オレ、巨大ロボットに乗ります3
───搭乗・ライデンシャフト───
(はぁあぁ…。
まったく、
とんでもない異世界転生になったもんだ…。)
オレは今、巨大ロボットの中にいる。
(だってこれ、罰ゲームなのか?
いきなり実戦なんて…。
…ありえない。)
<グレアム少佐、機体お借りします!!>
リゼルはリゼルで、
機体を動かす気満々の様子。
(やばい、
なんかめまいしてきた…。
リゼル、
い、今からでも、
逃げたほうがいいんじゃ…。)
<何言ってんの!
ここまできて降りるなんて!>
(いや、動かせる気が、
しないというか…、
どうしたら…。)
<大丈夫だよ!
僕が全力でサポートするから。>
「あ”あ”────!!!
そのことで言いたいことがある!!」
オレは思わず大声をあげる。
「あのさ、ずーっと気になってたんだけど、
今日何回も、リゼルが"この体"動かしてたよね。」
<え…!?>
「え…!?
じゃないよ!!
ミレーネちゃんを助けに行くときとか、
この森に来る時も、
さっきだって!!
そ、そんなことが出来るなら、
操縦は、リゼルがやってよ!!」
<……僕…そんなの知らないよ…。
確かに、ミレーネを助けに行こうと思ったり、
森へ行きたいと思ったりはしたけど…。
元々は、僕の身体だけど…もう動かせないんだ。
本当に動かせるんなら、動かしたいよ…。>
「えっ!?
…そ、そうなの…。」
意外なリゼルの答えだった。
てっきりオレは、リゼルが、
動がしているものだと思ってた。
<そんなことより。
とにかく!まずは起動させなきゃ!!>
オレはリゼルが出す指示に従って、
計器のスイッチを入れる。
ウォン…ウォン…ウォン…
コックピット内のスクリーンパネルに、
外の景色が映し出され、
手許の操作パネルが光り出す。
…ギィィン…ギィィン……オオオ……ギュオオオオオ…!!!
振動と共に、
メインモニターに映る地表が遠ざかっていく。
「うお─────っ!!
立ち上がった──────!!!
…でも、なんか思ってたのと、違う…。」
<そぉお!?>
「スイッチとか、ボタンは、
もっとレトロな感じだと思ってた。
実際は
光る石板みたいのをさわって、
起動させるんだな。」
<ふーん、
レトロがよくわかんないけど。
これがライデンシャフトの、
コックピットだよ。>
(あのさ、これ動力は何なの?)
<魔力。>
(魔力って、魔法の力でこいつ動くの!?)
<そうだよ。
ちょっとタツヤ!
今そんな話してる場合じゃないよ!!>
(いやいやリゼル、
こっちは知らない事ばっかりなんだから、
もっと詳しく教えてもらわないと…。)
<時間ないんだよ!
帝国軍がきちゃう!!>
(そ、そうだった。
そうだ!
せめて…脱出ポッド的なモノ、
だけでも教えてよ。
こいつにも、ついてんでしょ?)
<いきなり脱出ポッド!?、
それなら…シートの下にあるはずだよ。
出っ張ってるコックを、
回して強く引くんだ>
「へえ…これかぁ…。」
オレは、シートの下に手を入れ、
コックを回そうとした…。
<ちょ、ちょっとー!!>
(冗談だよ、冗談!
だけどさ、知っとかないと、
いざって時に使えないじゃん!)
<……ホントかな。
…あやしい…。>
(え、あ、あはははは。
逃げませんって。
ここまできて、
ねぇ…。
これは、いざって時に…。)
<もー、余計な話ばっかりしてないで、
早く操縦桿握ってよ!>
(あ、はい。
えーと、これが、操縦桿か……。)
オレは、両手脇にある操縦桿を握る。
<次は、足元のラダーペダルに、
足を乗せて。>
オレは言われた通り、
足元を探る。
「あれ…?」
スコッ スコッ
(リ、リゼルくん、
オレの足、届かないんですけど……。)
<あっ!?
そっか…。
グレアム少佐のシートサイズになってるんだ。>
(これ、どうすればいい?)
<えーと、えーと、そういう時は…。
ちょっと待ってね、
シートサイズは…。>
リゼルは必死で考える。
<サブモニターパネルの下にある、
小さな操作パネルに、
これから言うコードを入力して。
それで、変わるはずなんだ。>
(これか…。)
<うん、コードは…、
◎△…☆□〇●…▽△+…。>
オレは、リゼルの言われた通り、
操作パネルにコードを入力する。
すると、シートがぐっとサイズダウンした。
(おおぉ、しっくりきたー。
これならなんとか操作できそうだ。)
<よかったぁ!
…実は、あんまり自信なかったんだ。>
(えーっ!そうなの!!)
<だって、シートサイズの変更なんて、
したことなかったんだもん。>
(ま、まぁ、結果オーライか…。)
<じゃあ次は、
計器類を、説明するよ。
正面がメインモニターパネル。
モニターの中心に照準や重要情報が表示されるよ。
そのメインモニターの中に映ってるのが、
左から方位計、大気速度計、
姿勢角度計、高度計、昇降計、
機内気圧計、さらにその下に――>
(ちょっとタイム!!タイム!!
いきなりそんなに言われても、
覚えられないって!)
<もう時間がないから、
次は操作関連の説明するよ!!>
(おーい!リゼルく――ん!!
人の話聞いてますか―!!!)
<基本的な操作は、手元の操縦桿と、
足元のラダーペダル。
右の操縦桿にはトリガー、トリム調整ボタン、
右肩部補助スラスター制御スティック、
右脚部補助スラスター制御スティック、
機手制御スイッチ。
で、左操縦桿が――>
(無理無理無理!!
そんなの一度に覚えられないって!!
オレ、ライデンシャフトの操作知識ゼロだよ!)
<大丈夫!!
ちゃんと、必要な時に、
僕がアドバイスするから!
とにかく、動かしてみよう!>
(リ…リゼルパイセン…、
そうは言いましても…。
いきなりは…無理ですって…。)
<まず、機体制御と、
移動の基本”ホバー推進”、
だけでも覚えなきゃね!!>
(えー……今度は…。
機体制御…!?
ホバー推進…!?)
<タツヤ、
足元の左ラダーペダルを、
踏み込んでみて。>
オレはリゼルに言われた通り、
左ラダーペダルを踏み込む。
ギュイイイ─────ン
すると、機体は地面をすべるように進む。
しかし、動き出した途端、
ド─────────ン!!!
機体は大きくバランスを崩し、
派手に転んだ。
「うっ…、いつつっ…、
な、何が起きたんだ…。」
<タツヤ、ラダーペダルを、
強く踏み込みすぎだよ!!
それとさ、ホバー推進と同時に上半身の姿勢も、
ちゃんと調整しないと。>
「そ、そんなに、
いっぺんに言われても…、
それに、強く踏み込んでないって。」
<強く踏み込んでないのに、
あの加速……?
そうか!!魔導出力値の設定!!
これも、グレアム少佐のままなんだ。>
「魔導出力値?設定??」
<うん、ルーンリアクターが作り出す、
魔導エネルギーが大きいほど、
あらゆる機体性能を高めるんだ!!
だから、ルーンリアクターの魔導出力値は、
100%に近ければ近いほど、
機体は、最高のパワーやスピードを出せるってこと。>
「じゃ、じゃあ100%でいいんじゃないの?」
<それは…、そうなんだけど…。
100%の出力を制御するためには、
ものすごく繊細な操縦技術が必要なんだ!
だから、パイロットは自分が操作できる出力範囲で、
戦わなきゃいけないんだよ。>
(う、うーん…。
それを聞くと、
やっぱり、オレには無理なんじゃ…。)
<そんなことないよ!!>
(そんなことない、
って言われても…。)
<えーと、グレアム少佐の設定は…。
…!?
80%だ!!>
(80%…。
それってすごいの?)
<すごいよ!!
70%で操縦できれば、
一人前のパイロットなんだから。>
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!!!!!!!!
突如、大地が激しく揺れた。




