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この殺伐とした魔術世界で  作者: 柿の種
第二章 新しい土地で知ろう

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白い霧と黒い霧

もしよかったら感想やご指摘などよろしくお願いします


霧の中、【チャック】を使い切り付け続ける。

グリムのほうはといえば、動かなくなっていく身体を動かしながら、不死系モンスターを出現させどうにか身を守ろうとしていた。

しかし、やがて諦めたのか顔を伏せ何事かつぶやき始めていた。


……何か魔術の準備?いやこの状況で何ができる?

少し聞き耳立ててみよう。


「……いい加減にしろよクソガキがァ!!!動きにくいんだよクソッ」

「うっわぁ」


女の子の見た目で何言ってるんだあの子。

というか、やはり中身は見た目通りの年齢じゃなさそうだ。よくあることだが。

しかしこれこのまま外に出たら、全力で殺されそうだ。

どうするかな。


「【逸話のある物語-人魚姫】!!!」

「おっと」


彼女が固有魔術らしきものを発動させる。

すると、今まで身体に纏わりついていた【怒煙】のエフェクトが綺麗さっぱり消えていくのを確認できた。

……状態異常系完全回復の固有魔術だろうか?ダメージが回復できていないのならまだこっちに余裕ありそう。


「じゃあ【怒煙】以外を使っていこうかな。……【錬成-変異-爆裂槍】及び【分裂槍】、ついでに【錬成-刻印】対象【大罪-怠惰】及び【憤怒】付与。」


インベントリから材木を取り出しながら魔術を発動させる。

今回作ったものは、【爆裂槍】と【分裂槍】の両方の特性……任意起爆と多重に槍が枝分かれさせられるようにした特殊型。

それに加え、手元にある素材を元に作っているためそのまま【刻印】にて【怠惰】と【憤怒】を付与させておく。


相手の固有魔術ですぐに回復される可能性はあるが、【怠惰】に関してはその発動を少しでも遅らせられたらいいな、と思ってのことだ。

【憤怒】は完全におまけ。視界が少しでも狭まればいいよね。


「さて、と。これどこから攻撃できるかな……」


魔術構築に意識を向けていたため、グリムがどういう動きをしているのか見ていなかったため、ちらと見てみると彼女は手当たり次第に周囲を攻撃しているようだった。

みれば、何らかの死霊術を使って、召喚した不死系モンスターを爆破させたりしている。

……あれ普通に戦ってたら、爆破されて終わってたなぁ。


「とりあえず足元にっと」


【チャック】を繋げ、手の中の槍を投げるために構える。

ちょうど股下当たりだろうか。

動きが止まったのを確認しそのまま投げる。


「……みぃつけた、お姉さん」

「っ!?」


ゾクッと背筋が凍るような感覚とともに、手から離れた木の槍が【チャック】から出た瞬間に黒い塵となって消えていく。

何か、まずい。そんな気がして【影化】を解いてみると、原因が分かった。


グリムの周りに黒い霧のような……そう、私の【霧海】のような霧が集まっている。

あれはなんだろうか……?


「ふふ、ふふふ。あり得ない。あり得ないんですよ、こんな。あり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ない!!!」

「……」


黒い霧に対して【霧海】を近づけてみるも、触れて数秒後にはこちらの霧が侵食されてしまう。

グリムは半ば錯乱しているように「あり得ない」と叫び続けながら、こちらをしっかりと捉えている。

睨み付けてくる。


その視線に少し恐怖を感じてしまい、後退る。

……いや、ダメだ。これで恐怖なんて感じていたら流石に心が弱すぎるだろう。

しかしだ。あの目は今まで戦った相手とは何かが違う、そう感じた。


「……【分裂槍】」


とりあえずで、【分裂槍】を叩き込んでみる。

射出時点で10以上に枝分かれさせた槍は、そのまま黒い霧へと突っ込み塵となって消えていく。

固有魔術か否か。よくはわからないが……やはりあれは触ったらいけないものだろう。


しかし、よくよく見れば私の放った槍のおかげかどうなのか。

黒い霧の体積が大きくなっているように見える。


「あはは、少しまずいなぁアレ」

「ふふ、お姉さん遊びましょう?」


突っ込んでこない私を見かねたのか、グリムがこちらへ突っ込んでくる。

もちろん黒い霧をまとった状態で、だ。


……触れると危ない系の霧。いや本当に霧なのだろうか。確かめる術があまりないってのも問題かな。

先ほどから一応【鑑定】をかけてはいるのだが、それも弾かれている。

十中八九固有魔術の類だろう。


黒い霧に触れないよう、余裕をもってグリムの突進を避ける。

【霧海】のように操作させられないようだが、それでも脅威は脅威だ。

と、ここで。


「やぁやぁクロエさん、こっちは終わったよ」

「……丁度良いところに来ましたね、リセットボタンさん」


リセットボタンがこちらへと歩いてやってきた。

本当に丁度良い。彼女ならばこの霧の正体がわかるかもしれない。

そう思い、リセットボタンの近くへと逃げるように走る。


「ちょっと、あの霧にホムンクルス突っ込ませてもらってもいいです?」

「唐突だね。いやいいけれど……【錬金-生命作製】装填(チャージ)。とりあえず人型でっと」


フラスコを適当にその辺に投げ、白い身体をした人型のホムンクルスを誕生させそのまま突っ込ませてくれる。

……無機物、それに魔力に関係するものはそのまま塵となった。じゃあ人工生命(ホムンクルス)の場合はどうなるのか。


「ふふ、お姉さん達。無駄だよ」

「そう……なるかぁ……」

「ちょっとクロエさん、あぁなるなんて私聞いていないんだけど?ねぇねぇ」


人型は黒い霧へ突っ込むと同時に、その身体中に黒い斑点を出現させ最終的に塵とへ変わっていった。

隣でリセットボタンが少しうるさいが、それは無視だ。


「黒い斑点。黒死病……ペスト関連の固有魔術、ってことですかね」

「ふふっふふふふふふふふ」


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