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【機体イラストあり!】機導大戰ライデンシャフト~転生したら最弱少年で絶望したけど巨大ロボットのパイロットとしては最強みたいです~  作者: nicobear
異世界で巨大ロボットに乗ることになりました(パイロットとしての目覚め)編
25/123

オレ、巨大ロボットに乗ります2

<タツヤ降ろして、横にしよう。>


「え───!?

 こういうのって、

 動かさない方がいいんじゃ…。」


<違うよ!!

 降ろして、横にした方がいいよ!!>


「いや、動かしちゃいけないんだって!」


<もう!


 ここで、言い争ってもしょうがないでしょ!!


 さっさと、降ろして横にするよ!!>


「…は…はい。」


 オレはリゼルの勢いに負ける。


「オレ…いちおう…元は大人…。」


<はいはいはい。>


 またもリゼルにあしらわれ、


「……はぁ……。」


 オレはブツブツ不満をもらしながら、 

 細い体を精一杯使って、

 パイロットのおっさんを慎重に座席から離し、

 コックピットを出る。


「…うっ……。」


 おっさんは、

 相変わらず、意識がなかったけど、

 時おり、うめき声を出した。


「お…、重いっ。」


<タツヤ、ガンバって!>


 オレたちは、どうにかパイロットを、

 地面へ降ろす。


 そして、大木の木陰まで運び、

 木の根っ子にパイロットの頭を乗せ、横にする。


<ねぇタツヤ!

 額の傷口から血が出てきちゃってるよ。>


「ホントだ…。」


 動かした衝撃なのか、

 傷口が開いたみたいだった。


<血をとめなきゃ。>


「えーと止血か…。」


 オレは、自分の身につけているもので、

 使えそうなものを探す。


 ズボン、シャツに、

 頭には…、


「これだ!」


 オレは左目に巻かれている包帯と、

 その下のあて布を外し、

 あて布をパイロットの傷口に、

 押し当てる。


「ふぅ、これで少しは

 止まってくれればいいんだけど。」


<タツヤ、近くに小川があるから、

 水をくんで飲ませてあげようよ。>


「えーっ!

 まだやるの。」


 オレは想像とかけ離れた、

 地味な作業に、

 つい不満を言わずにはいられない。


<もう、文句ばっかり言わないでよ。>


「……はい……。」


 オレはリゼルに言われて、

 しぶしぶ水を汲みに行く。


「あのさぁ、これっぽっちしか、

 くめないんだけど。」


 オレはイヤミを込めて、

 小さな手の中の水を、

 まじまじと見る。


<少しだっていいよ!>


 またもリゼルに怒られる。


 オレはおっさんの元に戻り、

 水を口にふくませた。


ゴクリ… ゴホッゴホッゴホッ


 おっさんは、

 オレの飲ませた水を、

 口にふくんでむせた。

 

「…うっ…うぅ…、

 ……いっ……つっ…。」


 おっさんがうめいた。


「す、すみません、

 水、変なとこ入っちゃいました?」


<そうじゃないでしょタツヤ!!

 気が付いたみたいだよ!!>


「あっ……。

 ───ど、どうも。」


 オレは条件反射で、

 テキトーなあいさつををしてしまった。


<”ど、どうも”!?

 ちゃんとあいさつしてよ!!>


(ごめんごめん。)


 オレがあらためて、

 あいさつをしようとすると、


「こ、ここは…?」


 パイロットのおっさんが口を開いた。


「ここですか。」


(リゼル、ここってどこだっけ?)


<シャペル村のはずれだよ。>


「シャペル村のはずれです。」


「私は…、

 何故、このような場所に…。」


「それはですね…、

 オレがライデンシャフトから、

 降ろしたんです。」


 オレはいたって普通に答えた。


「!?」


 パイロットの表情がこわばった。


「…君は、いったい…何者だね!?」


 おっさんは、オレたちに対し、

 あからさまに警戒感を出し、

 起き上がろうとする。


 しかし、パイロットのおっさんは、


「ううっ…ぐぅ…」


 苦痛に顔をゆがめる。


「あっ!!

 まだじっとしておいたほうが…。

 包帯だって巻いてないですし…。」


 オレは恐る恐る、

 おっさんの頭に、

 包帯を巻こうとする。


「これを頭に巻こうかと…、

 へ、変な事はしませんので。」


 オレは包帯をおっさんに見せる。


 おっさんは警戒しながらも、

 おとなしく手当てを受けてくれた。


「これでよし…、と。」


「……かたじけない…、

 …礼を言わせてもらおう。


 しかし、こんな所で、

 横になっている場合ではない…のだ、

 早く…機体に…、戻らなければ…。」


 おっさんは、もう一度、

 起き上がろうとするが、

 オレが止める。


「ダメですダメです。

 まだ安静にしてたほうが…。」


「うぅっ…うっ。」


 おっさんの顔色は明らかに悪い。


 見えない箇所にも、

 相当な怪我をしているようだ。 


「…そういえば…、

 自己…紹介が…、

 まだだった…な…。


 …私は、王国軍…少佐…、

 グレン・グレアム…。


挿絵(By みてみん)


 …君は?」


「え、あ、えーと…。」


<タツヤ!

 ちゃんと答えてよ。>


(わかってる、わかってるよ。)


「オレは…。」


<さっきから気になってるんだけど、

 僕は、自分のことを、

 オレなんて言わないからね!!>


「もー、うるさいな。」


 オレはリゼルとの会話を、

 つい口走ってしまう。


「うるさい…!?


 私は…、

 うるさ…かったか?」


「あー、いや、

 そういうわけじゃないんです、

 すいません、気にしないで下さい。


 えー、”オレ”じゃなかった。


 僕は、リゼル・………。」


(なんだっけ!)


<ティターニア!!>


「えー、僕は、

 リゼル・ティターニアであります。」


「…そうか……、

 ティターニア君…か。


 その目は…?」


「ああ、これですか、

 見た目痛々しいですけど、

 まぁ…大丈夫です。」


 オレは無理やり笑顔を作る。


「…そ、そうか…。


ならば、これを包帯の代わりに…。」


 グレアム少佐は胸元のポケットから、

 大きなハンカチを取り出し、

 オレへ手渡す。


「少年、…ここは、…危険だ、

 今すぐ、離れな…うっ…」


 グレアム少佐は、

 怪我が痛むのか、

 再び顔を大きくゆがめる。


<タツヤ、全然大丈夫じゃないよ。


 ケガは僕たちの想像以上にひどいみたい。>


(そ、そうだな。


 この様子だと、

 村に戻って、

 助けを呼んだほうがいいんじゃないか。


<……うん、

 タツヤのいう通りかも…。>


(だろ!!)


「あのグレアム少佐!


 オレ、あ!…いや僕、

 急いで村へ戻って、

 助けを呼んできます。


 ここで待ってて下さい。」


 オレは村へ駆けだそうとして、

 少佐に腕をつかまれる。


 その手には、

 想像以上の力がこもっていた。


「…ティター…ニア君…。


 私のことは……いい……。


 …助けも、無用…だ。


 もう…戻らなくていい、


 帝国軍が……やってくる…。


 …村の人と…逃げ…なさい。」

 

 グレアム少佐は、

 懸命に声を絞り出した。



(帝国軍!?やってくる!?


 リゼル!!!


 ど、ど、ど、ど、どうしよう!?) 


<………。


 このまま、グレアム少佐を見捨てるなんて…。>


(だったら、少佐も一緒に連れて逃げよう!!)


 オレは、


「グレアム少佐も、

 一緒に、急いで逃げましょう!」


 グレアム少佐に呼びかける。


<……………>


 リゼルは何も言わなかった。


「…私は…逃げるわけには、

 …いかん。」


 グレアム少佐は小さく首を横にふった。


(リゼル!!

 オレたちだけでも逃げよう、なっ!!)


<………………>


 リゼルは、また何も言わなかった。


(もういいだろ!

 やれるだけのことはやったじゃん!!)


 オレはリゼルに言い聞かす。


 逃げないオレを見て、


「…何を……して…いる?


 はやく…行き…なさい!」


 グレアム少佐の声にいらだちがまじる。


「はい、すぐにでも行きたいんですが…、

 なかなか話がまとまらなくて…。」


「………??」


 グレアム少佐はオレの返答に、

 困惑する。


(ほら!少佐困ってるし、

 もういいだろ、行くからな!!)


 オレは村へ走ろうとする、

 しかし、体が動かなかった。


(もー!!なんでこうなるんだよ!!

 リゼル、いい加減にしろよ!!)


<…逃げたって…ダメ…だよ>


(えっ!?)

 

<そんなのダメ!>


(ど、どうしたリゼル?)


<そんなの絶対ダメなんだ!!>


(い、いきなりダメって…。)


<村が…、シャペル村が…、

 帝国軍に、

 やられちゃうかもしれないんだよ!


 そんなの、僕絶対許さない。>


(ちょ、ちょっと落ち着けって。

 まだやられると決まったわけじゃ…。)


<僕、決めたよ!!>


(決めたって何を!?


 あ、あと補足しとくけど、

 もうすでに、村には被害出てるし…。


 少佐の言う通り、みんなで逃げたほうが…。)


 オレは、なんとかリゼルをなだめようとする。


<逃げる逃げるって、

 どこに逃げるのさ!!


 村を捨てろって言うの!!>


(そうは言ってないけど、

 死んじゃったらお終いだろ!!

 それよりは生き延びて…。)


<タツヤ、グレアム少佐に、

 あの機体の状態を聞いて!>


 リゼルはオレの話をさえぎって、

 自分の話を進める。


(えっ…機体の状態!?

 オレの話は?)


<いいから!!>


 リゼルの興奮は収まらない。


<早くっ!!!>


「あ、あの、グレアム少佐、

 機体の状態は、いかが…ですか?」


「…機体の…状態……!?」


 グレアム少佐は、

 戸惑った表情でオレたちを見る。


「なぜ…君が…そんなことを…。」


「聞けと言われたもんですから…」


「…!?」

 

 グレアム少佐は、

 オレの言葉にさらに戸惑う。


<もうタツヤ!!!

 真面目にやってよ!!!>


「ああ、すいません、

 お願いします!教えて下さい!」


「……」


 グレアム少佐は黙りこんだままだ。


<もう時間がないんだよ!>


「あのぉ、時間が……」


 グレアム少佐の目つきが険しくなる。


「…民間人…、

 ましてや…、君の…ような…、

 子供に…、

 軍事情報を…教えるわけ…、

 …にはいかん。」


<機体コード、

 MLV-207・ブルージュ・ZWEI”>


(ちょ、ちょっと、いきなり何だよ!?)


<少佐に伝えて。>


「えー…機体コード、

 MLV-207・ブルージュ・ZWEI”」


「………」


 グレアム少佐は、突然のオレの発言を、

 驚きの表情で見つめる。


<制御システムには、

 魔導演算機統制機構ウィザードシステム

 採用、


 装甲材質は 

 シルフィ二ウム+。


 機体のフレーム機構は、

 モータルフレーム。>


(そ、そいつも伝えるの?)


<うん。>


「制御システムは…、

 ……を採用で、

 装甲……、

 …………、

 モータルフレーム。」


(はぁ、何とか言えた。)


「…少年…、どこで…その情報を…。」


<僕はただの民間人じゃありません。>


「ぼ、僕は、ただの民間人じゃありません。」


 オレの言葉を聞き、

 グレアム少佐は目を閉じて考え込む。


(…………)

<…………>


 オレとリゼルは、グレアム少佐の様子を見守る。


 すぐに、少佐は目を開き、

 オレを真っ直ぐ見て話し始めた。


「………、

 …わかった。

 

 そこまで…、

 言うのならば……。」


 グレアム少佐は言葉をしぼりだす。

 

「墜落の…衝撃による、

 損傷は…わからんが…。


 大きな損傷は、

 背部サブスタビライザー……、

 それぐらいだ。


 それ以外は……、

 どうにか…動くはずだ……。


 …あぁ、あと…、

 魔導砲のチャージ…機構が……

 おかしく…なってしまったか…。」


 少佐は話し終えると、

 ゆっくり息を吐いた。


(背部サブスタビライザー、魔導砲??)


<ライデンシャフトの姿勢を、

 制御をする為のパーツの一つだよ。


 コントロールは難しくなるけど、まだ戦える!


 魔導砲だって、チャージできなくても、

 何発か撃てるはずだし!!>


<タツヤ、少佐にお礼を伝えて。>


「グレアム少佐、ありがとうございます」


 少佐は小さくうなずいた。


(戦える…って。

 おいリゼル!!

 お前まさか…!!)


<大丈夫、ボクにまかせて…!>


(ま、まかせてって…。)


 オレはライデンシャフトを見上げる。


(オレが…、

 この巨大なライデンシャフトを…。)


<いくよ、リゼル・ティターニア。

 村は、僕が守るんだ!!>


 リゼルの決意は本物だった。


(マ、マジで…、

 この巨大ロボットを、動かそうってのか…。)


 今日何度目だろうか、

 体が勝手に動き出し、

 オレは、ライデンシャフトへ向かう。


「ち、ちっくしょー!!!

 なんでこうなるんだよー!!!」


 オレは大声で叫ぶ。 


 走り出す少年を見送るグレアム、


「…無茶だ…。


 …少年よ………、

 ……戻って………。」


 グレアム少佐の声はそこで途切れた。



 少年はライデンシャフトへ乗り込んだ。














読んでいただき本当にありがとうございます。


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― 新着の感想 ―
ついに乗り込んだんですね! リゼルの実力はどんなものか! ワクワクしました(╹◡╹)
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