058 一生懸命切ります
本日1話目です。
昨日からしばらくは1日に2話投稿してますので、ご注意ください。
「勉強になりました。ありがとうございます」
「いや、問題を起こされる前に知ってもらえて良かった。
ところで、東に進んだ所にある場所へ採取をしに、依頼を受けて行くと言ってたな」
「あっ、はい。そうですけど」
「何を取りに行くのか聞いても?」
「別に秘密にしてないので良いですよ。というか、場所が判れば教えて欲しいくらいです」
「知っている場所なら教えよう」
「ありがとうございます。
東に向かうと大きな川に囲まれた森があるそうで。
そこでトリュフを採ってくるように、って依頼です」
「マジかっ?!」
めっちゃ驚かれた。
トリュフが高級品だからとしても、この驚きは変だ。
ちょっと、事情を詳しく。
「あそこは『クラップ』の生息地だぞ?!」
「あっ、それ聞きました。糸出すんですよね。その糸も持って帰ろうと思ってます」
「のんきかっ!! どうやって倒すつもりだ?!」
「へ? いや、足とか切れば動けなくなるでしょ」
「どうやって足を切るんだ? あんなに硬いのに」
蜘蛛の足なんか、簡単に切れるでしょ。
硬いの? まぁダメージ受けないんだから、時間かけて切りつけてれば、いつか切り落とせるでしょ。
「えっと、一生懸命切ります」
「……そんな切れ味の武器を持っているように見えないんだが」
「…………さっきのクマに持たせてます。街中に持ち込まない方が良いと思いまして」
「そ、そうか」
咄嗟にウソついたけど、信じてもらえたかな?
ま、沢山入るアイテムボックス袋に入れてます、って言うよりは真実味があるでしょ。
信じずに身体検査しても出てこないんだから、同じ事だ。
「そう言えば、クマを従えてたな。アレらと協力して戦えば倒せる……のか?」
「他にも従えている動物が居るので、大丈夫ですよ」
「そうなのか?! ま、まぁ、信用しよう。依頼を出されるくらいなんだからな。無茶はするなよ?」
「しませんよ」
無茶なんかしませんって。
だから街に入るにあたって、この合羽も脱ぎません。レースを上げるだけで許して下さい。
「その依頼のついでで良いから頼みがある」
「なんでしょ?」
「その森の周囲の川にワカメと呼ばれる水草が生えている。帰りに回収してきてくれないか?」
「……どんな植物です?」
特徴を聞くと、それは地球のワカメと同じだった。
ここは一緒なのかよっ!
「ワカメをどうするんです?」
「食料にもなるしスープにも使える。が、なによりも薬になる」
へ~。ワカメが薬になるのか。
「判りました。大量に採ってきますね」
「い、いや、大量には要らないぞ? 買うにも限度がある」
「余った分は、自分で使ったり帝都で売ったりします」
「そ、そうか。だが、あまり鮮度が落ちたら売れないぞ?」
「足の速い動物に運んでもらいますよ」
「なるほど、そういう手があるのか。なら頼む」
「了解で~す」
儲け話も出来たし、情報ももらった。
街には寄るべきだね。
「その森だが、この門の反対側から伸びている街道を2日程進むと見えてくる。
赤い橋がかかっている川だからすぐに判ると思う」
「赤い橋ですね。覚えました」
「橋から見て右側に森はある。その付近は危険だから村も街も無いからな。
と言うか、この街以降は橋まで無い。橋を渡っても次の街までは3日かかる」
ふむふむ。
危険と言われてる所に村とか作らんわな。
城壁でもあれば別かも知れないけど、作ってる間に襲われたら意味が無い。
逆に言えば、危険な場所だから盗賊の類も出て来ないだろう。
通る者も急いでいるだろうし、そもそも待ち伏せしようとしてたらモンスターに狙われる。
同じ戦うにしても、人間の方が面倒なんだよね。
計画的に戦ってくるし、なにより俺が傷つけられない。
異世界に行った主人公達の、思考の切り替えの速さには驚くわ。
高校生くらいまで日本で住んでたら、人を傷つけるなんて理性が邪魔して無理。
異世界に行く時にこっそり洗脳されてるのかもね。
もしそうなら、その神って怖いな~。
手違いで死んだとか言い、主人公には異世界で自由に生きていいとか言う。
そしてチートを渡すふりをして主人公に触れ、こっそり陰で洗脳……。
絶対何か企んでる!! 全部決めて行動してるわ。
その為なら土下座でも何でもやる。うん、ホラーだね。
……俺も何か仕込まれてるのだろうか?
怖いから、考えるのは止めよう。どうせ抵抗なんか出来ないし。
そんな事よりも、ワカメの事を考えよう。
和食の第一歩だね。後は、米と醤油と味噌と鰹節と……あれ?
すげぇ沢山必要じゃない? こりゃ当分無理だな。
それに、何もかも無いと勝手に思ってたけど、普通に流通してるかもしれない。
帰ったらボガスさんに聞いてみよう。




