オレの戦闘1
────王国領・レイクロッサ近郊・シャペル村付近の森上空での戦闘────
<タツヤ!
近くに味方の王国軍機は!?>
(あ……、そうだった。
戦ってるのは、
オレたちだけじゃないんだ。
頼む、いてくれよ王国軍!!)
オレは願いを込めて周囲を見回す。
しかし、オレたち以外の、
王国軍ライデンシャフトは、
見つからず、
代わりに、オレの視界へ入ってきたのは、
周辺の森や、丘から上がる、
いくつもの黒煙だった。
「……マジか……。」
<……ウソだ……。>
オレたちの希望はあっけなく消えた。
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一方、レインの元へ再集結した、
帝国軍機ガタカⅡのパイロットたちは、
「…中尉、残る王国軍機はわずか1機、
すぐに片付けましょう。」
「中尉、相手はたかが1機、
時間をかけて編隊を組むまでのことではないかと。」
「早く仕留めて、、
このままレイクロッサを叩きましょう。」
勢いづく戦果に、興奮した様子だ。
そんな部下に対し、レインは、
「落ち着け!
敵は残り1機、
しかしだ、
我が機の左腕のこともある、
決して侮るな。
あの”角付き”、
あきらかに様子がおかしいぞ。」
慎重に返答する。
他の部下が、
「聞き間違いでなければ…、
パイロットは12歳と…。」
口を挟む。
「うるさい!!
余計なことは考えんでいい!」
「ですが…」
「黙れ!!
とにかく目の前の敵を落とす!!
ゆくぞ!!」
「「「おおおお!!!」」」
部下たちは雄たけびをあげた。
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複数の帝国軍機を、
相手に戦わなきゃいけなくなった、
オレとリゼル。
(ああ…、終わった…。
1対9って…、
無理ゲーですって…、
超ハードモードにレベル1で挑戦…。)
<タツヤ!
ここで弱気になってどうすんのさ!!>
(だ…だってですよ、リゼルくん、
こんな絶望的な状況ですよ、
オレは一体どうすれば…!?)
<そ…そりゃ、ぼくだって、
こんな状況の練習…したことないけど…。>
「お終いだ──────!!!」
<そんな、お終いだなんて…。>
「だって、味方はいないし、
オレ初めての巨大ロボだし、
もう、お終いだ──────!!!」
<あ、あのさ!!
僕、ずーっと気になってたんだけど、
タツヤは、今日何度も、
体が勝手に動くって…。>
「そ、そうなんだ!
体が勝手に動くんだ。」
<それって…、
僕の気持ちと、
関係あるのかな?
それなら、ミレーネの時や、
森に行ったのも説明つくと思って。>
「や、やっぱり、
あれはリゼルの仕業だったのか!!」
<ちょ、ちょっと待ってよ!!
僕には、体を動かした感覚全然ないんだ。
今と同じで、体はタツヤにおまかせ、って感じ。
あくまでも、僕の推測だけど…。>
「じゃあ、結局どうなってんだ…」
<詳しいことは、よくわかんない…。>
「はぁ…、なんだよ、
期待しちゃったじゃんか。
リゼルがこの体を自由に動かせたら、
もっと上手く戦えるのに。」
<………そうだ!!
タツヤ、僕の記憶がわかる、
って部屋で言ってたよね。>
「…うん。
確かに、記憶がわかるというか、
頭に浮かぶというか…。」
<それならさ、
僕の身体の感覚も呼び起こせないかな!!
身体には、僕が、
屋根裏部屋の装置で練習をした感覚が、
たくさん残ってるはずなんだ。>
「だから身体が自然と反応するのか…。」
<タツヤが僕の練習した操縦感覚を、
もっとうまく使ってくれたら、
きっと戦える!!
僕も、”動け!!”って念じてみるし。>
「…なんか、ほんの少しだけど、
希望わいてきた。」
<よーし!!
あれだけの数の相手、僕も燃えてきた!!>
集結していた帝国軍が動き出す。
<さあ、くるよ!!>
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帝国軍機は着々と編隊を整え、
王国軍機との距離を縮める。
ビシス・レインは部下達に指示を出す。
「目標ブルージュ・ZWEI”角付き”、
総員総力射撃!…仕留めるぞ!!」




