053 帰ろ帰ろ
ラノベの定番だと、こういう場合、皇帝が素直に負けを認めるんだが。
そして有効活用する方向に舵を切り、もちつもたれつの関係になる。
最後には友人関係になったりして「自分のような身分の者だと友人も居なくてな」みたいな話をしたりする。
ここまで反抗的じゃないはずだ!
まぁ、結局の所、主人公の為に周囲があるから、主人公有利になるようになってるんだろうけど。
俺も異世界転移とかしてるんだから、主人公じゃん?!
有利になれよ!!
って事で、作戦変更します。
「そうか。ここまで言っても分からないなら、こちらもやり返す事にしよう。
そっちが俺に1つ迷惑をかけたら、そっちが大事にしているモノを1つ奪おう。
2回迷惑をかけたら2つ奪おう。対等な取引だろ?」
「個人と国でやりあえると思っているとはな」
思ってないよ!
それに、あんたの子供とか殺すとか出来ないし。
せいぜい連れ出して、うちで養うくらいしか方法が無いよ!
いい加減諦めてくれないかな……。
そこでふと気付いた。
横に居る宰相さんが、俺に見えないように頷いている事に。
どうやら、俺のこの策が有効だと教えてくれているっぽい。
よし、このまま押すぞ!
「お前が大事にしているモノと言っただろ?
それは人だけじゃない。土地・建物・水・魔法、色々あるだろ?
使えなくするって意味でもある」
「ふん。やれるならやってみろ。お前への恨みは我だけでなく、国民からも向けられるだろう」
言われて思った。
本当だ! 国が弱体化すれば戦争が起きても不思議じゃない。
そうなったら、徴兵されるのは国民。
原因を作ったのは俺。恨む先は……俺!
だが、宰相さんは大丈夫と言わんばかりの顔をしている。
信用するかんな! 後で絶対、個別面談するからな!
「では契約成立だ。じゃあ帰るわ」
「ふははははは! 楽しみにしているぞ!」
最後に高笑いとか、どこの悪役だよ。
付き合いきれん。帰ろ帰ろ。
夜。街の外で檻の中にテントを張ってると、宰相さんが1人でやってきた。
「入れてもらっても良いですか?」
「テントの中は無理ですけど、檻の中になら」
「……ありがとうございます。失礼します」
宰相さんの頭の上には疑問符が沢山見える。
外に住んでる? 檻? 檻の中にテント?
判ります。不審者ですよね?
でも、そこは飲み込んでください。話が進まないんで。
「陛下が申し訳ありませんでした」
「いえいえ」
「あの後、かなりお怒りになって暴れられました」
「そうですか。大変でしたね」
「……他人事ですか」
「他人事なので」
それを言われても俺は知らん。
俺のせいじゃない。そうだとも。
「……とにかく。陛下には手出しをさせないようにするので」
「お願いします」
「土地を所望という事でしたが、本当に街の外でよろしいので?」
「ええ。中だと問題になる可能性もあるでしょうから」
「陛下が暗殺者を送り込むと?」
「おたくの皇帝だけじゃなくて、他国の可能性もあると思うんで」
「……なるほど。確かに。では東門の付近はどうでしょうか?」
「ここは?」
「ここは南門です。ここでは城から見えますので」
皇帝から見えない所なら良いのね。
「明日の内に杭を打って区分しておきます。その中なら自由になさってください」
「ありがとうございます」
「その代わりに、もう暴れないでくださいね?」
「迷惑をかけられなければ暴れませんよ」
「各貴族には裏で通達しておきます。それでも来るような貴族は教えて下さい。
こちらで処分しますので」
「怖~い」
「貴方の方が怖いですよ」
貴族を処分とか恐ろしいわ。
俺は人を殺したりしてないし?
貴方の言う処分って、殺したりしそうだし?
「後はですね、モンスターが攻めて来た時は戦ってもらえますか?」
「冒険者として依頼が出れば」
「モンスターが街を攻めて来た場合は、冒険者の仕事ではありません。国の仕事になります。
冒険者にも依頼は出ますが、主に討ち漏らしへの対処ですね」
「じゃあそれとは別に、国側でって事ですか?」
「そうなりますけど、表立っての契約ではありません。
なので、金銭は発生しますが、戦った名誉や栄光は手にする事は無いでしょう」
陰で活躍するヒーロー的な立場ですか。
……中二病心が騒ぐな。
「了解です」
「助かります。では次に……」
俺達の打ち合わせは深夜にまで及んだ。




