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113 引きこもりの森 三回目


 ってな訳で翌日。


 うん、沢山寝たからちょっとすっきりした。やっぱりストレスが溜まった時は趣味で発散するのがベストだね?

 え? 趣味がなんなのかって?

 それはあれだよ、自由気ままに好き勝手物作りする事と、美味しいご飯を食べる事と、ゆっくり沢山寝る事と、存分に日課する事だよ。つまり今回は沢山寝たからすっきりできたって事。

 いや、本当は久しぶりに日課でも良かったんだけどね? でもね? こう、イライラしながらだと盛り上がらないと言うか、できれば余計な事を考えずに集中したいと言うか……言わせんなよ、恥ずかしい。



 さて、細かい事はさておき、今日はトリエラ達が来る日。なので余り時間の掛かる事は出来ない。

 と言う訳で今日は時間つぶしに料理の仕込をしようかなーと思います。剣を打つのは飽きた。

 ん? 昨日のアレ? ああ、竜の翼膜ね……あれ、さっきちょっと【鑑定】してみたんだけど、ちょっとどうしていいか分からないレベルのモノだったのでぶっちゃけ今の私では無駄にしちゃうだけだと思う。だから取り敢えず、パス。

 あれね、竜は竜でもエルダードラゴンの翼膜だったんだよ。エルダーなの、分かる?


 ドラゴンって言っても歳を重ねるほどに強力になるんだけどね? エルダーって言ったら普通に成長した場合の最高峰なわけですよ。

 下から、ドラゴネット、レッサー、メジャー、グレーター、エルダー。エルダーになるのに何百年掛かるか分かる? 私にも良く分からない位長い年月を経ないといけないの。

 うん、正直申しまして、そんなトンデモ素材を扱う自信ないんですよ? せめて下位の亜竜種とかの素材を扱ってからじゃないと駄目にしちゃう予感がひしひしとするわけですよ?

 と言う訳でなので暫しの間【ストレージ】で死蔵と言うか肥やしになってもらうしかないわけであります。


 いや、だってアダマンタイトですら三日ぶっ通しで練習してやっと扱いを覚えたんだよ? ぶっつけ本番でなんとかするとか、絶対無理! 研究の時間を下さい! いや、ホントマジで!



 と、言う訳であれこれと料理やらお菓子やら作ってるうちにお昼も過ぎて、トリエラ達がやって来た。

 ちなみにやってきたメンバーはトリエラ、アルル、リューの三人。今回はこの三人だったけど、次の時にはまた別の組み合わせで来る事になってたりする。

 組み合わせは男子一人に女子二人。但し、ケインとボーマンは含まれない。理由? 私が家に上げたくないからだよ、分かるでしょ?


「……森の奥で野営するって言ってなかった?」


「はい。森の奥で寝泊りするんですから、野営ですよ?」


「……」


「……」


「……」


「いや、もういいや……レンだし……」


 あれ? また酷い事言われてる? ちなみにトリエラ達は森の途中で迷子になってたので、ノルンに迎えに行ってもらった。

 そしてなんだか遠い目をしたトリエラ達から、街で聞き集めた情報を教えて貰う。



 討伐隊の本隊と騎士団は既に街を出て前線の拠点に移動しており、今現在街に残ってるのは予備戦力の冒険者と騎士団の一部だけらしい。

 前線からは定期的に斥候が街に情報を持ち帰り、その一部は公開される事になってるとの事。避難をするにしても判断の基準になれば、と言う理由からだとか。

 孤児院にはトリエラ達以外にも国内で活動してる孤児院出身の冒険者が何人か帰ってきており、私達同様に非常時には避難の護衛などを支援するつもりで居るようだ、との事だった。


 んー、皆、考える事は一緒か。


 孤児院に帰ってきた面々は全員冒険者になった子達で、その面々はトリエラ達同様に多めに食料を持ち込んできたらしい。なんと言うか……うん。ちょっと泣けてくる話だ。

 ちなみに帰ってきたメンバーの中には嘗てケインを苛めていたボブも居るとかで、ケインは非常に面白い表情をしていたとか何とか……ざまあ。


 私の事は、院長先生にしか伝えていないらしい。職員の中に例の商人と繋がってる人間が居ないとも限らないし、小さい子供達に至ってはポロリと零してしまう可能性も否定できなかったから、との事だった。

 孤児院に集まった面々は院の空き部屋で寝泊りしているらしく、宿代は掛からないらしい。とは言え全員が多少なりとも院長先生に無理矢理宿代を押し付けており、皆どこまでも考える事は一緒なんだなあ、と微笑ましい気持ちになった。

 そしてそうした面々は全員、日中には近隣の狩場や採取地へ出かけて冬場でも採れる薬草や食べられる山菜を集めたり、ゴブリンを狩って日銭を稼いでは院長先生に渡してるらしい……みんな良い子だねえ、うんうん。


「私も後で色々用意するので、持って帰ってください」


「それはいいんだけど、大丈夫なの?」


「問題ありません」


 寧ろ、自重しないで色々押し付け過ぎる方が問題になると言うね。なので程々に?


 現在、院に居る孤児だけで40人以上、帰ってきた子達が20人以上と言うのだから、食事だけでも侭ならない気がする。初日は持ち込んだ食料と採取して来た食べ物などで何とかなったらしいけど、余り長期滞在になる様なら何か対策を考えないといけないかもしれない……と言うか、森の奥まで採取に来られると私が今自宅を出してるここ迄来るかもしれないので、場合によってはもっと森の奥まで移動する事も視野に入れておかないと駄目かな?



 色々と話を聞いている内に気付けばいつの間にか日が落ちており、今から帰るには何かと危険が多い時間帯。元からそのつもりで居たのもあって、トリエラ達には泊まっていく様にと伝える。と言うか命令ね? 拒否権はない。

 元々オニールの街からこの森まではそれなりに離れてるし、更に家を出したこの場所は結構森の奥の方なので、ここ迄来るにしても結構時間がかかる。その証拠に、実際トリエラ達が私の家に着いたのはノルンの迎えがあっても昼過ぎだった。


 そして今から帰るとなると真っ暗な森の中を進んで行かないといけない訳で、そうなると私が設置した魔物避けの『結界塔』から出てからも結構な時間を歩かないといけない。

 暗い森の中を移動するとなれば当然魔物に襲われる危険も高くなるし、そんな危ない真似をさせるつもりは毛頭ない。故に強制お泊りである。

 ちなみに反対意見は出なかった。さもありなん。


 と言う訳で晩御飯も気合を入れて作る訳です。と言っても流石に海鮮類を使う様な真似はしない。

 作ったのはクリームシチュー。寒い日はコレでしょ! いや、別にビーフシチューでも良かったんだけどね……単に私が食べたかっただけとも言う。だって折角牛乳を沢山確保してあるんだしね?


「なにこれ? なにこれ! なにこれー!?」


「なんだこれ、美味すぎる……」


「レン……いや、もういいや……」


 順番にアルル、リュー、トリエラの反応。いやー、好評のようですね? とは言え、我ながら非常に美味しい。コカトリスの腿肉が効いてるネ! あ、ホワイトソースを使う料理ならグラタンもいいよなあ……今度作ろうかな。


「お気に召したようで何よりです。お代わりもありますよ?」


「ああ、うん。貰うけどね……? でも一体何処でこんな料理……いや、でもレンだしなあ……」


 トリエラの中の私の人物像って一体どうなってるの? いや、別に聞きたくないけどね? 


 ちなみにパンは天然酵母を使って焼いたふんわりやわらかロールパン。バターも効いてます。


「このパンだけでもかなりのご馳走なんじゃない……? これ、一体どうやって作るんだろう……」


 アルルは途中からうんうん唸りながら食べるようになっていた。リューは二口目からは無言で掻き込む様に食べてる。とは言っても動きが早いだけで、しっかり味わって食べてる様子。


 そして三十分後、そこには打ち上げられたトドが三匹。はいはい、いいからみんなさっさとお風呂入って早く寝ようねー?


 と言う訳で三人を順番にお風呂に放り込んでいく。私? 私は一応家主なので一番風呂を頂いてます。

 順番待ちの面々は私と一緒にお茶しながら世間話。と言っても話す事はどうしても孤児院の事がメインになる。

 色々話した結果、現時点ではまだ食料は余裕があるみたいだけど、帰郷した連中が居るお陰で寝床の布団が足りてないみたいなので、食料よりもそっちを優先でなんとかした方がいい気がする。


「んー……持たせるのは食料品の方がいいと思うんですけど……とは言え、他の皆も持ち寄ってるようですし、採取したりもしてるようですから……そうですね、余ってる毛皮があるので、明日はそれを多目に幾つか持っていってください」


「毛皮が余ってるとか……でも、ありがたく貰っておくよ、ありがとね」


「どういたしまして?」


 レッサーウルフの毛皮とか、正直言うとかなり余ってるので別に問題はない。ノルンと一緒に居ても襲ってくるような格の違いがわからないようなアホなのが結構多くて、返り討ちにするだけでもどんどん溜まるんだよね……あとはゴブリンとかも。

 どちらも煮ても焼いても食えないので、死体だけが【ストレージ】に溜まっていく。一々焼いたり埋めたりするのも面倒なので、どんどん溜まるんだよね……なにか使い道でも有ればいいんだけど……何かいい利用法、ないかな? 肥料にでもする?

 あー、後はあれだ、湯たんぽとか? トリエラ達の分は既に譲渡済みだけど、孤児院の幼年組と院長先生の分は用意したい……ああ、でもそんなのトリエラに大量に持って帰らせたら出所疑われるか。うーん、悩ましい……


 全員の入浴終了後、先日の増築で一階の客室は丁度三つになったので一人一部屋ずつ使わせる事にした。とは言え、三人共人生初の個室であるらしく、非常に落ち着かない様子だった。

 トイレは自由に使えるし、夜中にお腹が空いた時は自由に食べて良いと言う事で、リビングのテーブルにはパンを篭に入れて置いておく。

 後は、二階は私のプライベートスペースなので立ち入り禁止と言う位? とは言え別に二階に上がった所で部屋は全て鍵が掛かってるので、トイレ位しか入れないんだけど。



 翌日、と言うかお昼前。私以外の皆がのそのそと起きて来る。

 なんでも、初めての一人部屋に緊張していたのと、部屋が豪華すぎた所為で落ち着かなくて中々寝付けなかったらしい。だけどいざ寝てしまうとあまりの寝心地に今の時間までぐっすりだったとの事。そんな事言われても……寝心地良かったんでしょ? なら別にいいじゃない。

 私はいつも通りに早起きして適当にご飯を食べて『結界塔』を追加で作ったりして時間を潰してた。ちなみに昨晩も日課はしてません。幾ら防音が完璧とは言え、流石にトリエラ達が居るこの状況では、精神的にちょっと無理。


 ちょっと早めの私の昼食兼、トリエラ達の遅めの朝食を済ませた後は色々お土産を持たせてトリエラ達を帰らせる。念の為、森の出口付近まではノルンに送らせた。

 次に皆が来るのは明日? んー、1日おきじゃなくて3日おきでも良かった気がする……でも情報の更新は早いほうが良いから、悩むなあ。



 トリエラ達が帰った後は武器作成。但し、鍛冶場は使わない。煙とか出て、家の位置が特定されるのも困るのが理由。ならどうするのか? それは簡単、【創造魔法】を使って作る。鍛冶場分のコストをMPで支払えば不可能ではない。

 MPへの負担は大きいけど、色々とスキルレベルも上がったお陰で以前に比べれば圧倒的に楽になってる。そしてそれ以外には特に問題なく、普通に作成可能だった。


 ちなみに今回作るのは大振りなスローイングダガー。付与は【無属性】【火属性】【攻撃強化】【耐久強化】。そして【ウェポンスキル】を一つ。

 今回付ける【ウェポンスキル】は【ファイナルストライク】。

 剣に秘められた魔力を一気に解放し、強力な魔力爆発を発生させる自爆技だ。使えば当然剣も砕け散る。そしてその性質上、この【ウェポンスキル】は付与されたスキルの数が多ければ多い程、それらのスキルのレベルが高ければ高い程に威力が向上していく。

 名づけて『使い捨て炸裂剣バーストダガー』。


 いや、魔剣を飛ばしたあと回収できないなら、回収の必要性を無くせばいいんじゃないか、と発想の転換をしてみましてね?

 ただ、【ストレージ】に仕舞ってある大量の全属性魔剣でこれをやっちゃうと威力が大きすぎて危険なので、周辺への影響を考慮して大幅に付与の数を減らして作ってみたのがこの『使い捨て炸裂剣バーストダガー』と言う訳なのだ。まあ、念の為に全属性魔剣の方にも何本か付与しておくけどね。切り札とか奥の手的な感じで。

 保険として作ってはおくけど、こんな物は使う機会がない方がいい。とはいえ備えはしておいて損はない筈!



 取り敢えず10本程作成するといつの間にか夕方の良い時間になっていたので晩御飯にする。

 ご飯を食べながら【探知】を使って森の外縁部近くまで確認してみると、端の方に幾つかの反応がちらほら消えたり現れたりしているのが分かる。

 これ、ベクターさんが手配してくれた私の護衛の人達だったりする。実は馬車移動中も雪の降る中を頑張って追いかけて来てくれてたのだ。実にご苦労様です、ありがたやありがたや。

 一応私は護衛が居る事に気付いてない振りをしてるし、そもそも隠れての護衛なので差し入れとかをする訳にもいかず、正直少し申し訳なかったりはする。

 でもあの人達もそれがお仕事なので、そこは我慢して頑張ってもらうしかない。もう暫くお付き合い下さいね?


 さて、そう言う訳で今日は漸く久しぶりの日課で御座います。って言っても、明日にはトリエラ達のうちの誰かしらが来る手筈になってるので、あんまりたっぷりと時間を掛ける訳にもいかない。だから程々に。

 程々で足りるのかって? 今日は他の趣味も色々やれたからへーきへーき。


 じゃあ、もう部屋に行くから! おやすみー!


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― 新着の感想 ―
[良い点] 日課は必要不可欠だよね!にんげんだも…天人だもの!
[一言] 貫通力が高くて爆発もするとか、もはや徹甲榴弾だ。刃物の形にする意味無さそう。
[一言] 空気抵抗や、爆破を考えるならダーツ形状の方が良くない? 何故ダガー?元技術者しっかりしろよ。 整形炸薬型に爆破術式組んでメタルジェット発生させるロケット弾頭型ベストな選択でしょ。
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