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この殺伐とした魔術世界で  作者: 柿の種
第二章 新しい土地で知ろう

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戦利品は厄介で

もしよかったら感想、ご指摘などよろしくおねがいします。


第二章スタート


現在、シスイにて借りている宿で、私は鼻歌交じりに作業をしていた。

列車など、様々なアップデートが来る前に、私にはやる事が有る。

まずはリセットボタンから手に入れた固有魔術が何かを確かめないといけない。


「なんだろうなぁ、っと」


『【固有魔術-過ぎた薬は猛毒に】を取得しました』


リセットボタンから手に入れた固有魔術は、あの毒煙を発生させたものだった。


-------------

【固有魔術-過ぎた薬は猛毒に】 Lv1

猛毒を発生させる。

その強さ、性質については行使者の自由に設定することが可能だが、レベルによってどんな毒が作れるかは変わってくる。


設定可能

強さ

・弱い

性質

・水溶性

-------------


「中々に尖った性能してるなぁ、これ」


毒を作る、という点ではかなり面白い固有魔術ではあるが、その毒性の強さや性質まで設定できるとは思ってなかった。


恐らく使っていけば、リセットボタンが使っていたような毒煙なんかも作れるようになるのだろう。

試しに使ってみようとするが、ここで問題が生じた。


「……これって起動文なんなんだ?」


魔術には、起動文というものがある。

発動とか発生、起爆や展開など魔術の名前の前後に付けることでその魔術を発動させますよ、という……ある意味でスイッチ的な役割のあるシステムだ。


普通、起動文というものはなんとなーくで使おうとする場合頭に浮かんでくる、と言えば良いだろうか。

基本的には手探りで探さなくても、何となくわかるし何となく使えるものなのだ。


しかし、この【過ぎた薬は猛毒に】は違う。

リセットボタンを思い出してみると、彼女は装填、そして起爆と2つの起動文を使い、この固有魔術を扱っていた。


恐らく彼女の使っていた毒の性質的にそうなったのだろうが、私の持つ【過ぎた薬は猛毒に】の性質は、現状水溶性しかない。

では何に困っているか。


水溶性と言っても幅があるためだ。

まずはその毒が固体で作成されるのか、液体で作成されるのか。

それによって起動文も変わってくるだろう。

また、何を対象にするかでも変わってくる。


リセットボタンのように、フラスコの中に溜めるという用途なら装填、という起動文を使う方がいいだろうし、それ以外ならそれ以外の起動文を使った方がいいだろう。


「……ちょっとこれは厄介だなぁ。完全手探りかな?」


実際、そうなのだろう。

今もこの固有魔術を発動させようにも、何個も起動文が頭の中に浮かんでは消えていく。

ある意味、カスタマイズが自由な魔術の弊害とも言えるだろう。


「あ、でもこれブックマーク機能あるんだ。便利」


もう少し詳細に【鑑定】を掛けてみると、作った毒を記憶させることが出来る機能を発見できた。

恐らくだが、毒の作成に関しては安全な所で行い、良いのが出来たら記憶。

その後戦闘でそれを呼び出し使用する、というのが基本的な戦術になるのだろうか。


「……まぁ、使うのなら沢山の性質使えた方がいいよね。練習するかぁ」


あとで瓶などを買って来なければならない。

流石にその辺のコップとかに毒を作ってしまったら、後が怖いからだ。


さて、次に行こう。


【チャック】を開き、中にあった布と糸、綿を取り出す。

其々を【怠惰】によって変容させつつ、どうするべきかを考える。

何を?無くなった左腕を、だ。


幾らこれから左腕を治すために国を渡ると言っても、その途中で様々な戦いが起きるだろう。

また前回のように、戦闘中に諦めかける可能性もある。


その時に、左腕があるか無いかでは取れる戦術に大きな違いが生じる。


変容させたアイテム達をそのまま【チャック】に放り込み、【異次元錬成】をさせる。

いつもは自由に、方向性を定めずに【異次元錬成】をしているが今回は少し違う。


左腕の形になるように、そうでなくとも少なくても腕の形になるように方向性を決めてやる。

縫いぐるみのような腕にはなるが、しのごの言っている状態でも無いのだ。


無事【異次元錬成】は作業を開始させたため、一応これで腕のような何かにはなるだろう。

問題はその後。出来上がった後にどうやってその腕をくっつけるかだ。


流石に素人の私が腕を縫い付けるなんてやろうものなら、別の問題が生じそうだし色々と大変だろう。

誰かしら良い人は……


「あっ、居るじゃん。丁度いい」


人間の身体に詳しそうで、私の事情もよく知っていて、尚且つ今のところは私に敵意がなく、フレンド登録も済ませている人物。


少しだけ通話をするのに躊躇はしたが、迷ってもいられないだろう。

通話を掛けた。


『んん!!君から掛けてくるとは!!何の用かなクロエさん!!私に出来ることなら応えよう!!!』

「あー……どうもガビーロールさん。いや少しだけお願いがありまして」


そう、ガビーロール。

彼はゴーレムというある種の人間の模造品を作ることに特化した魔術師だ。

模造品を作る上で、元となるモデルの構造に詳しく無いということはないだろう。


私はガビーロールに事情を話す。


『ふむ!つまりは代わりの腕のような何かがあるからそれを付けて欲しいと!そういうことだね!?』

「そういうことです。大丈夫ですか?」

『全くもって問題はない!ではそちらに向かうからシスイの……そう!【赤の十字軍】拠点前なんてどうだろうか!目立つだろうあそこ!』

「あー、良いですよ。ではそこで落ち合いましょう。では」


通話を切る。

さて、では私も移動するとしよう。

彼のことだ、どこに居ても直ぐに駆けつけてしまうだろうからね。


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