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036 キモーイ


 朝、宿を出るとそこにはニールが居ました。もう勘弁してよ……


「あ、やっと出てきた」


 返事を返してはだめだ。無視。


「なあ、ちょっと話をしたいんだけどいいか?」


 無視。


「おい、無視するなよ!」


「すみません、急いでるので」


 完全にスルー。ノルンも無視してる。ちなみにニールの仲間達も周囲に居たりするが、私の余りに華麗なスルーに言葉も無いようだ。


 だと言うのに、歩きながらも延々と自分勝手な能書きを垂れている。

 曰く、私が森を出ることになったのは自分の所為、だからここで俺が面倒を見るのは当然のこと、困ってることがあれば絶対助ける、とか何とか。放っておいてくれ、と言うのはだめらしい。意味がわからない。


「分かりました。今、凄く困ってることがひとつだけあるので、それを解決してください」


「おお! なんだ!? 俺に出来ることなら何でもするぞ!」


「絶対ですか?」


「絶対だ!」


「では、たった今、現在進行形で変な男性に付きまとわれて非常に困ってます。何とかしてください」


「……」


 固まってしまった。自分がどれだけ迷惑がられているかやっと理解したらしい。




 やっと静かになったのでそのまま放置してさっさと街の外へ移動。子供達を集めるとそのまま北東の川を目指す。

 ちょっと後ろを見ると、まだアレが付いて来てる。本当になんなの? 気持ち悪い……


 川上の森に到着。スモモが生えてる辺りまで移動して薬草採取開始。子供達のうちの何人かはスモモや食べられる野草なんかを集めたりしてる。私も後で魚……は、止めておこう。変な連中が居るし。色々見られたくない。




 採取中にオークが来てたらしいけど、ノルンがあっさり倒してた。そのオークを見ながら、確かコリー? がおかしい事を言ってる。


「わたし達護衛でついてきたんでしょ? なら、あのオークって山分けだよね?」


「え? じゃあ今日はお肉食べられるんだ、やった!」


「いや、それは無理じゃないかな……」


「なんで? 私達守ってあげてるんだよ?」


「いやいや、どう考えても違うでしょ?」


 分けるわけないでしょう。と言うか、護衛のつもりだったの? 誰もそんなこと頼んでないよ?

 押しかけて勝手に護衛と言い張った挙句に人の獲物を横取りするつもりだったのか……恐ろしい。やはり徹底的に拒否して正解だった。帰ったらギルドマスターに報告しておこう。


「えー……じゃあ今日収入無しってこと?」


「あ、じゃあ私達も薬草採取すればいいんじゃない?」


「そうだね、そうしようか」


「……」


 おおう、低ランクの採取地荒らしまでするつもりか。さっき諌めてた男の人が凄い困った顔になってる。この人常識人枠かな、大変だね。ニール? さっきから無言でずっと私を見てるよ。キモイ。


 お昼時になったのでテントを出して食事の準備をする。

 最近は子供達の分もまとめて作ってる。但し、材料の半分は子供達の提供。材料の残り半分と、調味料と調理の手間は私持ちだけど、完全に情が移ってしまった今となってはこの程度は気にもならない。

 今日は何を作ろうかな……ああ、さっきノルンが倒したオークがあったね。子供達の提供食材はじゃが芋。それとさっき採集してた葉野菜っぽい野草の類。うーん、野菜炒めもどきで良いかな? 塩胡椒と、隠し味に唐辛子少々でちょっとピリ辛に仕上げよう。

 私と子供の分でかなりの量を作った。子供達は皆目を輝かせてる。

 ここ最近の餌付けですっかり調教完了されてしまったね、ごめんね。




 ……ところで、何故貴方達まで一緒に食べようとしてるんでしょうか。貴方達の分はありませんよ。

 そう告げるとなぜかコリーが怒り出した。


「ちょっと! わたし達護衛してあげてるんだよ!? なのに、そのわたし達の分がないってどういうこと?」


「誰もそんなことは頼んでません、貴方達が勝手についてきただけです。それにこの子達はちゃんと食材を出してます。勝手についてきて、その上ご飯まで集ろうとか……Dランクの冒険者と言うのはそういう方ばかりなんですか?」


「な……」


 顔を真っ赤にして、口をぱくぱくさせてる。そんなコリーの腕を引っ張っていって常識人の人が色々言い含め、必死に説明してる。

 暫くすると、理解はしたが納得はしてない、と言う感じで不貞腐れて保存食をかじっていた。そして未だにこっちを見てるニール。マジキモイ。




 食事の後も採取。そして程々で切り上げていつも通り早目に帰る。


「ねえ、ちょっと聞きたいんだけど、なんでこんなに早く切り上げるんだい? まだまだ時間に余裕があると思うんだけど」


 常識人の人だ。まあ、この人には特に悪い印象は無いので答えてもいいかな。


「買取窓口が混むのが嫌だからです。それに、余り遅くなると子供達も危ないですし」


「ああ、なるほど……」


 子供達を見ながら納得したように頷いてる。いや、メインの理由は窓口のほうだからね? 照れ隠しとかじゃないからね? 本当だよ?



 その後、帰り道の間に一方的に自己紹介された。

 常識人の人はベックさん。17歳。この人はこのパーティーで唯一Cランクらしい。

 性格も悪いようには見えないし常識人だし、なんでこんなパーティーに居るのか謎すぎる。

 コリーとよくおしゃべりしてる女の子はテス。ニールの恋人だそうだ。

 ああ、この子があの薬の……でも今日見た感じだとコリーに追従するばかりで正直……

 あとはコリーとニール。

 コリーは思った以上に図々しい性格だった。びっくりだよ! あと、ニールは心底気持ち悪い。

 で、ベック以外の3人は去年の秋頃にDランクになったばかりだそうで、その時に一度里帰りして私に遭遇した、ということらしい。


 正直貴方達の事情とかどうでもいいんですけどね。そんな身の上話されても正直困る……



 ギルドに帰って換金が終わった後、サレナさんがいたのでニール達の行動について報告した。ギルドマスターに報告しておく、とのこと。

 恐らく今後そういった行動をしないように厳重注意がされるだろう、だって。


 これで明日からも安心してお仕事ができるね。うんうん。


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― 新着の感想 ―
[一言] ニールもキツいけどコリーがさらに酷いなあ こういう厚かましい人間とは距離を置かないと酷いことになりますよね
[一言] あ、この3人とも全員ヤバい連中だった。 ベックさんはこいつらが致命的なトラブル起こして巻き込まれる前に逃げた方がいいよ
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