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056 わらしべ長者?


 リリーさんとじゃれあってたら村長さんが声を掛けてきた。


「おい、もういいか?」


「あ、はい」


 ごめんね? リリーさんが可愛いすぎてね?


「今回の合格はアンタだけだ。取り敢えず売買を早く済ませたいんだが、大丈夫か?」


「はい、大丈夫です」


「じゃあこっちだ。来てくれ」


 卵の保管場所に連れて行ってくれるらしい。リリーさん達も一緒にぞろぞろと付いていく。


「ところで、あのスープなんだが……」


「ああ、あれですか。鍋に残ってる分はどうぞ召し上がってください」


「ありがたい。それと、あれにつかってたあの黒い玉葱なんだが、譲ってもらうわけにはいかんか?」


「申し訳ありませんが……」


「別に作り方を教えてくれと言ってる訳じゃない。金なら払う!」


「……すみません」


 ごめんなさい。作るの面倒なんだよ、アレ。

 行程自体は単純だけど、とにかく時間が掛かる。ついでに火を使い続けるからこの世界だとかなり燃料費が掛かる。私は魔導コンロがあるから魔力を補充すればいいけど、それでも時間が掛かりすぎる。以上の理由でお断りします。いや、理由の説明なんてしませんけどね?

 え? 創造魔法を使えば直ぐだ? いや、あれで料理作ると、なんかコレジャナイ感があるというか……


「ぬう、駄目か……残念だ」


 凄い残念そうだけど、こればっかりは仕方ない。だって面倒なんだもの。


「あの、レンさん……その」


「今度ね?」


「はい!」


 リリーさんが残念な子になってしまった。餌付けしすぎたんだ!


「そう言えば宿のほうはどうでした?」


「ありませんでした」


「はい?」


「そもそも、宿がありませんでした」


「え、じゃあ買い付けに来た商人さんってどこで……」


「街道から村に続く道の周囲が拓けてましたよね? あの辺り一体が全て野営地になってるそうで、商人はそこで馬車で寝るそうです」


 積荷を守るためでもあるらしい。なるほど。


「というか、宿探しから戻ってみればレンさんは居ないし馬車も無いし、探したんですよ?」


 ははは。ごめんね?


 なんてやっているうちに保管場所に着いたらしい。地下に続く穴?


「この先だ」


「これ……もしかして氷室ですか?」


「そうだ。食い物をなるべく長く保管するにはこれが一番だからな」


 正直おどろいた。中世の卵の保管なんて常温で放置してるイメージがあったんだけど、ちゃんとしてるんだね。いや、現代の外国も未だにそんな感じだけど。日本マジ異常。


 階段を下りて進んでいくと徐々に周囲の温度が低くなっていくのがわかる。でも、なんだか……?


「あんまり、寒くないー?」


「アリサもそう思う?」


「リリーさん達もですか?」


 どうやら私の気のせいではないらしい。

 今はもう六月だ。でも、いくらなんでも溜め込んだ雪がこんなに早く無くなるというのは考えにくい。どういうことだろう?


「……気付いたか。

 実は先月、卵を盗みに入った奴が居てな……そいつは捕まえたんだが、逃げ出す時に扉を開けっ放しにしやがったんだ。気付くのに時間がかかってな、お陰で雪がかなり解けちまった。思い出すのも忌々しい!」


 ……なんと言うか。

 つまるところ、それが原因で卵の保管に問題が生じて販売する量を減らさざるを得なくなった、と言うことなんだろうけど。

 いや、ご愁傷様としか言いようがないんだけど、でも、これは流石に……んー。


「着いたぞ。この扉の先に卵が保管してある。好きなだけ買ってくれ」


「え、好きなだけですか?」


「正直、買って貰えるなら全部買ってもらって構わん。

 この先売れる量が減るのは確実だからな。今のうちに出来るだけ稼いでおきたい。それに変に残されて売れ残っても困る」


「そういうわけですか……」


 扉を開けてもらって中に入りながらそんなことを話す。扉の先には卵が乗ったざるがいくつも置かれていた。かなり多いようにみえるけど、それは今の時点での数であってこの先のことを考えると少ないんだろうなあ……うーん。


「それでは、選ばせて貰っても?」


「構わん」


 鑑定を使って卵を選んでいく。選定基準は産まれたてのもの、サルモネラ菌に感染していないもの。

 【鑑定】のレベルが10になってからこういった細かいことに関しても分かるようになった。凄く便利だ。

 ひょいひょいと選んでいく。全体の3割位は感染してるっぽい。多いのか少ないのか良く分からないけど、それらは買わないので問題ない。


「……なあアンタ、もしかして食ったら腹壊す奴がわかってるのか?」


「……」


 答えない。余計なことは言わないのが吉だ。


 選別完了。ここにあった卵の半分位の量だ。500個位? 多いように感じるかもしれないけど、料理で使ってればこの位の数は直ぐ無くなる。お菓子も作ればあっという間だ。この10倍の量は欲しい。


「……こんなに買うのか。いや、助かることは助かるんだが」


「はい。色々作りたいものがあるので」


 この世界の卵は高い。以前宿屋で譲ってもらった時は一つで銀貨1枚だった。大体千円位だろうか? いや、もっとする?

 村長さんに値段を確認したところ、仕入れ値と言うことで一つ小銀貨5枚だと言う。

 それを500個。およそ25万円。金貨2枚と小金貨5枚。高っ!


「じゃあこれが代金です」


「うむ。確かに」


 何はともあれこれで卵ゲット! 色々作れるよ! 村長さんありがとう!


 ……んー、ここで恩を売っておいたら、次に来た時もまた売ってくれるかなあ?


「あの、卵を売って頂いたお礼と言うわけじゃないんですが」


「うん?」


 【ストレージ】から大量の雪を取り出す。

 今年の一月二月の大雪の時、家が雪に埋まってしまった時に雪かきのつもりで家の周囲の雪を収納したことがあった。

 その時、周囲の雪が一瞬でなくなるのが何となく面白くて家の周辺の雪を全部収納して回ったのだ。そしてその時収納した大量の雪が丸々【ストレージ】に残ったままになっている。

 正直、今出した分だけでも1割も減ってない。


「……え?」


「この位あれば冬まで持ちますか?」


「ちょっと待ってくれ。なんだこれ? え? なに?」


 混乱しておられる。


「気にしないでください。まだまだ沢山余ってるので」


「……もう、色々考えるのが面倒になってきた」


「難しく考えないほうがいいですよ。この人、色々規格外なので」


 リリーさん、ちょっと酷くない?


「そうだな……理解できないことを無理に理解しようとするよりも今は目の前にあるものの方が重要だ。

 それで、その……本当にこの大量の雪を貰ってしまっていいのか? はっきり言って、今この村ではその卵500個よりも貴重なものだぞ?」


「構いませんよ。さっきも言いましたが、まだまだ沢山ありますから」


「そうか……感謝する。正直、救われた。あんたはこの村の恩人だ! この金は返す。アンタから金は貰えない。金を返すくらいじゃ全然足りないが……」


 よく分からないけど卵代儲けた? ってことでいいのかな? でも流石にちょっと悪い気がする。うーん?


「気にしないでいいですよ。あ、あとこれもどうぞ」


「これは……さっきは譲れないと」


「ついでと言うことで」


「……ありがとう。本当に、ありがとう」


 私が渡したのはさっきのオニオンスープの元が入った瓶だ。

 詳細なレシピを教えるつもりもないし、さっき作ったレシピを改めて教えるつもりもない。

 さっきは譲るのを渋ったけど、ぶっちゃけると実は同じ瓶があと四つあったりする。まとめて沢山作ったのだ。

 とは言ってもまた作るのは時間かかるから、それがいやで渋ったんだけどね。


 でもここで恩を売っておけばまた次来た時に卵を売ってくれるかもしれないし、無駄にはならないはず?


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― 新着の感想 ―
[一言] 飴色玉ねぎの作り方くらい教えてもいい気もしますね、火の管理大変だけど出来る人はできるだろうし。
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