オレの戦闘3
オレは、追いかけてくる敵へ、
機体の上半身をひねり、
魔導砲を向ける。
<タツヤ、狙いは、
首周りか、脇腹の部分。
そこなら装甲が薄いから、一撃で、
ルーン・リアクターを打ち抜ける!>
(えっ!? 打ち抜ける…!?、
そしたら、パイロットは…?
機体だって爆発しちゃうんじゃ…!?)
<!?…た…確かに、そうだけど…、
今、そんなこと言っても、
タツヤがやらなきゃ、
王国軍がやられちゃうんだ!!>
(うっ………。)
王国軍がやられるの言葉に、
オレは何も言い返せなかった。
ドシュッ!!!ドシュン!!!
そんな中、敵先頭を飛ぶ片腕の機体が、
オレたちめがけ砲撃を放ってくる。
「おわわっ!!
ホントしつこいなー!!!」
<タツヤもっと真剣にやってよ!!>
「はいはい!!
わかってますって!!」
<こっちの魔導砲は7発!!
もうこれ以上のチャージできないからね!!>
「そういや、
乗る前にそんな事言ってたっけ…。
ふぅ…、全弾当てたとしても、
2機残るじゃん。
外したら、外した分だけ不利になるか…。」
オレは、メインモニターに、
射撃照準線を表示させ、
その照準線に敵ガタカⅡを合わせる。
(あっ…、もう!
ちょこまかと…、
照準がなかなか…。)
「こんなのどうやって合わせんだよ!!」
オレはイライラを口に出さずにはいられない。
ドシュン!!!
相変わらず、
片腕の帝国機はしつこく撃ってくる。
オレは自分の気持ちを整理するため、
「ふぅ…、これから反撃しますけど、
お互い、恨みっこ無しでお願いします!!」
大声で独り言を叫んだ。
<タ…タツヤ……。>
「わかってるって!!
戦争なのは。
ただ、一応断っておこうと思って、
敵には聞こえてなくてもさ…。
ただ、この照準線って…、
相手に…、なかなか…。)
オレは、話題を照準線に戻して、
そのままメインモニターを凝視する。
すると…、
(な、な、な、何だ……!?
左目が、…熱い!!!)
バンダナ越しに左目をさわると、
異常な熱さになっている。
オレは、眼帯代わりにした、
グレアム少佐のバンダナをズラす。
そこには、あるはずのない左目があった。
「何だこれっ!?」
(…目の中に模様が見える!?)
失ったはずの左目に、
不思議な模様が映っている。
「ど、どうなってんだ!?」
<タツヤどうしたの!?>
「…左目に何か映ってんだ…。」
<左目に!?
僕には何も見えないよ…。>
ドシュッ!!!ドシュン!!!
気がつけば、
帝国軍がかなり近くまで迫っている。
<タツヤ!!
早くしないと、
敵はすぐそこまで来てる!!>
「言われなくてもわかってます!!」
オレは魔導砲のトリガーに手をかけ、
タイミングを計る。
(…頼む…当たってくれよ…。)
オレは相手の弱点を狙い、
機体を激しく動かす。
「うぐぐぅうう……。」
激しく動き続ける中、
左目の模様と、
敵機がバッチリ重なった。
「!!!」
オレはトリガーを引く。
ギュオオオオオン!!!
ブルージュ・ZWEIの放つ閃光が、
帝国軍ガタカⅡを射抜く。
ドゴオオオオオオオ!!!
<やったー!!!>
(あ、あたった…。)
オレは、操作パネルに手を伸ばし、
メインモニターの照準線表示を消した。
<何してんの!!
大事な照準線消しちゃって!!>
「大丈夫!!」
オレは深呼吸をして、
操縦桿を握りなおした。
オレは敵の弱点を射抜くため、
ライデンシャフトをそれまでよりも、
さらに激しく飛ばす。
「うぐううううぅ……」
そして、魔導砲のトリガーを引いた。
ただ左目を信じて。
ズシュュュュン!!!
魔導砲から放たれた閃光が、
再び敵ガタカⅡの装甲を射抜く。
ドゴオオオオオオ!!!
オレは、続けざま、
2機のガタカⅡを撃ち落とした。
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「ヴァンツ!!ルゾ!!」
レインは叫んだ。
帝国軍・第五機甲師団・78特殊機甲隊に衝撃が走る。
「……嘘…だろ……。」
「乱数回避機動をとっていたのにか…。」
「…た…たった2発で…!?」
瞬く間に2機、
レインの目の前で部下機が撃ち落とされた。
その光景は、
レインにとって悪夢そのものだった。
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調子に乗ったオレは、
さらに魔導砲を放つ。
ズシュン!!!
ドゴオオオオオオオオ!!!
<当たったー!>
(………………。)
続けて、もう一撃。
ズシュン!!!
ドゴオオオオオオオオ
<また当たったー!!>
(………………。)
全弾命中、完璧な成果を、
無邪気に喜ぶリゼル。
オレは黙々と機体操作に専念した。
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「ウ…ウソ…だ……。」「バケモノだ――!!」「や…やめろー!!!」
帝国軍パイロットは平静さを失い、
その影響は機体の動きにはっきりと表れた。
帝国軍は完全に統制を失った。
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明らかに動きを乱した≪ガタカⅡ≫に対し、
オレは、黙ってトリガーを引き続ける。
ドシュッ!!!ドシュン!!!ドシュン!!!
あっという間に、さらに3機を撃墜した。
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帝国軍士官ビシス・レインは、
仲間の機体を次々と撃ち落とす、
王国軍ライデンシャフトを呆然と眺めた。
「こ…こんな…はずでは…。」
────戦闘の数日前、帝国領・前線基地ダントン────
レインは、前日ダントン基地へ配備された、
帝国軍主力ライデンシャフト≪ガタカⅡ≫の前に、
部下たちを集めた。
つり目の男性隊員が、
「中尉、全員揃いました!」
軍人らしく鋭い声で告げた。
「うむ。」
レインは軽く返した。
今度は、黒髪の女性隊員が、
「我らを格納庫に集めて、
いったいどのような用件でしょうか?」
口を開いた。
「お前らに見せたいものがあってな。」
レインは表情を変えず答える。
「見せたいもの…ですか。」
黒髪の隊員が聞く。
「そうだ。」
「ここには、
前日運ばれた≪ガタカⅡ≫しかありませんよ。」
「そうだ。」
「………」
レインの意図が分からず、
隊員たちは互いに顔を見合わせる。
「ここに並ぶ≪ガタカⅡ≫が、
我らの新しい相棒となる。」
レインはさらりと隊員たちへ告げた。
「は、はあ…。」
隊員たちは戸惑った様子だ。
「中尉…、お言葉ですが、
日ごろより、
『出来立てよりも、使い慣れた機体が1番だ!』
と、おっしゃっていたかと…。」
つり目の隊員が落ち着いた声で答えた。
「はははははは、確かにそうだ。」
レインは笑った。
「中尉!からかわないで下さいよ。」
他の隊員からも声が上がる。
「こいつの凄さは、外見じゃない。」
「どういうことです?
オレたちは、こいつ《ガタカⅡ》に代わる、
新型がくるんじゃないかと、
楽しみにしていたのでありますが。」
筋肉質の隊員が言った。
レインは真顔で答える。
「だから、こいつが新型だ!」
「……!?」
部下たちの表情はくもったままだ。
レインは、部下たちを気にすることなく続ける。
「この機体は…、
超高純度の魔鋼石”ハイペリオン”で稼働する、
最新型ルーン・リアクター、”バハムート”を搭載している。
さらに、高出力を制御するための、
新たなウィザード・システムも装備されている。
これでどうだ。」
レインの説明をうけ、
部下たちはいっせいに興奮する。
筋肉質の隊員は、
「外装は従来の≪ガタカⅡ≫でありながら、
内側は最新型ってことでありますか!!
大声でほえた。
つり目は、
「ようするに、
”≪ガタカⅡ≫超高出力魔導炉換装型”ってわけですか。」
一人落ち着いて言い放った。
「そうだ、こいつの実験データに目を通したが、
機動力、耐久性能など、
あらゆる点でこちらが上だ、圧倒的にな。」
「おおおお!!!」
部下たちは歓声を上げた。
今まで黙って話を聞いていた年配の女性隊員が、
「こいつで、レイクロッサの奴らをぶっ潰してやりましょうぞ。」
隊員たちをあおった。
「「「おおおお──────!!!」」」
隊員たちの士気は最高潮だった。
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「………………………。」
レインは、自軍のあまりの惨状に言葉を失った。
「中尉!!!
こうなっては侵攻作戦どころではありません。
退きましょう!!」
「くっ……。」
レインは大きく表情を歪め、
頭を激しく横に振った。
「中尉!!!決断を!!!」
「………。」
「中尉!!!」
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はあっ…はあっ…はあっ…
オレは残った敵へ狙いを定め、
トリガーを引く。
カチッカチッ…
しかし、肝心の魔導砲は反応しなかった。
「あ、あれっ?」
<もう残弾ないんだよ!!>
「あ…そうだった。」
オレはあわてて魔導砲から、
ハイヒートグラディウスへ兵装を変える。
「こ、今度は接近戦…
もう、無理かも…」
オレが、弱音を吐いたその時だった。
<タツヤ!!
敵が…、逃げてく。>
リゼルの言葉通り、
残った2機の帝国軍≪ガタカⅡ≫が後退していく。
<追撃して決着をつけよう!!>
「ふぅ…、そ、そうだな…。」
オレは大きく息を吐いた。
額から大量の汗が流れ落ちる。
<タツヤ、大丈夫?>
その時だった。
ゴゴゴゴゴオッ!!!!!
「こ、今度は、なにぃ!?」




