第19問 「ちょっとしたクイズ」その8・解答
まずは、問題のおさらいからです。
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天気のことわざにはいろいろあります。
次の空欄にあてはまるのは、「雨」と「晴れ」のどちらでしょう?
① 朝焼けは( )、夕焼けは( )
② 煙がまっすぐ立ち上ると( )、なびくと( )
③ ツバメが低く飛ぶと( )
④ 富士山がカサをかぶれば( )
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ポイントは次の3つ。
・低気圧に覆われると天気が悪くなる。
・低気圧では上昇気流が発生する。
・天気は西から東へと移っていくことが多い。
……という訳で、解答です!
① 朝焼けは( 雨 )、夕焼けは( 晴れ )
天気は西から東へと移っていくことが多いため、「朝焼け」の場合は天気の良い状態は既に東に移っていることになり、「夕焼け」の場合はこれから天気の良い状態がやってくる、と考えられるんですね。
日本において、春と秋は高気圧と低気圧が交互にやってくる時期ですので「晴れの次は雨、雨の次は晴れ」みたいな考えが根底にあるのだと思います。
女心と秋の空、なーんて言葉もありますしね。
② 煙がまっすぐ立ち上ると( 晴れ )、なびくと( 雨 )
煙は、まわりの空気よりも暖かいためまっすぐ上に上ろうとします。しかし上空に暖かい空気があるとそこで押さえられてしまうため、横にたなびくようになります。上空に暖かい空気があるときは低気圧があるため、雨になりやすいと言えるんですね。
③ ツバメが低く飛ぶと( 雨 )
空気中の水分が多くなると、蚊などの羽が水気をおびて、下の方を飛ぶようになります。そのため、蚊を餌にするツバメも低く飛ぶようになります。ですから「ツバメが低く飛ぶようになる」=「空気中の水分が多い」=「雨になりやすい」となる訳ですね。
④ 富士山がカサをかぶれば( 雨 )
山の近くで上昇気流が起こり、水分を多く含んだ空気が上昇し冷えると、やがて雲(かさ)ができるため、雨になりやすいということです。
③④はほぼ同じ考え方ですね。ちょっと補足します。
空気中に含むことのできる水蒸気の最大量を飽和水蒸気量といい、気温が高いほど大きく、気温が低いほど小さくなります。
(湿度)=(空気中の水蒸気量)÷(その気温における飽和水蒸気量)×100
です。
上昇気流が発生すると、地上の空気も上昇し、周りの温度が下がっていきます(1km上昇するごとに約-6.5℃)。
すると、空気中の水蒸気量は変わらなくても器が小さくなっていくため、水蒸気の割合が高くなっていくんですね。
やがて湿度100%に到達する(このときの気温を露点といいます)と、それ以上水蒸気を含むことができなくなり、空気中に水滴が浮かびます。
これが「雲」です。
雲の中で水滴が成長し、やがて重力により落下してくるものが「雨」。
ですので、「上昇気流が発生」→「雲ができやすい」→「雨が降りやすい」となる訳です。
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さて、この問題を割烹で掲載した際、より詳しい解説をコメント欄に書いていただきました。
それをご紹介しますね。
≪朝焼け&夕焼け≫ by ゆり様
日本付近で『西から東へ』天気が移ってゆくのは、上空に偏西風が流れているためです。より緯度の低い地域等では偏東風(貿易風)が流れているので、逆に『東から西へ』天気が移って行く事になります。この辺りは、秋の台風の進路を見ると、よく判ります。
フィリピン辺りまでは西へと進んでいた台風が、沖縄付近で向きを変え、そして日本付近では急速へ東へ進んで行きます。これは、上空の大気の流れを物語っています。
逆に夏場の台風が迷走し易いのは、偏西風が日本より北に位置している為、日本付近は熱帯地域状態となっているからです。
この『偏西風が日本より北』に位置している時期が、『盛夏』という訳です。
≪④富士山のことわざ≫ by 畢竟 吾煌 様
山の場合、横風によって大気が移動すると、山肌に沿って上昇させられることがあるために「カサになる」と言えます。
≪②煙のことわざ≫ by ゆり様
その『暖かい空気』との境界面が地面に接した部分が、『前線』です。
その境界面では上部の暖かい空気が、接している面で下部の冷たい空気に冷やされて飽和水蒸気量が低下し、含まれる水蒸気が凝固して雲になります。
もう一つ別の理由として、『煙がたなびくのは上空に風があるから』という場合もあります。
風=大気の動きがある、という事は近傍に前線か低気圧があるという事なので、『雨』という判定になります。
※乾燥した風=空っ風 が原因な場合は、もちろん例外です。
≪③ツバメのことわざ≫ by ゆり様
『虫が低空を飛ぶ(というより上昇出来ない)』理由には、湿度の影響の他、上昇気流がないから、という原因もあります。
つまり、暖かいポカポカ陽気な時は虫は上昇気流に運ばれて上空へ行きますが、曇った寒い日は地面付近から飛べない、ということです。
≪④富士山のことわざ≫ by ゆり様
そもそも傘雲が出来るのは、富士山頂付近に湿度の高い気流があるからです。
3〜4000mという(気象的な)低空に湿った気流あれば、当然雨は近いです。
ちなみに笠雲は、湿った気流が山腹に当たって強制的に上昇させられ、断熱圧縮と気温低下によって水蒸気が凝固するからですね。
山頂付近を通過すると上昇圧力が消失して気流が拡散し、笠雲は消失します。
(※時系列順にご紹介しました。)
※掲載にあたり、ゆり様からコメントを頂きました。
「なお、記載内容は記憶だけで書いたものなので、資料等には基づいていません。もしかしたら記憶違いがあるかも知れないので、間違ってたらごめんなさい」
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私の不十分な個所を補うべく、とても丁寧に説明して頂きました。
お二方とも、ありがとうございました。




