るだけ平静を装った。
「じゃあ聞くけど、
ウィズニックが何なのか、
パイロット候補生なら、
もちろん知ってるよね。」
「……えっ……!」
「答えられないの?」
「あ…あは…あははは。」
オレはもう笑ってごまかすしかなかった。
「ホントに君……、
パイロット候補生!?」
ミルファはオレの自己紹介を途中で遮り、
途中から疑いの目をオレに向ける。
(ギ、ギク────ッ!?)
「……え、えーと……、
ウィズニックですよね……、
も、もちろんそれは……。」
オレはそこで言葉に詰まった。
ミルファ少佐は、
さっきより厳しい目つきで、
ジーっとオレを見つめる。
「やっぱり…怪しい。」
「……………。」
オレは泣きたい気持ちで、
不自然な笑顔を作り続ける。
(リゼル!!
なんでこういう時に、
いないんだよ────!!)
「う────ん……。」
「あははは……。」
オレは早く時が過ぎ去るのを、
ひたすら待つしかなかった。
「………。」
「………。」
体中から汗が噴き出し、
ノドはカラカラだ。
(神様!!
お願いします、
転生のことだけは、
どうかバレませんように!!)
オレはもう祈るしかなかった。
「…………。」
すると突然、
「あ────っ!?
なっるほどー!!」
ミルファは大きな声をだして、
うなずいた。
一人で勝手に何かを納得した様子だった。
「その制服…、
家族に作ってもらったんでしょ!!」
「えっ……?」
「気持ちわっかるなー、
パイロットかっこいいもんね。
候補生にしちゃあさ、
幼すぎると思ったんだよね。」
「は、はぁ…。」
(オレ、コスプレしてると思われたのか…、
と、とりあえず、助かったぁ。)
「じゃあ、せっかくだから教えてあげるよ。
リンドブルムに憧れる少年君!」
ここでオレは、ミルファ少佐から、
ライデンシャフトの基礎的な講義を、
受けることになる。
「ライデンシャフトが、
魔導融合炉
を動力源にして動いるってのは、
さすがに知ってるよね?」
「は、はい。」
(確か……、
そんなことをリゼルから聞いたっけ。)
「その魔導融合炉は、
大まかに説明すると、
魔法、魔力を使うことでしか、
整備はできないんだ。」
「そ、そうなんですか。」
「そうなんだ、それでね、
ライデンシャフトの整備なんだけど、
これは大きく二つに分けられてて、
一つは、《ルーンリアクター》を主に整備する部門、
これを担当するのが魔導技術士、
通称”ウィズニック”
もう一つが、
《ルーンリアクター》以外の機械部分を整備する部門、
こっちは普通に整備士、
整備兵とかメカニックて呼ばれてる、
っていうのが基礎知識。」
(魔法…を使う…ってことは…。)
オレは疑問をそのまま口にする。
「あの……、
魔導技術士”ウィズニック”は、
魔法使いってことですか?」
「うん、そうだよ。」
(ということは……、
オレの目の前にいる、
このミルファっていう女の子は……、
……魔法少女!!!)
オレの頭に閃光が走った。
(キタ────────────!!!
そうそうこれだよ!!!
これぞ異世界!!
本物の魔法使いのお出ましだ!!!
オレはこういう王道の異世界ファンタジーを、
待ってたんだよ!!!)
オレは一人でガッツポーズをとった。
興奮したオレは、
「ミルファさん、
魔導技術士”ウィズニック”ってことは、
もちろん魔法が使えるんですよね?」
「う、う…ん、使えるけど…。」
「じゃ、じゃあ、
何か魔法見せてくれませんか!」
自分でも驚くような、
厚かましいお願いを口にしていた。
「えーっ!?」
オレの唐突なお願いに、
ミルファ少佐の表情がくもる。
(あれ、オレなんかまずいこと頼んじゃったのかな…。)
「魔法…見たいの…?」
「はい!見たいです!!」
(異世界に来たんだから、
やっぱり魔法は外せないよな~。)
「ホントに、見たいの…?」
ミルファ少佐は気乗りしないみたいだ。
(あっ、そうだ!)
オレはかまわずに話を勝手に進める。
「あの、せっかく見せてくれるんなら…、
その魔法…オレにかけてくれませんか。」
<!?>
オレの立て続けのお願いに、
ミルファは完全に困った様子だ。
「うーん、いきなりそう言われてもなぁ……。
公共の場での魔法の使用か…、
一応制限されてるんだけどなぁ…。」
「えっ!?
そ、そうなんですか。」
「君そんなことも知らないの?」
「あ、あははははは、
…ええ…まあ…。」
ミルファ少佐は少し考えていたようだが、
「まっ、せっかくのリクエストだし、
断るのも面白くないし、
じゃあ!見せてあげる!!」
あっさり引き受けてくれた。
そして、真剣な表情になると、
空中に両手をかざし、
両手の指をくるくると動かしだした。
よく見ると、彼女の指の先には、
魔法陣のようなものが浮かんでいて、
それらはパッと浮かんでは、
すぐに空中へ消えた。
「────!?」
すると、オレの足はいきなり地面から離れ、
オレの体は空中へ放り出された。
「あわわ、わ、わわっ────────!!!」
さらに空中でタテ回転ヨコ回転と、
ぐるぐる回る。
「う、うわわわわ────。」
(ちょ、ちょっとちょっとぉお!!
ここまでやるなんて
”聞いてないよ────!!!”)
オレは心の中で叫んだ。
地上のミルファを見ると、
「こんなもんかな。」
ミルファはゆっくり指を動かしていた。
いきなり回転が止まり、
「あ”────────っ」
ドン!!!
オレは石畳の地面に勢いよく落っこちた。
「いってー、て、て…」




