オレ、巨大ロボットに乗ります1
───フィレリア王国・レイクロッサ近郊・シャペル村───
シャペル村近郊、
夕日に染まる村はずれの森。
森では、
帝国軍ライデンシャフト≪ガタカⅡ≫と、
王国軍ライデンシャフト≪ブルージュZWEI≫による、
激しい戦闘がおこなわれていた。
”オレたちが乗る”、
王国軍ライデンシャフト・ブルージュ・ZWEI、
めがけ、”帝国軍ライデンシャフト・ガタカⅡ”が、
襲い掛かってくる!!
「うわわわっ、リゼルー!
こっち来たぞー!!」
”敵ライデンシャフト”は、
大量の土煙を巻きあげ、
オレたちに迫る。
<タツヤ!シールド!!>
オレは機体を素早く操作し、
シールドを構えた。
ガキィィィン!!!
オレたちは、
ガタカⅡが繰り出す斬撃を、
左腕に装備されたシールドを使い、
ぎりぎりで受け止める。
「うぅっ…!」
<ナイス防御!!>
敵ガタカⅡは、動きを止めず、
何度も斬り込んでくる。
ガキィン!!ガキィン!!ガガキィィン!!
オレたちは、
ガタカⅡの猛攻に対し、
防戦一方だ。
「リ、リゼルくん!!
このままじゃ……
オレたちやられちゃうんですけど…!!」
<タツヤ焦んないで!!
反撃のチャンスを待たなきゃ!!>
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ガタカⅡの女性パイロット、
ビシス・レインは、
しぶとく食い下がる相手に、
苛立ちを隠せないでいる。
「往生際が悪い!!
いいかげんくたばれー!!」
ガタカⅡは大剣を大きく振りかぶり、
渾身の一撃を放つ。
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オレは再びシールドを構えた。
ジュウウギャアアン!!!!
さっきまでとは違う、
嫌な音と衝撃が走る。
「あ”───!!」
モニター越しに見るシールドは、
ガタカⅡの強烈な一撃で大破している。
「や、やばいって!!!」
<タツヤ!!!一時退避!!
右ペダル全開思いっきり踏み込んでーっ!!>
オレは、言われた通り、
足元にある右ラダーペダルを、
全力で踏み込む。
ブルージュ・ZWEIの
メインバーニアスラスターは、
爆炎を吹き上げ、
機体は急上昇する。
「おぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
コックピットが激しく揺れ、
ものすごいGが身体にかかる。
「うぅぅぅぅぅぅぅ!!!」
<……えっ…!?
ルーンリアクターの出力が…!?
…振り…切れてる…。>
オレたちは、あっという間に、
かなりの高度に到達した。
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とどめの一撃を狙っていた、
ビシス・レインは、
「な、何!!!?
ここで…、エネルギー消費の激しい、
急飛翔だと…。」
≪ツヴァイ≫の予測不能な行動に、
戸惑いを隠せななかった。
───時は少しさかのぼり、ライデンシャフトに搭乗前のタツヤとリゼル───
墜落した王国軍ライデンシャフトを探して、
オレたちは、村はずれの森へやってきた。
そこで、オレは異世界の巨大人型兵器
”ライデンシャフト”と対面する。
その道中、本来の体の持ち主、
リゼル少年がオレたちの手で、
ライデンシャフトを操縦しようと、
提案してきた。
(オレが…パイロット!?)
とりあえず、
オレは、パイロットについて考えみる。
(パイロットか…。
…モテそう。)
<ちがうでしょ!!
今はそういうこと考えてる場合じゃないんだから!!>
すかさずリゼルに怒られた。
オレはあらためて真面目に考えてみる。
(パイロットになるには、
当然、操縦技術とか、
そのための知識が必要だよな。
その点、前の世界で、
ただのSEだったオレには、
……かなり無理な話になるわけで。
自転車乗れてもな…
車の免許か…とっとけばよかったな…
…待てよ。
屋根裏部屋で聞いたリゼルの話、
あれが本当だったら…。)
オレの中に淡い期待が生まれた。
そんなことを考えながら、
ライデンシャフトを見上げていると、
いきなり胸部コックピットハッチが開く。
ハッチから白煙が上がり、
ゆれる白煙の先に、人影が見えた。
そこには、うなだれるようにして、
パイロットが座っている。
よく見ると、
パイロットは頭から血を流し、
苦しそうな表情だ。
<タツヤ!助けなきゃ!!>
リゼルが頭の中で叫ぶ。
「…あ、ああ!」
オレは、ライデンシャフトに近づき、
コックピットへよじ登った。
間近で見る、
ライデンシャフトの装甲には、
無数の傷がある。
(あわわわわ……、
こいつってさ…、よく出来た、
フィギュアとかじゃないんだよな…。)
オレは機体のリアルな傷に、
正直ビビる。
<ちょっと!しっかりしてよ!!>
(…いやぁ…、
…すごい傷だなぁ、
と思ってさ…。)
<当然でしょ、戦ってるんだから!!>
(そ、そうでした。
そんなことより!
リゼル、パイロット!!)
オレたちは、コックピットを覗く。
中年のパイロットは、
コックピットに座ったまま、
ピクリとも動かない。
<大丈夫かな…。>
リゼルはパイロットの状態を心配する。
オレは、
「あのー、大丈夫ですかー?」
パイロットのおっさんへ、
大声で話しかけた。
「…ぅ…ぅぅ…」
パイロットのおっさんから、
かろうじて反応がある。
おっさんは生きていた。
しかし、はっきりした意識はなくて、
オレたちの問いかけに、返事はなかった。




