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再会

───フィレリア王国・王都グレミア・

王国軍・中央基地本部・外れにある古い宿舎───


 オレ(リゼル・ティターニア=ヒビノ・タツヤ)

 の生死が懸かった軍紀裁判は突如中断となり、

 その後、オレは古びた宿舎に連行された。


 そこでオレは、

 本来の身体の持ち主リゼル・ティターニア少年と、

 古ぼけた本(リゼルの日記)を介して頭の中で再会する。


(リゼルくん…、

 これ…、いったいどうなってんの?)


 オレは、日記に挟んであったリゼルの写真を見ながら、

 この状況で生まれた素朴な疑問を、

 そのまま、意識の中のリゼルへぶつけた。


<うーん…、

 どうって聞かれても、

 僕もよくわかんない。)


 リゼルはオレの質問に、

 少し困っているようだった。


(そうか…、

 リゼルもわかんないのか。

 だけどさ、これって何かこう、

 不思議な力が…、)


<あ、これはきっと魔法のチカラ。>


 リゼルはあっさり答えた。


(魔法のチカラって…、

 わかってんじゃん。)


<だって、他にかんがえられないもん。

 だけど、前にも言ったけど、

 僕魔法使えないから、

 なんでこんな事になってるか、

 それはよくわかんない。>


 リゼルはきっぱり言い切った。


(うーん、この状況について、

 結局わかった事は、

 よくわからないって事だけか…。)


 オレはぼんやりと、

 天井を見つめた。


<そうだ、

 タツヤと一緒に、

 帝国軍と戦ったことまでは覚えてるよ。>


(それは覚えてるんだ、

 その後は?)


<その後……?

 その後が今なんじゃないの…?>


(え……!?)


 オレとリゼルには、

 時間の流れに大きな違いがあるようだ。


(あの後、いろんなことがあって、

 すげー大変だったんだから。)


 オレは、リゼルと分かれてから、

 ここに至るまでの経緯を大まかに伝えた。


<え────────────!!!!!>


 リゼルはめちゃくちゃ驚いた。

 

 軍事裁判で死刑になりそうになった事や、

 その裁判が”王室預かり”となった事、

 オレたちが生き延びるための条件や、

 特別試験の事、どれもが、

 リゼルにとって信じられない出来事だったようだ。


(驚くだろ、それに落ち込むよ、

 オレたちあんなに頑張ったのに、

 …褒められるどころか、

 死刑になっちゃうなんて。)


<……やっぱり。>


(や、やっぱり!!

 って、もしかして、

 こうなるのわかってたの!?)


<あ、いや、その…、

 僕たちが乗ったら、

 まずいことになるかなー、

 ってぐらいだけど…。>


 リゼルは珍しく、

 オドオドした感じで答えた。


(まずいなんてもんじゃないよ!!

 まったく…。)


<ご、ごめん。>


 リゼルがはじめて、

 オレに謝った。


(ま、まぁ、とりあえず、

 死刑は延期というか、

 無くなるかもしれないんで、

 今は、パイロットになることが、

 オレたちの課題だよ。)


 オレは、話題を変えた。


(やっぱりそれホントなの!?

 僕たちパイロットになれるかもしれないの!?

 すごいよすごい!!>


(ま、まぁ、リゼルが喜ぶのはわかるけどさ、

 現実は厳しいよ…。

 だって一年以内に、帝国軍機を100機撃墜しないと、

 オレたち死刑に逆戻り…。)


<もー!!そんなに暗くならないでよ!

 どんな条件でもさ、僕たち、

 パイロットになれるかもしれないんだよ!!

 これってホントにすごいことなんだから!!>


(そ…そう言われてもなぁ。)


<とにかく全力でガンバろ!!>


(う、うん。)


 オレは渋々うなずいた。


<あと、お願いがあるんだ。

 これからはタツヤが、

 僕に代わって日記書いてよ。>


(えっ…だってこうやってリゼルと話ができるんだから、

 書かなくてもいいじゃん。)


 オレは正直面倒くさいと思って、

 きちんと答えなかった。


<僕にはもう書けないんだから。

 とにかく、タツヤが僕に代わって、

 日記を書いてよ!>


(……ま、それはいったん置いといて、

 今日は色々、ありすぎて…、

 もう疲れました……、

 自分はもう寝ます…。)


 オレはそう言うと、

 ベッドにゴロンと寝そべった。


<じゃあ、明日から、

 ちゃんと日記書いてよ!>


 リゼルの言葉を聞き終わらないうちに、

 オレは古ぼけた本(リゼルの日記)を枕元に置いた。


 すると、オレの中からリゼルが消えた。


(そうか…、

 日記に触れている時だけ、

 リゼルと話せるんだ。)


 オレはあらためて、

 不思議な日記を見つめた。


(はぁ、今日はホントに疲れた…、

 もう寝よう…。)


 オレはそのまま目を閉じた。


(あ!!!

 まだオムルじいちゃんに、

 手紙書いてない…。)


 しかし、オレは起き上がらなかった。


(手紙は…、明日にしよう、

 内容はリゼルに考えてもらえばいいし。)


「消灯────────!!」


 ドアの外から、

 アーノルド軍曹の号令が聞こえてきた。


 その後すぐに、部屋の電気が消えた。


 オレは眠りに落ちた。







───次の日───


 翌朝。


「起床────────!!」

 

 アーノルド軍曹のバカでかい号令で、

 オレは目を覚ました。


(う……うるさいなー……。)

 

 その後すぐに朝食が支給された。

 

(えーと、パンに……、ミルク……、

 それから、妙なチーズひとかけらと、

 変な形の野菜のサラダ………。

 これだけ…。)


 オレは、朝飯を済ませ、

 またベッドに横になった。


「はー…試験まで、

 ずっと、ここに閉じ込められたままか……。」


 とは言ったものの、

 好きなだけベッドでゴロゴロできて、

 思いのほか快適だった。

 

 オレは、机に置いた日記を手に取る。


 この日記のおかげで、

 またリゼルと話せるようになったのだ。


(リゼル、おはよう。)


<タツヤ、おはよう!>


 オレはこれからの事を、

 リゼルと話し合うつもりだった。


 ところが、 


<ねぇタツヤ、

 アーノルド軍曹がこの日記を手にしたら、

 どうなるんだろ?>


 リゼルがおかしなことを言いだした。


(や、やめたほうがいいと思うけど…。

 それに、日記読まれるの嫌がってたじゃん。)


<そりゃあ…恥ずかしいけど、

 どうなるのか気になったんだもん。>


(わざわざこっちから問題起こさなくてもいい気が…。)


<タツヤってさ…つまんないんだね。>


(そ……そこまで言うんなら、

 …やってみれば。

 そのかわり、どうなってもオレ知らない。)


 オレは気が進まない中、

 内側からドアを叩いた。


ゴンゴンゴン


「どうした?」


 外にいるアーノルド軍曹が、

 素早く反応した。


「あの、お願いがあるんですけど、

 ドア開けてもらっていいですか?」


「内容によっては応えるわけにはいかん。」


 軍曹はぶっきらぼうに訊ねてくる。


「あ、いえ…ただ、読んでいただきたい”モノ”が、

 ありまして…。」


「…………」


 軍曹から返事はなかったが、


ギィィィ


 ドアが開いた。


 扉の外では、アーノルド軍曹が、

 不思議そうにオレを見ていた。


「読んでもらいたいモノとは?」


「あの、これです…。」


 オレはリゼルの日記を差し出した。


 軍曹は日記を手に取り、

 パラパラと中を読む。


「こ、これは…。」


 アーノルド軍曹は、固まった。


「お前の日記……か。」


 アーノルド軍曹は、

 困惑の表情を浮かべる。


「…す、すみません、

 失礼しました!!」


 オレは、日記を軍曹の手から奪い取ると、

 急いでドアを閉めた。


(はぁはぁ…、

 で、どうだった?)


<僕の声が聞こえるのは、

 タツヤだけみたい。>


(これで気が済んだ?)


<うん!>


 オレは、日記を持ったまま、

 ベッドで横になった。


「はぁ~、いつまでも、

 こうやってゴロゴロしてたいな~。」

 

 オレはそう言いながら、

 顔を枕にうずめた。

 

<まだゴロゴロとか言ってんの、

 試験まで一週間しかないんだよ!!>


(そんなに慌てなくても、

 大丈夫だって!

 あの時みたいに操縦すればいいんだから、

 せっかくのんびりできるんだし、

 ゆっくりしようよ。)


<ねぇ、試験って、何やるか聞いてるの?>


(…………。)


 オレは思う存分布団の感触を楽しんでいる。


<ねえったら!!>


(あ、はいはい、

 えーと…、

 一応聞いたけど、

 何だったかな…。)


<ちょっとぉ!しっかりしてよ!!>


 オレは起き上がり、

 机の上にあるメモを読んだ。


(えーと試験は、

 ライデンシャフト操作試験と、

 学科試験があるってさ。)


<操作試験と学科試験か…、

 ライデンシャフトの操作に関しては、

 タツヤだったら、

 いい成績が残せると思うけど…。>


(最後の”けど”ってのは、

 どういうこと?)


 オレはリゼルの言い方に、

 食いついた。


<学科試験!!

 大丈夫?

 王国軍の、

 それもパイロットの試験だから、

 相当難しいはずだよ。>


(そ、そうなのか、

 難しいのか…。 

 一応オレ、受験戦争は、

 そこそこの成績だったんだけどな、

 中堅私立ぐらいの学力じゃ足りないかな…。)


<何言ってるか、

 よくわかんない!!>


(あ、ごめんごめん、独り言。

 オレこの世界の事ほとんど知らないし…、

 頼りはリゼルの知識次第だな。)


<…僕もそれなりに勉強はしてたけど、

 受験用の勉強なんてまだしてないよ。>


(う…、オレ…大丈夫かな…?)


 オレは急に不安になった。


<だから、少しでも勉強したほうがいいって!>


(わ、わかった。)


 オレは、いったん、

 リゼルの日記から手を放し、

 部屋に置いてある本を確認した。


 まず黒い辞典を手に取った。


(軍紀全書……六法全書の軍隊版?

 まあ、軍隊だし当然か。)


 今度は濃紺の分厚い本。


(聖神の書……。

 この世界の宗教関係の本か…、

 これも試験に出るかな…?)


 数枚の紙をただ紐でしばった、

 レポートのようなものもある。


(ピルメットケーキの作り方…?

 ピルメット…って何だ?

 何々、ピルメットの実を使ったケーキ……。

 どんな味だろ……、

 ……何でこんな本がここに…?

 これも試験にでるのか…?)


 それ以外にも、机にはたくさんの書物が、

 置かれていた。

 

 その日から、オレとリゼルの試験勉強が始まった。














読んでいただき本当にありがとうございます。


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[一言] ピルメットケーキの作り方… 怪しい…実は何かの暗号で賢者の石とか作るレシピなんじゃ(邪推
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