表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スペース飯テロ輸送艦 最強宇宙船で本物の食材を狩り尽くし、最高のグルメで銀河をわからせる  作者: 空向井くもり


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/114

第7話 ハリボテ武装輸送艦

「……では、事情を説明してください。マスター」


 ルシアによって、船長席に無理やり座らされた俺は、尋問官のような彼女の視線を受けながら、ぽつりぽつりと語り始めた。


 ここがVRゲーム『スター・フロンティア』の世界であること。

 俺がプレイヤーとして転生してきたこと。

 船以外の資産、および有機生命体のクルーが消失していること。

 そして何より――この世界で「まともな飯」を食うことが至難の業であること。


 話し終えると、ルシアはわずかに眉を寄せ、数秒間の沈黙を作った。

 高性能な電子頭脳が、俺の世迷言を演算処理している時間だ。


「……前半の『転生』云々は信じ難いですし、後半の『美味い食事』への執着も非合理的すぎて理解不能ですが」


 ルシアは冷ややかな声で結論を述べた。


「少なくとも、現状のステータスとは一致します」


 彼女はスッと背筋を伸ばし、手を差し出した。


「そして、貴方様が仰る『ゲームの中の私』ではなく、ここに存在する『本来性能の私』であれば、権限を頂ければ、あらゆる情報支援が可能です」


 その瞳には、プログラムされた忠誠心とは違う、どこか試すような光が宿っていた。

 俺は苦笑し、コンソールを叩いた。


「言われなくても、一人でまわるような船じゃないからな、頼むよ」


 他に頼るものもないし、今更ためらう理由もない。俺の操作を受け入れ、ルシアの瞳の奥で青い光が流れる。


『アクセス承認。船体制御システムとのリンクを確立します』


 声色が、事務的なシステムボイスに切り替わった。

 だが、すぐに彼女の顔がしかめっ面に戻る。


「……掌握完了。ですがマスター、報告すべき致命的な問題が二点あります」


「なんだ?」


「第一に、私のアルゴリズムです。専用の戦闘ルーチンがインストールされていないため、自律火器管制の効率はマッコウクジラ本来のスペックの23%に留まります」


「23%か……まあ、俺が手動で撃つからいい」


「そして第二に。これが深刻です」


 ルシアは空中にホログラムウィンドウを展開した。

 そこには、船の武装リストがずらりと並んでいる。


「当艦の火器の67%を占める実体弾兵器キネティック・ウェポンおよびミサイルランチャーですが……。弾薬の在庫が、ほぼゼロです」


「…………あー」


 俺は頭を抱えた。


「どういうことですか? これだけの重武装艦を作っておいて、弾を一発も積んでいないとは」


「いや、仕方ないだろ! 実弾はロマンなんだよ!!!」


 俺は身を乗り出して力説した。


「それにゲーム内じゃ、船体固定武器の弾薬なんて無限だったんだ。クールタイムさえ待てば勝手にリロードされたし、対シールド効率が悪くても弾幕でごり押せた。いちいち金払って弾補充する仕様じゃなかったんだよ」


「……はぁ」


 本日二度目の、深い深いため息。


「ここは現実です、マスター。撃てば減りますし、無ければ出ません。……つまり現状、この船の戦力の七割はただの飾りです」


「うっ」


「残る光学、電子、プラズマ等のエネルギー兵器だけで戦うしかありませんね。……火器管制のキャリブレーションも必要です。画面の真ん中から弾が出るわけではありませんから」


 ルシアは手際よくウィンドウを操作し、一枚のクエストデータを表示した。


「ちょうどいい輸送依頼があります。隣接星系への『鉱物資源輸送』。報酬は相場より高めですが、理由は『海賊出没率の高い危険航路』だからです」


「おい、弾がないのに海賊退治か?」


「大丈夫です。見てください、この船の外観を」


 ルシアはブリッジのスクリーンに、外から見た『マッコウクジラ』の姿を映し出した。

 全長500メートル。つるりとした流線型の船体。

 一見すると、デブリ除去用の小口径レーザー機銃くらいしか見当たらない、ただの巨大な輸送船だ。


「マッコウクジラの武装は全て装甲下に隠蔽(コンシール)されています。傍目には無防備な大型艦に見えるでしょう」


「それがマズイんじゃないか? カモだろ」


「いいえ。この世界の常識では、輸送船の防衛手段は二つ。『護衛艦を雇う』か、『自身の船内に戦闘機や高価な戦闘ドローンを搭載する』かです」


 ルシアは淡々と解説する。


「単独で航行するこのサイズの船は、後者――つまり『内部に強力な迎撃戦力を抱えている』と見なされます。中身が空っぽで弾もないとは夢にも思わないでしょう」


「……なるほど。ハッタリで押し通すわけか」


「それに、一般的な宙賊レベルなら稼働可能な武装だけでも問題ありません。……何より、この巨体を維持するには、これくらい割の良い仕事を回さないと来週には破産します」


「……仰る通りで」


 数時間後。俺たちの前には、依頼主である小太りな商人が立っていた。


「いやぁ、助かりますよ! 最近はこの航路も『宙賊』が多くて困っていたんですが……」


 商人は『マッコウクジラ』を見上げ、値踏みするように目を細めた。

 護衛艦の姿はない。あるのは巨大な輸送船が一隻のみ。


「……ふむ。単独行ですか。ということは、艦載機搭載型ですかな? あるいはこのサイズなら相当な数のドローンを積めそうだ」


 商人は勝手に納得して頷いている。

 俺は肯定も否定もせず、ただ曖昧に頷いた。


「……ああ。任せてくれ」


 俺は努めて低い声で、短く答えた。

 ボロが出ないようにするための棒読みだが、商人には「手の内を明かさない熟練者の用心深さ」と映ったらしい。

 確率選択肢の成功率を高める交渉系パークの効果が、表情とかにいい感じに作用してくれているのかもしれない。


「素晴らしい……! それに、そちらのオートマトンも」


 商人の視線が、俺の斜め後ろに控えるルシアに向けられた。

 彼女は無表情で直立しているだけだが、その立ち姿には一分の隙もない。


 オートマトン、か。

 この辺境の商人の間では、高性能なアンドロイドをそう呼ぶのが流行りなのか、あるいは単にこいつが古いタイプの人間なのか。


「これほど精巧なオートマトンは、目が飛び出るほど高価だ。それを惜しげもなく手元に置いておける資金力があるなら、防衛設備も万全でしょう」


 商人はホクホク顔で契約書にサインをした。

 俺は背中を冷や汗が伝うのを感じていた。


 だが、もう後戻りはできない。

 俺たちは指定されたコンテナを搬入し、固定する作業に取り掛かった。


「計算通りですね、マスター」


 すれ違いざま、ルシアが小声で囁く。


「相手が勝手に過大評価してくれました。これで前金は確保です。……さあ、出航しましょう。私の性能テストも兼ねて、素晴らしい初仕事になりそうです」


 その口元が、わずかに――本当にわずかにだが、好戦的に歪んだのを見た気がした。


 俺は覚悟を決めて操縦席に座る。

 実弾在庫ゼロの銀河級輸送船、いざ抜錨だ。

 面白かった、続きが楽しみ、と思っていただけたら「★」をポチッと!


 アキトの明日の夕飯が少しグレードアップするかもしれません。よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ