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092 レンちゃん先生の課外授業


 むにゃー! レンです。


 ってなわけで早くも授業三回目です。え? 二回目? 何事も無く普通に終わったよ! 初回同様、ケインはしどろもどろでリューはウザかった!

 もうね……いや、授業始まるとリューは凄い頑張ってるんだけど、その前後とか休憩中とかがさぁ……

 ケインは、まあ……毎回、何かを言おうとしてて、何を言おうとしてるのかは分からなくは無いんだけど、言いたいこと有るならちゃんと言えよ! 一応毎回待ってやってるんだけどね、私は! 温情かけて待ってやってるんだから早く言えよ! このチキンが!



 ……まあいいや、それで今日は三回目ね。三回目の後半戦、計算の勉強中。

 二回目から後半戦は計算教えるようにしたんだよね。流石に私が飽きた。なのでこれからは前半読み書き、後半計算って形で行こうと思います。

 間の休憩時間? 別に何もしないよ。ただ休むだけ。ジュース? 出すわけ無いじゃん。初回は特別サービスだよ。リュー、うるせえ! そんな態度だから出したくないんだよ! いい加減悟れっ……! ……ちょっとざわざわしちゃったね、猛省。


 ってなわけで後半戦も終了。うーん、計算はみんな微妙だなー……一桁二桁はまだいいけど、三桁辺りから大分あやしい。加算減算でこれだと、乗算除算は……あ、でもリコは凄い勢いで解いてるし、トリエラも割とちゃんと出来てるし、んー。なんとかなるかなあ? というかリコ、ちょっと頭良すぎない? あ、トリエラとリコは先に乗算除算やってるからね。他の面々と進度違うから。


 あ、そうそう。今日は勉強云々よりもちょっと造って来たものがあるんだよ、アルルとクロに。それを渡したいから後半戦はちょっと早めに切り上げた。


「アルル、クロ、ちょっといいですか?」


「んー? なにー?」


「レンちゃ?」


「これを二人にあげます」


 じゃーん! 投石紐ー! 俗にスリングとか言うやつね。ぐるぐる回して石をびゅーんと飛ばすやつだ! 鍛冶の合間にちょっと作ってみた。


「……なにこれ? 紐? なんかあっちこっち縛ってて……」


「んぅ?」


「見ててください」


 適当なサイズの石を適当に幾つか集めて、適当に離れてる木を狙ってまず一投目。ぐーるぐるびょーん! がつっ!


 続いて二投目。ぐるぐるぐるびゅーん! ガスッ!


 止めの三投目。びゅんびゅんびゅんひゅごっ! ズガンッ!


 うん、全弾同じ所に命中。碌に練習して無かったけど【狙撃】スキルのお陰で必中。スキル補正って凄いわー。

 投げるごとに徐々に威力を上げていったので、三発目では木の幹が軽く抉れてる。どれほどの威力が出せるのか理解できたと思う。


「……と、これはこうやって使います」


 あれ? 反応が無い? ってみんなぽかーんってしてる。さっきまでケインやボーマンにぐだぐだと愚痴ってたリューも半口開けてこっち見てる。ただでさえ馬鹿そうな顔してるのに、そんな顔してたらもっと馬鹿にみえるよ?


「え……なにそれ……」


「全部同じ所に当たった……? 狙ってやったの……?」


「……木が抉れてる。これ、頭とかに当たったらやばくないか?」


 ふむーん、シェリルさんやマリクルもびっくりしてるね。ドッキリ成功?

 んー、ちょっと周囲を見回してみたら、ちょっと離れたところの林の草むらに角兎発見。結構大きいかな?

 それを狙ってもう一投。ヒュゴッ! なんて風斬り音と共に飛んで行って、ボグン! なんてえげつない音を立てて頭部に命中。うん、一撃で仕留めたっぽい? あ、ベル、アレ持ってきてもらっていい?


「こんな感じです」


 いや、前にアルルが弓矢使いたがってるってトリエラ達が言ってたじゃない? でも矢が消耗品だから難しいとかなんとか? で、ちょっと考えてみて思いついたのがこれなんだよね。

 これなら弾の補充はその辺で適当に拾えばいいので練習もしやすいし、弓と違って片手で扱える。これで【狙撃】スキルを覚えれば将来的に弓矢使いにコンバートしても死にスキルにならないはず? 威力も馬鹿にならないし、角兎くらいなら上手く当てれば、今、私がやったみたいにこれだけでも倒せる。

 なんてことを説明してみたら、みんな物凄い食いついてきた。


「ええええ!? なにこの威力!? え、これ私に!?」


「レンちゃ、すごーい!」


「い、石を投げただけで角兎が……!?」


「すげー! なあちんちくりん、オレにも作ってくれよ!」


 嫌だよ馬鹿野郎。お前はいい加減に口の利き方を覚えろ。


 と言うかこれはアルルとクロの為に造ったのだ。トリエラには剣と革鎧をあげて魔法も教えたし、リコもマントあげて魔法教えたし? そうなると二人にももうちょっとなにかしてあげたかったんだよね。

 シェリルさんがめっちゃガン見してるけど……まあ、仮に量産するにしてもその内ね、その内。ぶっちゃけ面倒くさいし、私的には鍛冶修練のほうが優先だし?


 という訳で二人の腰の辺りに投石紐を縛って固定。こうしておけば飾り紐に見えなくも無いかな?


「こうしておけば目立ちませんし、邪魔にもなりません」


「おおー! 凄い! レン、ありがとー!」


 おお、アルルのハグ! よいぞよいぞ、もっと褒め称えるが良い!


 みんなで滅茶苦茶騒ぎながら、二人はご飯もそっちのけで早速投石の練習をしだした。全然当たらないけど、まあなんだ、がんば!


 あ、そういえばこの仕留めた兎どうしよう? 一匹じゃ皆で分けても微々たる量だし、んー? って悩んでたらノルンがこっそり兎獲ってきてたみたいで、まとめて10匹出してきた。

 ……ねえ、見張りしてたんじゃないの? え? 見張りしながらベルに獲らせた? 随分と器用なことしますね? は? 自分だったらもっと沢山獲れた? あ、はい。そうですか……え? 血抜きは終わってる? あ、はい。ありがとうございます。

 うん、まあ、なんだ。折角だし皆に兎肉の串焼きでも振舞おうか。前と同じ香草焼きね? ってなわけでマリクルさん、解体お願いします。


「分けてもらっていいのか?」


「ちょっと色々と考えるのが面倒になったので、折角だから皆で食べちゃいましょう」


 私だって偶には何も考えたくなくて逃避したい時があるんだよ……


「うん? よく分からんが、分かった。ありがたく食わせてもらう」


 毛皮は私が貰ってくけどね。提供するのは肉だけよ? あー、ついでだし汁物も作ろうかな? と言うわけで土魔法で簡易竈を作りながらアルルを呼ぶ。簡単なレシピ教えるよー。


「レシピ、いいの?」


「そんなに難しいものじゃないので、料理をしてればその内自分で似たようなもの作るようになりますよ」


 材料も買ったものじゃなく、調味料はその辺で採ったハーブとか自生してる香辛料とかだし、野菜代わりの野草や山菜類もその辺で採ったやつなので、材料費を考えると実質無料だったりする。肉も自分で獲ったしね。

 竈の火は私が火魔法で出す。薪拾ってくるの面倒だし、今回だけの代用ってことで。

 ばらした肉はこっちの汁物の材料に先に回してもらって、後からばらした物を串焼きに。肉を焼くのはアルル以外のトリエラ達女子三人に任せた。前にやったから判るでしょ、ってことで。

 マリクルは解体の続き。男子メンバーは涎垂らして待ってる。役立たず共め、皿の用意をしたりしてるシェリルさん達を見習え!

 ってなわけでかんせーい! 10匹分の肉なので、一人一匹位の量? 普通にお腹一杯に食べられるかな? 食器の類は【ストレージ】に木製の皿とかがそれなりの量が入ってるのでそれを使ってる。こんなこともあろうかと! 用意しておいたのさ! ……ソロだけどね。


「美味しいいいいいいい!」


「なんだこれ、アルルの作った串焼きよりうめえ!?」


「がつがつがつがつがつ!」


「メルティ、折角なんだからお腹一杯食べなさい!」


「レンちゃ、すーぷおいしー! これすきー!」


 うんうん、沢山お食べ? ちなみにパンはみんなそれぞれ、自分で買って来た奴を食べてる。スープに浸して柔らかくして食べたり? 肉とスープだけだとお腹の中微妙な感じになるからね、穀類大事!

 で、当然三馬鹿がお代わりしまくったり、全部食べようとしちゃうわけだ? 阻止したけど。

 シェリルさんがもの欲しそうにしてたので串焼きのほうはお土産に持たせることにした。妹さんに沢山食べさせたいんだよね、分かります。

 汁物は全部綺麗さっぱり無くなった。こっちもやっぱり三馬鹿が沢山食べてた。ケインが『レンの手料理……!』とか言ってて気持ち悪かった。


「勉強も教えてもらって、こんな土産まで頂いて……本当にもう、なんと言えばいいのか」


「ただの、気まぐれですから気にしないでください」


「いえ、さっきの料理で使ってた食べられる野草なんて私、知りませんでしたし……読み書き以外にもこんな色々な知識を見せてもらって、本当にありがとうございます!」


 いや、うん。気にしないでいいよ、本当に。だからその内その猫耳と尻尾触らせてくれませんかね! もふもふしたいです!

 なんて邪なことを考えてたりするけど、そんなことを感じさせないように【隠蔽】を使ってるとは思うまい!



 うん、ご飯も食べたしそろそろ解散なんだ。ちなみに勉強やご飯を食べる時に使ってた机や教卓は毎回消してるからね?

 トリエラ達はこれから薬草採取と兎狩りに行くらしい。三馬鹿は夜も沢山肉を食べるために気合が入ってる。

 シェリルさん達は今日はもう戻って資料室で勉強するらしい。お土産の焼肉の匂いをさせたまま森に入るのは危ないから、と言う判断だとか。ゴブリンとか寄って来たら危ないもんね。


 で、私はというとこれから森の奥に行くのだ。

 親方さん達にもその旨は伝えてあるので問題ない。今回行くのは以前リリーさん達と行った薬草採取の穴場よりも奥地。

 何をしにいくのかって? ちょっとね、やりたいことがあるんだよね。分かるかなー? 分かんないだろうなー?


 ……いや、日課だよ。日課と言いつつもう二ヶ月以上こなしてないからね! 森の奥で自宅出して二泊して、明後日にはここで授業やってから帰るのだ!

 

 いや、別に我慢できるけどさ……最近ちょっと色々あり過ぎて、ストレス発散したいんだよ……


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― 新着の感想 ―
[一言] なるほど、1人遊びで隠れてストレス発散ですか(´・ω・`) 正に『若い性を持て余す』ですな しかし、ケインはもうダメだね。 最後のチャンスをヘタレて無駄にするとは・・・
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