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総合演習試験1

──────────兵舎の一室・試験二日目・朝──────────

 

 オレは大きな時計台の立つ、

 広場に立っていた。


「………?」


 ここがどこなのか、

 なぜここに立っているのか、

 オレは理由がわからなかった。


オ────────────!!!ワ────────────!!!


 オレは声があがった方角を向いた。


 広場の一画が騒がしく、

 人だかりができていた。


 オレは人だかりに近づくが、

 大人たちが邪魔で、その先は見えなかった。


 オレは小さな体を生かし、

 群衆をかきわけ、最前列へもぐりこんだ。


 すると、オレの目の前に、

 簡素な木製の舞台とともに、

 異様な光景が現れた。


 舞台に置かれた特殊な台から、

 人間の二つの手と頭が水平に突き出ている。


 その人の頭には麻袋がかぶせられ、

 顔は判別できなかった。 


 その傍らで、覆面をかぶった大男が、

 大剣を頭上に構えている。


キャ──────────!!!オ──────────!!!ワ──────────!!!


 群衆からは、喝采とも悲鳴とも取れる、

 声があがる。


ドスン!!!


 大剣が振り下ろされた。


 台から突き出た人間の頭が切り落とされた。


 頭は台の下に備え付けられた籠から飛び出し、

 舞台上を転がり地面に落ちた。


キャ──────────!!!ギャ──────────!!!ワ──────────!!!


 群衆からひと際大きな悲鳴があがる。

 

 切り離された頭は、

 ちょうどオレの足元へ転がってきた。


 頭は、オレの元に転がると、

 麻袋がずれ、その顔がはっきり見えた。


 オレはその顔を見てギョッとした。


 その顔は、”リゼル・ティターニア”、

 今のオレだったのだ。



「わ──────────っ!!!」


 オレは、そこで目を覚ました。


「はぁ、はぁ、はぁ。」




 試験二日目の朝、

 最悪な目覚め方だった。


 オレは、目を閉じて、

 しばらくベッドで横になった。


「起床──────────!!!」


 いつものように、時間がくると、

 アーノルド軍曹のバカでかい号令が

 宿舎に響いた。


 オレは、のそのそとベッドから起き上がり、

 用を足し、洗面所で顔を洗った。


 そして、重い気分のまま身支度をした。


 その後、用意された朝飯を食べた。


 食べている最中、

 今朝見た夢の内容が、

 頭から離れなかった。


 ふと、オレは机に置いた、

 リゼルの日記に目をやった。


 そして、そのまま、

 昨晩のリゼルとのやり取りを思い返した。


「…………。」


 なおさら気分は重く沈んだ。


 オレの何気ない一言がきっかけで、

 リゼルは抑えていた気持ちを、

 爆発させた。


「…………。」


 オレにだって言い分はあった。


 トラブル続きの異世界生活。


 死刑にされそうになるし、

 とんでもない課題を受けるはめになるし。


 リゼルはいつだって上から目線で、

 オレに敬意のかけらも持ち合わせていない。



(…オレは…悪くない…。)



 オレは自分にそう言い聞かせ

 ニ日目の試験に向かった。


 その日の朝、オレは、

 リゼルに声をかけなかった。







お読みいただきありがとうございます。

ブックマーク、評価していただき誠にありがとうございます(*'ω'*)

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