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動き出す思惑3

 ───その夜・王都・商業地区・とある酒場───


 酒場が集う王都・商業地区の一画は、

 日が暮れるにつれて、

 一日の疲れを癒そうと、 

 酔いを求め、職人や商人、様々な人々で賑わいを見せた。


 そんな夜の街に、

 王国軍・青年准将マズロー・シャゴールの姿があった。


 マズローは古びた酒場のドア開けると、

 酔っ払いたちをかき分け店の奥に進んだ。


 店の奥では妖艶な女性がキセルをふかしている。


 どうやらその女が店の主らしかった。


 そう思ったマズローは女性に向け軽く会釈をする。


 女主人はマズローに気づくと、

 近づいてきた。


 そして、マズローの顔をしっかり確かめると、

 ゆっくりと手を差し出した、

 その動きには大人の女性がまとう艶やかさがあった。


 マズローは緊張しつつ女性の手に、

 今は使われていない古いコインを置いた。


 女主人はそのコインを念入りに確認し、

 本物とわかるとマズローに笑顔を向け、

 店奥にある個室へ、マズローを案内した。


 そこに、王国軍中将サンダース・ヒルの姿があった。


「昨日から、色々と苦労をかけたな。」


 サンダースは、空のグラスを自分の前の席に置く。


「厳戒態勢が続く中、

 こんな場所に呼び出すとは、

 将軍も相変わらずで。」


「本部は何かと窮屈でな。

 …ま、座らんか。」


 そう言うと、サンダースは空のグラスに酒を注いだ。


 マズローはサンダースと向き合うように座った。


 しかし、差し出された酒に手をつける様子もなく、

 ただまっすぐとサンダースを見つめた。


「どうした、飲まぬのか。」


 サンダースはマズローにかまうことなく、

 自分のグラスに口をつけた。


「この後、本部へ戻らなければなりませんので。」


 マズローは先ほどの女主人に水を注文した。


「そうか…。」


 サンダースはマズローのグラスを自分の元へ置いた。


 マズローはその様子を見ながら、


「例の少年ですが、

 アーノルド及びビムと一緒に、

 無事王都を脱出し、

 アルレオンへ向かっているとのことです。」


 淡々と報告を進めた。


「さすがの仕事ぶりだな、

 助かった。」


 サンダースは安堵の表情を見せた。


「そのお言葉、是非脱出作戦に関わった者たち全てへ、

 直接お伝え下い。

 私は人の手配をしたにすぎません。」


「そう謙遜するな、

 お前が信頼できる者たちを、

 集めてくれたからこそだ。」


「しかし、完璧とは言えません。」


「何かしくじったのか?」


「アルレオンへの入行証が間に合いませんでした。

 急ぎ手配させたのですが、

 本部での承認手続きに邪魔が入ったもようです。」


「ふむ…、誰の仕業か大方想像はつく。

 まぁ、アルレオンに到着さえすれば、

 奴らといえど簡単に手出しは出来ん、

 そこは何とか乗り切ってもらうしかあるまい。」


「だと良いのですが。」


「そう心配するな、

 それと、入行証の件、

 わしが何とかする。」


「ありがとうございます。」


「礼など要らぬ、

 元々わしの頼み事だ。

 礼をせねばならぬのは、

 わしのほうだ。」


「では、やはり将軍の口から、

 脱出作戦に関わった者たちへ、

 直接感謝の言葉をお伝えください、

 そのほうが、奴らも喜びます。」


「……その話だがな……、

 直接その者たちへ、

 謝辞を伝えることはできそうにない。」


「どういうことです?」


「そうか、まだ聞いておらぬか。」


「異動ですか。」


「なんだ、知っておるではないか。」


「いえ、そうではないかと、

 推察しただけです。」


「まぁ、実のところは左遷だ。

 今回の襲撃騒動の責任を取る形で、

 わしや、アーツライト提督は中央から去る。」


「…そうでしたか。」


「そこでだ、中央に残るお主に、

 王家や軍上層部の動向に目を光らせてもらいたい。」


 マズローの表情が一気に変わる。


「私に将軍の目、耳になれと!?」


「そうだ、不服か?」


「ええ、不服です。」


「はっはっはっ、

 はっきり言われてしまったな。」


「このような場なので、

 遠慮なく言わせていただきます。」


「そうだな、このような話は、

 本部ではそうそう出来んからな。」


「将軍の後ろ盾があってこそ、

 動けた部分も大きいのです、

 自分だけではどこまで出来るか…。」


「それは私も承知している。」


「でしたら、尚更私一人での情報収集が、

 いかに難しいか、お判りいただけるかと。」


 マズローは真剣な面持ちでサンダースを見つめた。


「それでも、やってもらわねばならぬのだ。」


 サンダースは言いながら、

 もう一つのグラスの酒を一気に飲み干した。


「一連の事件だがな、

 わしらが考えるよりも、

 ことは大ごととなるかもしれん…。」


 そして、サンダースは自分の掴んだ情報を、

 マズローに伝え始めた。




───────────────

”アン・ベルディアの奇跡″

サンダース・ヒル中将

挿絵(By みてみん)

第二次聖神機戦争時代、魔導騎兵パイロットとして従軍

天才的な指揮能力を発揮する平民出身にして中将の座にまで上り詰めた傑物




”慧眼のマズロー”

マズロー・シャゴール

挿絵(By みてみん)

”慧眼”という特殊能力を持つ

その能力による危機察知力と聡明さで若くして准将となった俊才

サンダースの元部下



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