リセットボタンを押させるためには
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私、リセットボタンは現在何故ここまで頑張っているのだろうか。
元々私は、このレギンに決闘王者の試合を見に来たのだ。
それがどうだ、現状普段ならば絶対に戦いたくもない死霊術の使い手……それも【童話の人物】と呼ばれる2人組と戦っている。
「あははっ、ほら!お友達の追加だよ!」
「くっ……」
地面から多くの不死系モンスターが這い出てくる。
それに対し、私の手勢は人型ホムンクルスが3体。
剣と盾を一緒に持たせている剣士のようなタイプだ。
ホムンクルスに対する指示を出す場合、二つの方法がある。
一つ目はリアルタイムで指示を出す方法。しかしこの方法は、リアルタイムでホムンクルスを操れるが、その分ホムンクルスには簡単な『攻撃しろ』などの指示しか出すことが出来ない。
二つ目はホムンクルスを生み出す時に事前にホムンクルスに対して、動きをインプットしておく方法。
これは、難しい指示もホムンクルスへと出すことが可能だが、その分リアルタイムに対応はできなくなってしまうために、少し不便な場合もある。
私が現在ホムンクルスに行っている指示は二つ目の事前指示と呼ばれる方だ。
3体ともに、ハンス……プレイヤーたちよりもモンスターを狙っていくように指示している。
お蔭さまで、近くにモンスターが寄ってくることないのだが。
「はぁ、仕方なし仕方なし。そもそも、私は前回無駄に余裕ぶったせいで死んだのだから」
「?なにをいってるのお姉さん」
「君には関係ない話だよショタさん。……【さぁ、願いを聞きましょう】」
詠唱を開始する。
私の一番初めから持っている固有魔術を発動させるために。
……この子らは、ロールプレイなのか素なのか分からないけれど、他言するようなロールをするとは思えないしネ。
「っ!【彼は晩年にこそそれを知る-ある母親の物語】!」
「【されど願いは聞けど、それを叶えるとは限らない】」
詠唱を始めた私を見て焦ったのか、ハンスは固有魔術を使い、老人を召喚する。
ハンスという名前、さらに固有魔術に付属していた名前から察するに、彼の固有魔術はきっとハンス・クリスチャン・アンデルセンの作品に関係するものなのだろう。
ということは、だ。
『ある母親の物語』に出てくる老人といえば思い当たる節がある。
あの作品で出てくる老人といえば、母親の子供を連れて行った死神だろう。
その老人……死神は、ハンスの前へ出るようにしてこちらへと手を向ける。
魔力が集まっていくのを感じるが、私はそのままに詠唱を続けて行う。
「【燃え尽きる札は、貴方に苦しみと痛みを与えるだろう】」
「いって!老人さん!」
ハンスの声に反応してか、老人が大きな青い炎を手に出現させそのまま私へと放ってくる、が。
詠唱は終了した。
「【札の王は希望か絶望か】」
そして私の固有魔術は発動する。
私の周囲にはトランプのキングが4枚、それぞれハート、ダイヤ、クラブ、スペードが出現し、私を守るように回っている。
そして青い炎がこちらへと迫ってきたが、問題はない。
「クラブの王よ、災いを与えてくるものに粛清を」
私がそう呟くと、クラブのキングが描かれたカードが私と飛んでくる炎との間に入り、私の代わりに炎を受ける。
が、トランプはその炎によって燃え尽きることはなく、頭と左腕が燃え尽きた状態で私の前に浮かんでいる。
「うわ、お姉さんすごいねトランプで今の防ぐなんて!」
「そう?ありがとう、でも君のおじいさんは大変そうよ?」
「へ?」
見れば、老人の頭と左腕が燃え尽きていく。
燃えたトランプと同じように、青い炎を吹き出しながら。
「なっ……」
「あは、君には何も見えないし触れないし、何もできないでしょう。そういうものよ」
そしてゆっくりと炎が消えていくと同時に、光となって老人は消えていった。
これでひとまず、ハンスの固有魔術の一つは何とかできた、ということだろうか。
「ゆるっ、ゆるさないぞっ」
「おや子供っぽい。そういうロール?」
笑いながらも、次の一手を打つべくインベントリの中から2つフラスコを用意する。
【過ぎた薬は猛毒に】用のものと、もう一つ。
赤い薬品が入っているものだ。
……一応、とっておきとして持っておいたものだけど、まぁ仕方なし仕方なし。
「ふふっふふふふ、まだ、まだだよお姉さん」
「あらそう?でも私はそろそろ終わりにしたいのだけど」
「……【バラの花輪だ、手を繋ごうよ】【ポケットに、花束さして】」
彼は詠唱を始めてしまった。
しかも、周囲に不死系モンスターを大量に呼び出しつつ。
……まぁ、その詠唱が終わるまで待つ気はさらさらないのだけど。
「【錬金-生命誕生】……おいでドラグ」
私は赤い液体の入ったフラスコを、ハンスと私の間に投げる。
そしてそのフラスコが地面に落ちた瞬間に、1体のホムンクルスが誕生した。
私のとっておき中のとっておきだ。
その身体は白く。その瞳は紅く。
ファンタジーならば、どの作品にも出てくるであろうそのモンスターを模したホムンクルス。
ドラゴン型だ。
「さぁ、焼き払おうか。行こう」
「【ハックション!ハックション!】【みんな、転ぼ】!!」
彼の詠唱が終わったようだがもう遅い。
特別改良した私のドラゴン型ホムンクルスがブレスを吐いて、彼の身体を包み込んでいった。




